第145話 フルーツ祭典の表彰式
デモンストレーションにされていた魔王討伐は終わりいよいよフルーツ祭典の表彰式が始まった。
「それでは優勝したロードさん前へどうぞ!」
表彰式に呼ばれたのは3名だけだった。まず45点で3位のスモモさん、次に48点で2位のスベリさん、最後に1位で50点満点のロードが呼び出されていた。
「いや素晴らしいミックスジュースだったよ」
「どうも……」
照れ隠しをするロードは、審査員代表のトロッピ村長から金メッキで作られたリンゴのトロフィーを受け取った。
「デラックスレインボーミックスジュースのレシピを公開してもよろしいかな?」
「はい、是非に」
「うむ……」
村長さんは納得したようでロードに拍手を送っていた。
それに合わせて会場の観客たちも拍手する。
「お次はスベリさん前へどうぞ!」
「あっ! はんい!」
「今回は惜しかったですなぁ来年もまた挑戦しに来てください」
「これはどうも村長さん、わたしなんかでよろしければ、ぜひ来年も出場させてください」
村長さんから表彰状を手渡され、深々とお辞儀をするスベリさんだった。
スベリさんは元いたロードの隣へと戻っていく。
「最後にスモモさん前へどうぞ!」
「うっし!」
「ゼリーという食べ物、よくあんな発想が出来たモノです、残念ながら今回は優勝を逃してしまいましたが、あなたには才能がある。来年も楽しみにしていますよ」
「うっしゃーーーーーーーー! 3位の表彰状ゲットだぜ」
スモモさんは気合入りまくりな声を上げていた。そして村長さんと握手してロードの左隣へと戻っていく。
「それではここで第1位のロード選手に優勝賞品であるゴールデンア贈呈です!」
パチパチとまばらに聞こえる拍手の音だった。
女性スタッフがキッチンカートに乗せたゴールデンアップルを運び込んでくる。
「2つしかないのが残念なところですが、どうぞお好きなようにお使いください、それはもう優勝した人の物です」
「では有り難くいただきます」
「ロードさんロードさん」
コソコソとスベリさんが話しかけて来た。
「何だ?」
「ゴールデンアップルはこの村の名産物なんです、何でも1年に10個しか取れないんだとかで……」
「そんなに貴重なものなのか? この村の人たちを差し置いて食べてしまってもいいのだろうか……」
「あんさんは優勝の品デラックスレインボーミックスジュースのレシピを公開するんだろ! だったら見返りとしては十分さぁ、さぁ胸張って受け取んな」
隣にいた30代と思われるスモモさんに始めて話しかけられる。
「わかりました。大切にします」
「これに今年度のフルーツの祭典をお開きとさせていただきます。参加された方々、見物に来てくださった方々、審査された方々、本当にお疲れさまでした!!」
「いい司会だったぞ!」「来年もよろしくなぁ」「今年もありがとなぁ」
「皆さん! わたくし何やら目元が潤んでまいりました」
司会者が目元を擦っていた。
「さて、では皆さま出口の方に今回優勝されたロード様のデラックスレインボーミックスジュースのレシピが1000枚分置かれていますので、ご退場の際はそちらをお受け取りになってください」
「デラックスレインボーミックスジュースか~~」「一体どんな味なんだろう」「家に帰ったらすぐに調理してやるか~~」
そうして次々と人々が足を会場出口の方に運んだ行った。
ロードは目の前に置かれた2つのゴールデンアップルを持った。
「それではロードさん私はここでお暇させていただきます」
「ああ、トローのイチゴ本当にありがとう」
「いえいえ、それではまたいつの日か……」
そう言ってスベリさんは去って行った。
「あたしもアンタのジュースが飲んでみたくなったよ、レシピ貰って行ってもいいかい?」
「どうぞ、お口に合えば幸いです」
「うっしゃーーーーーーーー来年は勝つぞーーーー!」
スモモさんは気合を入れて走り去っていった。
(……二人とも行ってしまったなぁ、アイツはまだ残っているだろうか?)
(約束のリンゴは2つ丁度二人で分けられるというのに……)
(あっ、あの魚の尻尾のような髪の結び目は……)
その時、視界にある人影を見つけて、ロードは近づいていった。
「スワン探したぞ、なにをしているんだこんなところで……」
「ないの……」
「ないって何が?」
「霧散した魔王フォッテイルの尻尾の秘宝玉がどの辺りを探してもないの」
「服と同じように消えてしまったんじゃないのか?」
「そんなわけがない。秘宝玉は特別なモノ、消えたりなんてしない」
「そうなのか。じゃあ誰かに拾われて持って帰られてしまったのかもな」
「かもしれない、くぅ~~アレがあればいくらかの借金返済ができるのに~~」
スワンが悔しそうに頭を抱えていた。
「借金があるのか?」
「まぁね、って、フルーツの祭典はどうなったの?みんな会場から出て行っているみたいだけど……」
「終わったんだよ」
「そう、じゃあ、わたしたちも帰らないとね」
「待ったこれを……」
ロードは持っていた二つの内の一つをスワンに差し向けた。
「あっ、これってゴールデンアップル……?」
手に持ってその感触を確かめたり、色つやを凝視していた。
「優勝したら渡すって約束だったからなぁ」
「そうだった。魔王も気が利くじゃない丁度二つ残しておくなんて……」
「しばらく出口は渋滞だこれを食べながら待っていよう」
「わかった」
カプリと二人でかじりついた。
「「おいしい~~~~」」
二人はゴールデンアップルの味を口の中で味わいつくしていた。