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第132話 スベリさんのトローのイチゴケーキ

「エントリーナンバー11番、前回優勝者のスベリさんが滑り込んできましたハイ拍手です!!」


 会場からは数百と越える観衆からの拍手があった。


「いいんや~~どうもどうも」


 頭を経個へ越しながら歩くスベリさん。


「あの子が前回の優勝者?」


 スワンが訊いてきた。


「そう、そして、トローのイチゴをくれた人だ」


 ロードは答える


「トローのイチゴ、あの子から貰ったっていうの?」


「そうだ、たぶん出される料理も今までの比ではないだろう」


「あのピーチゼリーを超える程の料理なんて想像もつかないけど……」


「キジを焼き上げたイチゴ料理らしい」


「キジ…………」


 スワンは思案してみる


「イチゴにキジときたらあの料理が有名か……」


 二人は通気口から彼女の姿を見ていた。


「さてさて今回はどんな料理を作って来てくれたのか! また歴史に名を刻むことが出来るだろうか!?」


「今回はあたしが勝つからねぃ! アンタも見て見なあのピーチゼリー見たこともないだろう」


 スモモ選手が意地を張った。


「はんい~~いい料理だとおもんます~~」


「そうだろうそうだろう」


 自慢げに頷く。


「けど私は負けません、トローのイチゴは世界一ですから」


 その真剣な表情は一体何人に伝わったのだろうか。


「では、料理の紹介へと参りましょう! 今年の料理は何とも豪快なイチゴのケーキワンホールでーす!」


「「「おお~~~~~~~」」」


 会場内に驚きが走る。


「さぁ皆さん試食の方をどうぞって言ってもワンホール五等分に切っていくしかないか!!」


「いえ、司会者さんも入れて六等分でいいでしょう」


「わ、わたくしめも食べてよろしいのですか?」


「はい、是非に」


「ではスタッフさんイチゴのケーキワンホールをお切りください!」


 スタッフは六等分、均等になるようにケーキを切り裂いていく。


「ではまずわたくしめから……」


「どうぞどうぞ」


 勧めるスベリ、フォークでケーキを口にする司会者。


「んん!? この食感は何なんだーーーー!! これは審査員の反応が気になるところです!!」


「司会~~ちゃんと説明しろ~~」


「どんな味だったんだ~~」


 会場から野次が飛んで来る。


「まぁまぁ皆さんそこは審査員に任せましょうよ! どうですか審査員の皆さんん、この見た目、この発想、圧巻でしょう!!」


「発想としては圧倒的だ。こんな料理見たことが無い。こんな発想はどこから……?」


「はんい、初めは薄っぺらい生地にしようかと思っていたんですが、遠くに映る山を見ていたらスポンジ状の生地に辿り着きました」


 発想部門のジャンハルさんに答える。


「うむ見た目も素晴らしい一つの芸術性すら感じる」


「特に気合を入れたのがイチゴの配置ですどうやれば見栄えがいいのか考えました」


 見た目部門のビューナツさんに答える。


「味を知ってみると、トローのイチゴをまんべんなく使った料理に感じる」


「はんい、生地、生クリームそれぞれトローのイチゴをまんべんなく使用しています。よくみれば生クリームがイチゴのエキスでピンク色になっているのがわかるでしょう」


 味部門のグルアキさんに答える。


「おや、柔らかくて食べやすいね~~」


「はんい、固なってはこの料理が完成しないので、細心の注意を計り何度も何度も練習していました。丁度食べ時の時間はいくつくらいなのかと、初めは真っ黒こげで固くて、とても食べられるような料理ではありませんでした」


 ナニガシ婦人に答える。


「やはりトローのイチゴは一味違いますな」


「お褒めいただき光栄ですんだ」


 トロッピ村長に答える。


「では審査員の方々、採点の方をどうぞ」


 会場内はそのとんでも料理に度肝を抜かれていた。


「そうか、この異世界ではケーキですら知られていないんだ……?」


 スワンがそう口に零す。


「ケーキくらいならオレのいた異世界にもあるぞ、育ち故郷でケーキ好きの友人が居たんだ」


 友達のダラネーさんを思い出しながら言う。


「故郷にあってもこっちの世界にないモノじゃあ物珍しくもなるって……あの発想かなりのやり手じゃない」


「だから言っただろう。上には上がいるって……」


「そうみたいね、迂闊だった。まさかそんな発想を持って来るなんて……これは負けたかも」


「…………」


 ロードはクールな表情を崩さなかった。


「出ました! スベリさんの採点結果が出ました! 村長さん9点、奥さんが9点、味部門10点、見た目部門10点、発想部門10点で合計48点!! スモモさんの45点を見事追い抜かしましたーーーー!」


「しょんぼりーーーーーー」


「また来年頑張ってくださいな」


スモモさんが会場からレンガの塔まで退場していく。


「さて絶対なる王者となったスベリ選手のイチゴケーキこれを超えることが出来るのかーーーー!! お次はエントリーナンバー12ブンさんです」


「はいわたしの料理は焼きリンゴならぬ焼きオレンジです」


「無理ね」


 スワンが料理名を訊いたと同時に答えた。


「出ました! 2点、5点、2点、4点、1点で合計14点です! スベリさん越えならず!」


「ロードこうなったら満点目指すしかない」


「最初からそのつもりさ……」


 この時、スワンは思っていた(どこからそんな自信がわいてくるんだろう)と、


「出ました! 3点、2点、6点、5点、8点で合計24点です! ブドウパン、ここでイチゴケーキに敗れ去ってしまいました!」


 次々と脱落していく選手たち、以前スベリの48点を超えるものはいなかった。


「ヤシの実ミルクの採点が出ました! 5点、7点、3点、8点、2点で合計25点です」


 選手ががっくりと肩を落としレンガの塔へと戻ってくる。


「さてどんどん参りましょう」


 次の選手も大男だった。


「惜しいスイカは果物に入らない。シマ選手失格です!」


 そしてがっくりと肩を落としながらレンガの塔へと戻ってくる。


「それでは最後のエントリーナンバーです! エントリーナンバー52番ロード選手です!」


 司会者は最後の選手の名を口にした。


「行ってらっしゃい」


 スワンが見送る。


「ああ、行ってくる」

 

 ロードは決戦の舞台に足を踏み込む。

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