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第151話 旅は楽しんでこそ!

 グラス一杯のワインを飲み干し、次のワインを所望するハズレ。


「情報収集?」


「そうさ、酒場には他の魔物狩りも乗り込んでくるからな、それに酒の勢いであることないこと話し始めるのさ。中にはとっておきの情報まで」


「ふ~~ん」


 甘酒を飲みながら感心するロード。


「で、マスター? オレの1週間の不在の間に何か新情報はあったかい?」


「ああ、あったぞ。森で木のお化けに会って退治したとか……湖の魚が化け物に食いつくされて怒った釣り人たちに退治させられたとか……洞窟と思って入って行ったら巨大なミミズの巣で退治した話とか」


「なんだ全部退治させられた後の話か……これじゃあ依頼にはありつけそうにないな」


「ハズレは1週間もここを離れて何をやっていたんだ?」


「オレ? オレはそうだな……魔物狩りをしていたかなタタリミズって言って、この愛剣シラユリヒメでもぬるりとした感触で滑って行って苦戦したな」


 腰に携えた細長い剣を見せて言ってくる。


「タタリミズっていやB級の魔物じゃないか? しかも4メートルほどのでかいヤツだろう?」


 マスターも会話に割って入った。スワンは静かに甘酒を飲んでいた。


「ああ、苦労したさぁ、ぬめぬめと動くはおまけにこっちの剣は通らないわで仕舞いには尻尾で叩きつかれたよ。噂以上に強かったかな」


「それでどうやって勝ったんだ?」


 ロードが興味本意で訊いていた。


「爆散させたのさ」


「ばくさん?」


「こう口に火薬を詰め込んで火を放ってドカーンとな、内部から爆発して霧散したんだ」


「そうか(ばくさん……内部からばくはつ? よくわからない)」


 ロードは真剣に爆発のシーンをイメージしたが、その知りもしない光景が頭に浮かばなかった。


「マスター一品目で来ました!」


「おう、すぐ持って来い客が腹空かして待ってるぞ!」


 スワンの目の前にロードのどこかで見覚えのある料理が配膳されてきた。


「ロードも食べる?」


「いやオレはまだいい、先食べててくれ……」


「そう、じゃあいただきます」


 スワンが食事を始める。


「こっちももう一杯ワインのお替りだ!」


 ハズレがワインを要求し、片手でチーズを食べていく。


「マスター他に何か知っていることはないか?」


 ロードはマスターに訊いてみた。


「何かって、何だ? 何が知りたいんだ?」


「その……えっと……冒険で役立つ情報とか、旅を楽しむ情報とか……」


「お前さん余所もんだな? 名前は?」


「ロードだ。ロード・ストンヒュー」


「腰に剣を提げているみたいだが魔物狩りか?」


「まぁそんなところです……それでオレの質問なんですがありますか? そういうたぐいの話は……」


「う~~ん、両方とも一応あるな……」


「どっちからでもいいから教えて欲しいです」


「それじゃあまずは、旅を楽しむ話からだな。あと4日後には近隣のヤマダシオって街で大規模な馬上レース大会が行われる。そこへ行って馬の走りを見物してくりゃいい」


「レース大会かぁ……そのレース大会は誰でも出られるんですか?」


「まぁ馬さえ持ってりゃ誰でも出られるが、坊主お前出る気か?」


「出来ることなら出てみたい」


「馬を買うお金はあるのか? それから育て方を知っているとか……」


 ワインを片手にハズレが尋ねて来た


「一応育て方は知っている。これでも故郷では馬の出産にも立ち会ったことがある」


「ほう、だがな坊主、馬ってのは多額なんだ金貨3000枚が当たり前のようなもの。それだけの額はあるのか?」


「えっ!? そんなにするんですか?」


「まぁ一応レンタルって手段もあるが、やっぱり乗り慣れていない馬じゃあ優勝は厳しい。まぁ旅をエンジョイするくらいなら借りて損はないけど……それでも30金貨は取られちまうさ」


「そうか、ならレンタルでもいいかな」


「おいおい正気か? 名だたる選手の出る神聖な競馬だぞ? 初心者が出て行ったって落馬して怪我するのが落ちさ」


 ワインを受け取ったハズレが口を挟む。


「大丈夫だ、これでも乗馬の経験はかなりある。故郷でも習って来たし初めての馬でも問題はない」


 自信満々にロードは意気込みを見せた。


「好きにしな……楽しみたいなら楽しんできな、オレは止めないぜ。叶うのなら出場した感想も聞いてみたいもんだしな」


 マスター期待混じりにそう言う。


「ふた品目出来上がりました」


「おうよ! お客さんお待ちどう!」


 マスターがロードの目の前にドデカい肉質な固まりを置いてきた。


「ありがとう、いただきます」


「それで冒険に役立つ方の話なんだが、訊きたいか?」


「あっ是非に……」


「それがな伝説の精霊石の話なんだが――」


 その時、マスターから発せられた言葉に耳をピクンとさせたのはなんとスワンだった。

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