第141話 サソリの尻尾の弱点
フルケット村のフルーツの祭典会場に一人の人影が飛び込んできた。
「スワン!?」
「ロード二人で戦おう!」
スワンがロードに向かって走ってくる。
「おおッとここで謎の美女がロード選手のピンチを阻止したぞーー!」
司会者がのんきなことを言っていた。
「「「おおーーーーーーーー!!」」」
会場はざわざわと騒ぎ出した。
「いいのか逃げなくて? お前は狙われているんだぞ」
ロードも近づいて訊いていた。
「そう、でも一つだけ確かなことがあるアイツはわたしを殺せない」
「ん? どういうことだ」
「そんなことより今は戦闘中、他事は気にしない!」
8本のサソリの尻尾がそれぞれ尾を反らせて突撃の構えを取る。その時必殺の刺突が発射された。
スワンとロードは左右にそれぞれ逃げ去った避けた。左にロードが4本のサソリの尻尾に追いかけられて、右にスワンがサソリの尻尾に追い回されていた。いわばサソリの尻尾の郡が分断されたのだ。
「スワンこのサソリの尻尾には棘がある! 絶対に当たるな! 掠っただけでも動けなくなるらしい!」
「毒ですって!? わかった!」
(どうやらスワンを狙っているところを見るとこの毒は殺害能力はないと見た)
(アイツがなぜ殺されないと確信しているかは分からないが、スワンを生け捕りにするつもりなのだろう)
(これでオレは4本のサソリの尻尾に集中できる。それはスワンも同じことだがあの動きなら当たらないか)
「ケヒヒヒ、馬鹿な水色髪の女だ! このタイミングで戻って来るとは、どうぞ捕まえてくださいと言っているようなものだぞ!」
「そう、ロードを刺殺できなくて焦っているようにも見えるけど」
「フン! 言っていろ、ここには水辺はない。お前がやっている水の術は空気中に集められた水分を水に変換しているだけだ! ここでは圧倒的不利になるぞ!」
「おあいにく様、私が常日頃から水を携帯しているとは思わなかったわけ!?」
スワンは水の入った細瓶を四つ取り出して蓋を開けた。中から水がするりと飛び出すと不思議なことが起きた。
何とスワンの周囲に水が空中を泳いでいる。
「行け! 水霊の術! 水槍!」
スワンの周囲の水が形を持って鋭い槍の形となり、サソリの尻尾に突撃した。
「ダメだスワン! この尻尾は固いそんな水の攻撃は利かないぞ!?」
「利く!」
その時スワンの言う通りのことが起きた。水の槍はサソリの尻尾の体節と体節部分の間を狙って攻撃を通したのだった。
「ロード見た! サソリの尻尾は今みたいなところが柔らかいの! だからそこを狙って!」
「わかった!」
「おのれ! よくもスコーピテイルの弱点を突きやがるとは……だがそう簡単に切断されるかよ」
しかし、魔王フォッテイルはその目に焼き付けていた。
ロードが一本のサソリの尻尾を正確に切断するところを……そして切断された尻尾が霧散されていくところを、
この時、フォッテイルは思っていた。
(ば、バカな、あんな正確にしなる尻尾の体節と体節の間を失敗もなく切り裂くなんて)
「もう一本行くぞ」
ロードが光の剣を振ると即座にサソリの尻尾は引っ込んで行った。
「ドッグテイル!」
「何? 尻尾を全部引っ込めて……どういうつもり降参でもしたの?」
「違う、イヌの尻尾で危険を感知して尻尾を下げたんだ」
ロードがスワンに対して反論する。
「ケヒヒヒ、ここに戻って来たことを後悔させてやる! リンクテイル!」
スワンに繋がれた尻尾が魔王の隠された最後の一本の尻尾に引き寄せられる。
この時スワンは、(まずい!)と思っていた。
残り7本の尻尾が彼女を狙っていたからだ。
「ウロチョロするお前をまずは動けなくしてやる!」
その時、スワンに一番先に近づいていたサソリの尻尾が切断されて霧散した。そして切断された原因である光の剣によって残り6本のサソリの尻尾をはじき返された。
「――――なっ!?」
「――――えっ?」
スワンは助かった。
「弱点さえわかればこっちのものだ。覚悟しろ魔王フォッテイル」
ロードが光の剣を魔王につき付けて、後ろのスワンを庇う。