第162話 手助け
パワーゴリラの尻尾を引っ張て見事、カンさんに接近させることを防いだ。
「やああ!!」
ロードは吠えた。吠えて尻尾を引っ張って全長4メートルもあるパワーゴリラという怪物を持ち上げた。
「オオオ、グルグル、グルル」
そしてロードは尻尾を掴んだままグルグルと足音を起点にして回り、パワーゴリラを壁際にぶっ飛ばして叩きつけた。
「ガンガバレーの化石になることだ」
◆ ◆ ◆ ◆
ガンガバレー・崖の道。
タタタと走るカンさんイワダミも次から次へと洞窟の外へと出てきていた。
この時、カンさんは、
(ロードさん、大丈夫なのか?)
と考えていて後ろを振り返ったのだが、
「キラキラ……」
出て来たのはパワーゴリラだった。
「うわああ!! 来た!!」
パワーゴリラに追われるカンさんだった。
「――逃がさない!!」
その時、パワーゴリラの顔面をロードの右拳が捉えて近場の岩山まで吹き飛ばした。
ゴゴゴゴーンと岩山に激突した全長4メートルの怪物だった。そしてその衝撃で向こうの岩山では岩雪崩が起きた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「タフな奴だ。斬ればよかった」
(逃がしたことでカンさんの無事を最優先にしたからな)
(頭がパニックになって考えてる余裕はなかった。先に手が出てしまった)
(まぁあそこからならアイツもどうすることも出来や……)
(いや待て、確か魔物大図鑑に書かれていた攻撃パターンは大きな岩を投げてくることだったはず)
(なら、カンさんもまだ危ない)
「ドンドンポイ!!」
パワーゴリラが大きな岩を担いで投げ飛ばしたところだった。
「間に合うか!?」
カンさんの元まで一気に走り出した。もちろん危機から救うために、
しかしロードの読みは外れた。パワーゴリラの放った大岩はロードの立っていた洞窟入り口に激突した。
(さっきまでオレがいたところを狙った?)
(そうか、あの魔物、カンさんを追うことを辞めてオレと一対一で戦う気なんだそれなら囮役に徹すれる)
しかし、残念ながらまたもロードの読みは外れた。今度大岩を担いで投げた場所は、カンさんの走っている先の道だった。
「うわあ!!」
カンさんが小さな悲鳴を上げた。そしてカンさんが立っていてた位置の崖が崩れ始めた。
「うわあーーーーーーーー!!」
足元が無くなって自由落下する寸前だった。ロードがその右手でカンサンの左手を掴んでいた。
「無事か!? カンさん」
「ロードさん魔物が狙ってくるこっちに来る」
ロードの位置からでは見えなかったのであろうが足音を察するにあちらの岩山からこちらの岩山まで飛んできたのがわかった。
(図鑑に書いてあったじゃないか、山から山へと飛び移るジャンプ力があるって)
「僕のことはいいからキミだけでも逃げるんだ!?」
カンさんは悟ったような表情でロードに訴えた。まるでキンさんの罪滅ぼしでもするように、
「カンさん、それは出来ない」
「どうしてこのままじゃ、二人共死んでしまうよ! 僕は一度命を失ったようなものだからキミ一人でも……」
ズシン! ズシン! とパワーゴリラが迫って来ていた。
「キンさんに救ってもらった命なんだろ! そんな簡単に捨てないでくれ!」
ロードは叫んだそしてカンさんを引っ張り上げる態勢を取った。
「まだ、言っていなかったな」
「――!?」
それは勇気と気合を入れる言葉に感じられた。
「オレの夢はあらゆる魔物を倒せる最強の勇者になることだ」
その言葉でカンさんは左手で崖を掴んだ。
「……………………」
次に右手を引っ張られながら、左手で力を加えて腰の位置まではいずり上がって来た。
「この手は皆を魔物たちから救う剣を作る大事な手だ。そしてあなたは死なせない。オレがここにいる限り、だから夢を諦めないでくれ」
その言葉を聞いたときにはカンさんの身体は崖の上に立っていた。ロードは彼を背に守りから攻撃の態勢へと変える。
ロードが振り向いて見せるとパワーゴリラは目前へと迫っていた。しかしロードは全力の力を剣に集中させ、最初の一撃という技を発動させた。その剣は20メートル程の刀身に変わり、上から下へと振り降ろしてパワーゴリラを一刀両断した。すると、
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
パワーゴリラは霧散して消えていった。
「――す、凄い!」
「その手は大事にしてくれよ、せっかく助けたんだから」
ロードはその場にぶっ倒れた。
「は、はい!!」
カンさんは迷いを吹っ切ったような声ではっきりと言った。
精霊石は無事入手できた。