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第160話 キン師匠の夢

 ガンガバレー・奥地。

 ガンガバレーの岩雪崩でカンさんとロード、ハズレとスワンに分断されたのだった。

 スワンたちの指示で先を急ぐことになったロードたち。

 急いでいた矢先、カンさんが休憩しようと言い始めたのでそうすることにした。


「なぁカンさんはどんな剣が作りたいんだ?」


 

 岩の上に座り込んだロードが訊く。


「もちろんキン師匠を超える剣ですよ。まぁもう剣は打てなくなってしまいましたが……」


「……打てなくなった? ……それはキンさんって言う人と何か繋がっているのか?」


「はい、もう打とうとしても手が動かないんですよ」


 カンさんは自分の右手を見ていた。


「それは鍛冶職人にとってはまずいじゃないか?」


「ですから……鍛冶職人の道は諦めようと思うんです」


 なかば諦めた表情の笑顔をしていた。


「カンさんの好きにするといい。したくないならしなくていいよ。オレも先日したくないことはしなくていいと言われたし、しかしその道に心残りがないようにな」


「……………………」


 その時、カンさんは歯を食いしばった。


「あるようだな心残りが……」


 その噛み締めをロードは見逃さなかった。


「いいえ、ありません、心残り何て……」


「誤魔化す必要はない。続けたいのなら続けてもいいんだ。そのうち手も動くかもしれない」


「動きませんよ……きっと。何故ならこの手は師匠を殺してしまったてなんですから」


 カンさんは衝撃の事実をつき付けた。


「――!? それはどういうことだ」


 ロードはびっくりして立ち上がった。


「師匠の死んだ日、僕と師匠は二人でこのガンガバレーに来ていました。そして精霊石を求めて奥へ奥へと進んで行きました。危険地帯とわかっていた僕が無理を言って進みましたが……」


 そこからカンさんが自分とキン師匠の話をし始める。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 ガンガバレー・危険地帯。

 65歳に見えるであろう老人と20代に見えるであろう若者が歩いていた。


「カン! 確かに精霊石はあるやもしれん! だが、これ以上進むのは危険だ! 引き返すんだ!」


「危険って、ここ数日雨も降っていないどころか地震もありませんでしたよ。それにガンガバレーの各所は大体見て回りました。あとはこういう危険地帯しか残っていません」


「いやダメだ! カン帰るぞ!」


「師匠の夢、精霊石で剣を作ることは僕の夢でもあるんです。だから一緒に頑張りましょう」


「はぁ~、そうだな……老いのせいでかなり逃げ腰だったかもしれん。カン行くぞ。お前のようなヒヨっこはオレの後からついて来るもんだ」


「いえ、師匠が後ろからついてきてください。ご老体に先を進ませるのは――」


「何を!? オレを年寄り扱いするとはいい度胸だなカン!」


「けど師匠――――」


その時、キンさんは気が付いていたカンさんの上から大きな岩が落ちてくるのを、


「――――――カン!! にげろ!?」


 その声はカンさんを窮地から救った。


「うわああ!!」


「大丈夫かカン!?」


「は、はい師匠」


 危うく落石に巻き込まれて崖から落ちるところだった。


「何だ? 突然あんな落石なんて奇妙だぞ……」


「も、もしかしたらこの岩山には魔物が住み着いて―――――」


 その時、ミシッという音が聞こえた。


「「――――――!?」」


 大量の落石がカンさんとキンさんを巻き込み足場諸共、崩れていった。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 その時、カンさんが何とか山場に左手でしがみついた。


「師匠離さないでください」


 その時、右手はキンさんの手を吊るしていた。


「カン上がれるか!?」


「ぐうう!! あ、上がりません!!」


 何とか左手に力を入れるも上がれないカンさん。それどころかミシっと音を出し、掴んでいた山場が崩れかけていた。


「……ふぅ、カン、トンとテンとオマエに最後の言葉を送る」


「師匠!?」


「オマエら3人とも……オレを超える剣を作れ!!」


 その時、キンさんはカンさんの右手から手を離した。


「――――しっ!? 師匠おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


そしてキンさんは谷底へと落ちて行った。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「そう言うことだったのか……」


「はい、だから僕が師匠を殺したも同然なんです」


 顔を俯かせるカンさん。


「――それは違う、キンさんはカンさんを助けたんだ。生かすために、オレがキンさんの立場だったらそう考える」


「生かす?」


「そうだ、でなければカンさんもきっと今頃は墓の中だ。キンさんって言う人はきっとカンさんを助けたかったんだ」


「師匠、僕は……」


 カンさんが右手を握りしめる。


「そろそろ行こう帰りが夜中にならない為に……」


「は、はい」


「もう一度ゆっくり考えてみるといい。自分の生きる道と生きてきた道を……」


「ロードさん……そうですね、もう一度考えてみます」



 ▼ ▼ ▼


 ガンガバレー・危険地帯。

 ロードとカンは危険地帯の奥の奥まで進んできた。そしてとうとう洞窟らしいところを見つけた。ここがカンさんの言っていた穴場らしい。


「この洞窟はどうやら魔物の巣の様ですね」


「本当か? なら警戒しないとな……あの落石はきっとここにいた魔物の攻撃だったに違いないし」


「やっぱり落石は魔物の仕業だったんですね。だったら師匠の時も……」


「静かに、洞窟内は音が響く……慎重に進もう」


「は、はい」


 ロードは火起こし石で松明を作ろうとしていたが上手くいかず、代わりにカンさんに頼んで作ってもらった。


「もしもオレの身が危険だと感じたらすぐ逃げてくれ」


「しかし……」


「大丈夫精霊石なら一人で持ち帰られる」


 警戒しながら前へ前へと進んで行くロードたち。その辺には20センチ代の岩がゴロゴロと置いてあった。


「どうやら魔物は留守の様だ……」


 広々とした空間に辿り着いた。そこはどうやら魔物の寝床の様だった。


「あ、あれは、精霊石!?」


 カンさんが不用意に声を出したのは、凄く煌びやかな青い結晶体があったからだ。


 もう少しで念願の夢に辿り着くような声だった。

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