第131話 様々な選手たち
「さぁまだまだ続きますよ! トロッピ村長、その奥さんのナニガシ氏、味部門のグルアキ氏、見た目部門のビューナツ氏、発想部門のジャンハル氏、フルーツの祭典はまだまだ続いていきます!」
司会者の熱気はすさまじいものだった。
「り、料理の紹介をしてもよりしいでしょうか?」
司会者の隣には小柄な少女が立っていた。
「おっと私としたことがエントリーナンバー6番のイウキさんの御登場をすっかり見落としてしまっていた!」
「な~~にしてんだべ~~司会~~」
どこかの田舎者に笑いものにされる
「「「わはははははははははははははは」」」
会場に笑いが広がる。
「さて、イウキさん御料理ですが何とビックリ生のままのキウイだそうです! これは一体どういうことなのか!?」
「あのえっと、そのキウイは冷凍したもので、皮を剥けやすくなっているんです」
出された料理は凍らされたキウイだった。
「なるほどキウイの皮がつるんとむけるわけか、聞いたこともない発想だ」
「しかしそれ以外はただのキウイ」
「味にも特に変わったところはない」
「おおっとやはりただのキウイなのでしょうか」
「あっはい、ただのキウイです」
「では採点の方を!」
とりあえず審査員たちは完食した。
「出ました! 3点、1点、4点、1点、5点で合計14点です!」
「うう~~出直してきます」
「イウキさん落ち込むことないですよ~~それでは次のエントリーナンバーをご紹介しましょう。エントリーナンバー7番、南国からの使者ワーイさんだ」
「ウェーーーーイ」
決めポーズをしながら登場してきた。
「今回の料理は何とホットバナナ、こっぺぱんの中央を裂きアツアツのバナナを挟み込み生クリームやチョコレートをかけた逸品だ!」
「おおこれは良い」
「見た目も良いな」
「味もなかなか」
「ホットなバナナは柔らかいのう」
「これはまたレベルの高いものを……」
「おおっと審査員からは高評価だ!! これは採点が楽しみであります!」
「ウェーーーーイ」
「出ました! 8点、8点、9点、7点、5点で合計37点だ! 出ました出ましたエントリーナンバー3番を見事に点差で追い越した!」
「ウェーーーーイ」
ここでまた両腕を広げて決めポーズを見せてくる。
「うう残念です」
フウ選手がレンガの塔へと戻っていく。
「さて次なる挑戦者は何者かエントリーナンバー8番ササラ選手だ!」
「ご機嫌麗しゅう」
今度の出場者は流麗な美女だった。
「今回の料理は何とサクランボ大福という異形の饅頭のご様子、では早速試食タイムと参りましょう!」
「うん発想はかなり雑だが?」
「見た目は桜色で美しい大福だ」
「味もなかなかいいかもしれん」
「大福はのどに詰まりそうで怖いね~~」
「ではでは、試食の方も済んだことですし採点へと参りましょう」
「よろしゅうお願い申し上げます」
「出ました! 6点、6点、7点、9点、3点で合計点が31点だ! これはかなり健闘しましたが、難なく敗退です!」
「こたびはありがとうございました」
ササラ選手が退場していく。
「さてさてお次のエントリーナンバー9は初参加の村出身パイルさんだ!」
「うおおおおおおおおお優勝するぞおおおおおおおおおお!!」
司会に圧勝するほどの大声を出す男だった。
「さぁ運び込まれた料理名を紹介いたしましょう! これこそ俺の腕! パイナップルフライだ! 何でもかんでもフライにすればいいってものじゃないぞパイル選手」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおアイデンティティいいいいいいいいいいいいい!!」
「では試食してもらいましょう」
司会に言われて審査員たちの試食が始まる
「発想は悪くないが実が崩れやすい……」
「見た目は普通のフライ料理ではないか」
「味についても素材の味がいかせていない」
「おおっと審査員たちからは辛口のコメントだ! 結果はどうなることやら!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「出ました! 3点、2点、5点、5点、3点で合計18点だ!」
「……………………」
「パイル選手声も出さずに退場だ。先ほどの元気はどこへやら」
「迷走しすぎでしょう」
スワンがレンガの窓の通気口から感想を吐露する。
「あの料理俺も考えてたやつだ。スワンに注意されてよかった」
そしてロードは安堵の息を漏らす。
「さてエントリーナンバー10スモモさんのご登場だ!」
「よろしくおっさんたち!」
活気のいい女性が現れた。
「スモモ選手は全祭典の第3位を勝ち取っています。今年はどんな料理を見せてくれるのでしょうか!」
「ピーチゼリーだぜ」
彼女がそう言うと続々と審査員たちの元へと料理が運び込びこまれて行く。
「ううんこれは何だ? スプーンでつつくとプルプル震えだすぞ」
「見た目はとても上品だ」
「味は桃味のままだ。しかし不思議と桃の良さだけを引き出している」
「うん、食べやすいね。こういうのを待っていたんだよ」
「いいですなコレは」
「よっしゃ」
「何やら高評価の模様これは期待できるか!? 祭典の方はどうなる!? 審査委員が完食するのをしばらくお待ちください」
「「「~~~~~~~~~~」」」
審査員たちがゼリーの味を堪能していた。
「この異世界にゼリーの文化はないんだ~~?」
スワンが口に零す。
「ぜり~~とはなんだ?」
ロードが尋ねる。
「ゲル状の食べ物」
「……わからん」
「食べてみればわかるから……ほら採点結果が出る」
「出ました! 8点、10点、8点、9点、10点で合計45点!! 出ましたスモモ選手!! 今大会さいだいの45点です!!」
「っしゃ!! うっしゃーーーー!!」
爽快感と共に発せられる勝利の叫びだった。
「ゥェーーーーィ」
小さな声でパイル選手がレンガ塔へ戻っていく。
「手強いアレに勝てると思う?」
スワンが尋ねてくる。
「いや、上には上がいる」
ロードは反論した。
「どういうこと?」
「スベリさんだ優勝候補の」
「さて次なる挑戦者はっと、、、むむ!!」
司会者が息をのむ。
「――来たか」
ロードも息をのむ。
「来ました来ました!! 昨年度優勝のトロ―の村からやってきた田舎の女性!! スベリさんの登場です!!」
司会者が紹介するとレンガの塔の入り口からスベリが姿を現した。
「さて何を出してくる?」
ロードは緊張と熱気にまみれた会場を見渡していた。