第157話 魔物の討伐数
ラナの街・前。
その関所前へとロードたちを乗せた荷船一行は辿り着いた。
「ドルちゃんストップストップ!」
荷船を牽く水のイルカがスワンの声に合わせて停止する。
「さぁ二人共、起きて起きて! 朝なんだからこれで顔でも洗って!」
スワンが水の入った桶を用意して来る。
ロードとハズレが順番に顔を洗う。
「ふぅーーすっきりしたーー何だスワンもう着いたのか?」
「ええ、だから早く荷船から降りて降りて……誰もいないここに隠さなくちゃいけないんだから」
スワンがそう言うのでロードとハズレは渋々荷船から降りることになった。
「隠者の指輪、発動」
相変わらずの人差し指にはめ込まれた指輪の謎の力を使って、荷船を透明にして隠すスワンだった。
「次はドルちゃん指輪の形に戻って……」
「クパパパパパパパパ」
スワンがそう言うと水のイルカが右手中指の指輪に収まった。
「い、いったいどういう原理で消したり出したりしているんだ?」
ハズレが問うた。
「オレにもわからないんだ。少しは教えてくれてもいいだろスワン?」
ロードも問うた。
「今度ちゃんとした時間が出来たらね~~」
軽くあしらわれてしまう二人であった。
▼ ▼ ▼
ラナの街・大通り。
一行はラナの街を闊歩していた。
「関所を難なく通過出来たな」
ラナの街を歩くロードが呟いた。
「これでもオレは名の知れた魔物狩りなんだ、ランクメダル一つ見せたらいちころさ」
ハズレは首に掛けられたメダルを散らすかせていた。
「何ぃ? そのメダルそんなに凄いの?」
スワンが質問していた。
「キミさぁ……自分の秘密はばらさないのに、そこを他人に聞く?」
「何嫌なの? 聞かれるの? ……それに私はちゃんとした時間が取れたら説明するって言いました~~」
舌をべ~~っと出し、子供のような言いぐさをするスワン。
「まぁいいさ、プラチナ一つ星のメダルは魔物狩りの優秀さを表すんだ。下からブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドって各付けされている」
「プラチナってことは上から二つ目の魔物狩りってこと? 凄い」
「凄くはないよ、オレは金になる依頼を片っ端から受けるため魔物狩りになったのさ。本物の魔物狩りはオレなんかのレベルにとどまらない」
「ハズレはお金の為に魔物狩りをしているってことか?」
ロードが疑問を投げかけた。
「そういうこと、そして簡単な魔物狩りの依頼も受けつつ、色んな街を回ったことで顔が広くなっていったのさ」
「ふ~~ん、じゃあどのくらいの魔物を倒してきたの?」
「それ今オレが訊こうとしてたヤツな」
「魔物の討伐数か考えたこともなかったが100ぐらいは討伐してたんじゃないかな?」
「「――ひゃ、百!?」」
二人共、ハズレの発言に驚いた。
「よく今まで命を落とさなかったなそんなに戦って……」
「言っただろ簡単な依頼をこなしてきたって……」
「それでもよく生き延びれたな……オレなんかまだ魔物は5体にも満たない」
「えっキミもしかして新人の魔物狩りか? だから昨日の夜も魔物について勉強していたんだな」
「まぁそんなところだ」
「それで秘密主義者のお嬢さんキミは何体か魔物を倒したことはあるか?」
「まぁ30体くらいは……」
「――さ、三十!?」
ロードだけが驚いた。
「ハズレもスワンもそんなに多くの魔物を倒して来たのか!?」
「そうだけどその辺の魔物何て大したことないよ。むしろロードあなたの方が凄いくらい」
「ん? 魔物の討伐数が5体にも満たないのに凄いってどういうことだ?」
「ロードの倒してきた魔物は普通のレベルじゃないってこと……」
「どういう魔物を倒して来たんだ?」
「そうだな鬼のような魔物や尻尾の多い魔物と戦っていた……」
「具体的な名前は知らないか?」
「アグロ―ニとフォッテイルとかオオクロヅノにあとクロドラもか……?」
「聞いたこともない魔物だな……」
ハズレは必死にそんな魔物がいたかどうかを考えていたが、結局答えが見つからず諦めた。
「あ、あった」
「何がだスワン」
「ハズレさんの言っていた金閣寺」
その時、金閣寺と書かれた看板をスワンが見つけた。案の定ロードにその文字は見えない。
「さて着いたな」
ハズレが一歩前に踏み出した。
「そうかキンさんは亡くなられたのか……」
鍛冶屋の前には青年らしい若者たちが集まって何やら話し込んでいた。
「あの名鍛冶職人キンさんが亡くなられた!?」
驚いたのはハズレだった。