第138話 危険感知
魔王フォッテイルとの戦いは熾烈を極めていた。
「と、トカゲの尻尾! リザードテイル!」
とっ捕まえたはずのワニの尻尾が、トカゲの尻尾に切り替わった。そしてトカゲの尻尾は切り離され魔王フォッテイルは解放された。
(な、なんだ? さっきも見たけど突然大きなトカゲの尻尾に変わったぞ!)
「ケヒヒヒ、だから言っただろう秘宝玉の力があるってな!!」
すぐに態勢を立て直し、もう一方のワニの尻尾をロードに向けて鈍器のように勢いよく振る。
(両手が使えれば掴めないことはない)
(しかし、その衝撃に耐えられるかどうか)
(いや、剣から伝わって来たあの威力だ)
(正面からの突撃はともかく遠心力の乗った攻撃は耐えられないかもしれない)
(ここは避けるしかない)
上にジャンプして横から来る一薙ぎをかわしていく。
「馬鹿め! 避けられることは織り込み済みなんだよ!」
「――――――なっ魚か!?」
魚の尻尾で急接近してきたフォッテイルはその凶悪なる爪を持ってロードを切り裂いた。
「どうだ痛いだろう!」
(確かに痛いがこれはチャンス)
爪の攻撃で腕に外傷を負ったモノの頭突きで吹き飛ばされなかったことをチャンスと見て、ロードは魔王の身体にドドドドドと蹴りを数発食らわせた。
「ぐあっあっあっぐうっおう!?」
(ここでさらなる追い打ちを――)
「ギョルイテイル!」
一瞬にして間合いを開けられてしまい、繰り出した渾身のパンチは避けられてしまった。
(この隙に剣を取りに行かなくては――)
切り取られたワニの尻尾はすでになく竜封じの剣だけが地面に残されていた。
(――!? 何故ワニの尻尾が無くなっている?)
その時、周りをおろおろしていると目撃してしまった。先ほど掴んでいたトカゲの尻尾が霧散して消えていく場面を、
(――――そうか、魔王の本体から切り離された尻尾は霧散して消えてしまうのか……?)
静かに分析するロードは竜封じの剣を拾う。
「――この人間風情がよくもオレに何度も攻撃を喰らわせたな絶対に許さんぞ」
(魚の尻尾は厄介だ、あのスピードで移動されてしまっては攻撃も当たらないし、あちらは頭突きしているだけで俺を痛め続けることが出来る。何とか策を――まて頭突きかぁ……)
「この、もう一度頭突きでぶっ飛ばしてやる!」
魚の尻尾で刹那の瞬間に距離を詰めたフォッテイルだったが、ロードはそれに対し前方に剣を突き付けるだけだった。このままいけばフォッテイルの頭はロードの竜封じの剣により突き刺さる。そのはずだった。
「――――くっ、危ない危ない」
(――――馬鹿な! あのスピードで突っ込んで来れば串刺しは必至だったはず)
「ケヒヒヒ、おれっちの頭突きに対して反撃の姿勢を取った、その狙いは良かったが、おれっちの秘宝玉を舐めすぎだ。何せおれっちには危険を感知するドッグテイルがある。こいつがある限り危険はないんだよ」
ロードは魔王フォッテイルの背後を見てみた。そうすると柴犬のような尻尾が一本生えていた。
(あの犬の尻尾で危険感知? だから移動の途中で静止したのか!?)
(だが魔王の顔は目と鼻の先このまま剣で刺し貫く)
ロードはそのまま剣を前に突き出して魔王の顔面を眉間を狙ったのだが、
「――危険感知があると言ったばかりだろうが!」
身体ごと顔を下にさげて避けていった。
「――――くっ!?」
この失敗がロードにとって決定的な隙となった。
魔王は右手の爪を手刀のように変えて、懐へ差しこもうとしていたが、
「――――!?」
一瞬にしてギョルイテイルで後方へと下がって行った。
「また、危険感知ってやつか!」
「あぶねぇあぶねぇ、ドッグテイルが合って助かったぜ、あのまま攻撃していたらその足で顔面が蹴り上げられていただろうな」
(移動は早いが動作は俺より早くない、しかしカウンターのつもりで放った一撃が危険感知とやらで避けられた。これは想定外だぞ)
(どうすればあの魔王に一撃加えられるんだ?)
「褒めてやるよ、お前は強いだが、もう近づかないドッグテイルがそれは危険と感知しているからなぁ」
「ならどうやってオレを倒す。今の爪の攻撃で心臓を狙っていたようだが、それしかオレを殺す決定打がないと見た」
「ケヒヒヒ、そいつは尻尾の秘宝玉を舐めすぎだぜ! 決定打ならワニの尻尾以外にもあるのよ! いくらでもあるのよ」
「――――何かするつもりか!?」
ロードは剣を構えて魔王とのギリギリの間合いを計る。
「いでよ! カンガルーテイル!」
その尻尾はフォテイルの背後から5本まで勢いよく伸ばされた。