第161話 精霊石をもらい受ける
ガンガバレー危険地帯洞窟最奥でついに見つけた。
とうとう精霊石を見つけたロードとカン、しかし不気味な不安要素も近いて来ていた。
カンは持っていたツルハシで蒼く煌めく鉱石を採取の準備にとりかった。
そして、カンカンカンカンとツルハシで少しづつ精霊石を発掘していく。
そこを縄張りとしていた魔物は現在留守だったので仕事ははかどった。
(カンさんが採掘し終わるまで警戒を怠らないようにしないとな)
(どんな魔物が相手になるか分からないが、全力で守り無事精霊石を取って帰る)
(しかし、このいつ魔物が帰って来るかもわからない緊張感は何だ)
(落ち着け、落ち着くんだ。平常心平常心)
「カンさんその作業あとどれくらいかかるんだ?」
「ああ、はぁ、はぁ、もう、終わる、頃合いだよ!」
青き精霊石を採掘するときが来た。
「カンカン……カンカン」
「――――っ!?」
その時ロードは確かに耳にした。カンさんの採掘作業に混じる化け物の声を、
「さぁラストだ!」
――ガキンという音で精霊石はカンさんに入手された。
「やった! やったぞロードさん!」
カンさんは念願の異精霊石に大喜びしていた。
「ああ、早めにまとめてくれ、一刻も早くここから出たい」
一方ロードは背筋に悪寒を走らせながら、カンさんを急かした。
「うん、少し待っていてくれ」
木材でできた荷物運びの道具、そこに精霊石を乗せ紐で縛り上げていく。
「よし! 出来――」
「――静かにしてくれ何か来る」
その時広間の洞窟の入り口から見覚えのある影がズンと入って来た。
(こいつは確か昨日研究していたパワーゴリラじゃないか!?)
「キラキラ、カンカンすな……プンプン……プンプン……ブチする!!」
「うわあ!! 魔物だ!!」
カンさんは尻餅をついた。
(そうだこいつは綺麗な岩や珍しい岩の場を寝床にするんだった)
(くぅ~~何で気が付かなかった。パワーゴリラがここにいる魔物だと)
(気が付かなかったものはしょうがない。ここは当初の予定通りだ)
(暗がりに目も慣れてきた頃合いだしな)
「カンさんこいつの相手はオレに任せてくれそっちは早く精霊石を持って逃げるんだ!」
「えっ、えっと僕はどうしたら……」
「落ちついてくれ、今言ったように早く精霊石を持て逃げるんだ!」
「わ、分かった、し、心配いらないんですよね。ロードさん」
「無論だ」
その言葉と同時に松明をカンさんに手渡し、ロードは魔物パワーゴリラの方へ駆けだして行った。
腰に携えた竜封じの剣を抜剣する。
「ゴツゴツくえ」
ロードはパワーゴリラが何かを掴む素振りを見せたのを暗闇の中でも捉えた。
そしてその何かを数個、投げ飛ばしてきた。
(くっ、何かを投げ飛ばして来たな)
(見切ってやる)
その時、ロードの目は投げ飛ばされてきた全てのモノの位置を完全に把握し、見切って竜封じの剣でいなした。
「三つの岩か、道が見えた」
敵や味方の行動パターンを見切る。これこそロードの道の秘宝玉の力だった。
キキキンと岩を弾く。
「くえくえ……ゴツゴツ……ブトバスな」
(何を言っているのやら)
(とにかくカンさんが帰られるための道を確保しなければ)
(つまりやつを洞窟の奥に引き付ける)
その時、足に何かが引っ掛った。そしてロードは転んでしまった。
(なんだ!? さっきまでいた足場だぞ! 何に躓いて、)
その時、ロードは理解した20センチメートルの魔物が居たことを、
(こいつらもしかしてイワダミか? 岩場のある場所ならどこにでも住み付くってハズレが言っていたな)
(パワーゴリラとイワダミは共存し合っていたのか)
(だが、オレの知らず知らずのうちに、出口の方へ移動している)
(オレとパワーゴリラの交戦で騒がしくて、臆病なイワダミが避難しようとしているということか)
パワーゴリラはもう一度、岩を掴み投げ飛ばしてくる。
今度は後ろに下がって回避する。そうするとズシズシとパワーゴリラが洞窟の広間へ出てくる。
「ウオオオ!!」
ここでロードの誤算が働いた。実際に戦ってみないとわからないものである。何とパワーゴリラのスピードはあのフォッテイルにも劣らなかったからだ。ロードの元まで一気に間合いを詰めよりズガンと壁の方まで突撃してきた。
「あり?」
しかし、パワーゴリラの狙いは外れた、へこまされた壁を見てもロードの姿がなかったのだ
その時、ロードはパワーゴリラのすぐ隣にいて一閃、剣を振ってみた。するとヤツの長く伸びたひげを切り落とし霧散させた。
「暴れるな、カンさんが怖がる」
「ロードさん本当に行ってしまってもいいのかい!?」
逃げ道を確保できたカンさんが尋ねて来た。
「いいからすぐにここを出て――!?」
その言葉を送ったと同時にパワーゴリラに意表を突かれ、壁にドカッと音が鳴るくらいの勢いで殴り飛ばされた。
「う、うわあ~~~~~~~~~」
情けない声を張り上げながら逃げるカンさんだった。
「キラキラドコドコすな!」
出口の方へ向かうカンさんは今、パワーゴリラの手に掴まれようとしていた。
しかしその手は届かなかった。ロードがその尻尾を引っ張って力づくで止めたのだった。
「あの精霊石はあの人に必要なモノなんだ。お前がキン師匠という人を奪ったのだから、アレを貰って行っても文句は言わせない!」
息も絶え絶えにロードが宣言する。