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第15話 ルロウと知り合う

 連れて来られたのは街の民たちが集まった服屋の前。

 繁盛しているから集まっている訳ではなさそうだ。

 いわゆる野次馬たちだ、そこで何か起きたのだろう。

 

「皆皆ぁ! どいてどいてぇ! ロードに来てもらったよ!」

 

 野次馬たちが道を開け、中心に連れて来られる。

 すると、そこには王国では見慣れないオオカミがいた。

 足に怪我を負ったようで、痛みに耐えた表情をしていた。

 

「……オオカミ? 怪我をしてるのか?」

 

「それが~~彼が言うには、うちの屋根に飛び移って足を滑らしたらしいんだ」

 

「この屋根に……?」

 

 王国に建てられている家のほとんどの屋根は、動物たちが乗って歩かないようにするために急な斜面になっている。

 よりにもよってオオカミが通れるところではない。

 

「どうしてそんな危ないことを……」

 

 痛みに耐えるオオカミに心配を混ぜて聞く。

 

「ぐぅ、、、人の多い、道は苦手で、屋根なら誰もいない、うぐぅ」

 

(……人見知りする旅のオオカミさんか?)

 

「なんでもいいけど、誰か医者は呼んだのか?」

 

 野次馬たちに訊いてみる。


「呼びに行ってはいるが……」「街の医者がいるのは」「丁度この国の真ん中にある宮殿の向こう側だろ?」「時間がかかるんだ」

 

「そうだったな……なら、宮殿にも医者はいるからその人を連れてきた方が早いか、オレが呼びに行って、馬に乗せて来てもらえば……」

 

「いや、ロードに治療して欲しいんだ」


 仕立て屋の兄さんがそう言う。

 

「えっ? オレ? 医者でもなんでもないぞ……?」

 

「いや、でもロードはよくケガした人の治療をしてるって聞いてたが……」

 

「うん、治してくれたよ」「うちの子も転んだらロード君に治してもっらたって」

 

 前にそんなことをしてあげたことを覚えていた顔見知りが言った。

 

「いや、たぶんそれは、応急手当の心得が少しあって、いつも道具を用意して持ち歩いてたからだ……」

 

「けど、ロードの手当した傷はどれもこれも不思議なことに直ぐに治るって噂が流れてるよ」

 

(何だ、その噂は……どうしてそうなる……)

 

「オレはそんな神様みたいなことできないさ……」

 

「とにかく、ここにいる僕らよりも君のほうが詳しいだろ? 彼を診てやってくれない?」

 

 急ごしらえの応急セットを持ってこられたので受け取るロード。

 

「それはもちろん。いいんだけど……」

 

 とりあえず、診てみようと近寄ってしゃがむ。

 

「どこが痛い見せてみろ……」

 

「うっ……ぐぅ……」

 

 言うことを聞いてくれない。人見知りみたいだから警戒しているのだろう。

 

「オレはロード、この国の宮殿で使用人をしている者だ」

 

 まずは自分のことを知ってもらう。

 

「君の名前は?」

 

「…………ルロウだ」

 

 誰に話しかけられたか知ったことで答えるようになってくれたみたいだ。

 

「よしルロウだな。どこが痛い?」

 

「この前足が……」

 

 よく見てもらうために痛みに耐えながらゆっくり差し出してくる。

 

「…………うん、骨は折れてないと思う。脱臼とまでもいかないな。捻挫だと思う。包帯を巻いて軽く固定しておこう」

 

 冷えた布を当ててあげ、その上から優しく包帯を巻いていく。

 

「…………痛って!!」

 

「あっごめん。ルロウ、……ゆっくりやるな……あと今度からは屋根なんて乗ろうとするんじゃないぞ。ネコでもたまにやるらしいからな」

 

「…………ああ」

 

「……よし、これでいいだろう」

 

 包帯を巻き終えて立ち上がる。

 

「おお~~、皆ロードが不思議な力で治した! もう安心だ!」


 仕立て屋の兄さんが騒ぐ。

 

「おお~~」「良かった、良かった」

 

「治したわけじゃないんだけどな……」

 

「……………………」

 

 ルロウを他の人と協力して担架に乗せる。

 歩けないから運んであげないといけない。

 

「それじゃあ、あとは宮殿の医者に診てもらおう」


「えっ神様の噂って、ロード先輩が起源じゃん」

 

 いつの間にか来ていた。

 

「ダラネーさん、一緒に運んでくれないか?」

 

「えっ? でも薪は?」

 

「もう十分だよ。宮殿に戻るついでに運んであげたい……オレは前を持つからさ……後ろを持ってくれないか?」

 

「りょーーかーーい」

 

 二人でルロウの乗った担架を持ち上げた。

 

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