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第128話 フルーツ料理への意気込み

 ロードは困っていた。参加登録に契約書のようなものを出されていたからだ。

 それでどうして困るのか答えは簡単。


(この異世界の言語がわからないんだけど~~)

(ゼンワ語はこの異世界でも通じるだろうか)

(こっちに来てオレは一応村の住民たちとコミニケーションを取れている)

(だったら、ゼンワ語の文字も通じるのではないだろうか?)

(一か八か賭けてみよう)


 ロードは参加希望の登録用紙にゼンワ語でロードと書いてみた。


「これは読めますか?」


 近くの受付嬢に訊いてみる。


「ロードさんですか? 読めますけども……」


(よし、この異世界でもゼンワ語の文字は通る。さすが動物でも話せる言語)

(こちらの異世界の文字は一切読めないけど、オレのいた異世界の言語が読めるならなんてことはない)

(このまま氏名はロードと書いて、出身村は……)

(まずいな。出身村じゃなくて、出身地がわからない。そもそもオレは異世界からやって来たし、仮に育ちの国ストンヒュー王国を書いたとしても……いや、問題ないか)


「あの~~」


「あっはい、何でしょう?」


 ロードは受付さんに聞いてみることにした。


「この出身地のところなんですけどかなり遠いところからやって来たんですよね?」


「はいはい、それで……」


「いや、異国の地でも参加できるのかなって」


「参加できますとも……例え異国の地でも小さな集落でも何でも構いません。とにかく書ければいいのです」


「そうですか……教えてくれてありがとう」


 ロードは紙面と再び向き合うのであった。


(出身地ではないがここにストンヒューと書けばいいだな?)

(そうだ。ストンヒューで思い出したけど、名前の姓、ストンヒューなんだよなぁ……これも訊いてみよう)


「あの~~度々すみません」


「あっはい、何でしょうか?」


「この氏名の欄、姓も書かなくてはいけませんか?」


「どちらでも構いませんよ……料理の物品者の名前を呼ぶだけですから、姓だけでも、名だけでも書きさえすればいいのです。あっもちろん偽名はダメですけどね」


「わかりました。ありがとうございます」


(偽名以外でいいのならこのままロードで通しておくか……)

(あと残っているのは料理の物品名か……さて何にしようかな……?)

(ジャングルの王者、これではあの新開発の逸品を表せないよな……?)

(グレート、いや、スーパー、いや……安直すぎるか)


「あの~~そろそろ締め切り一分前ですが……」


 受付嬢がそう言ってくる。


「もうそんなに経ちましたか? わかりました急ぎます」


(ストレートに行こう。あの時の旅立ちの日のように……)


 ロードは料理名を書き込んでいった。


「出来ました。これで参加が出来ますか?」


 受付嬢が提出されたゼンワ語の文字を読み込んでいく。


「――はい、問題ありませんそれではこのままレンガの塔へとお進みください。ありとあらゆる料理機材が揃っていますので遠慮容赦なく料理してください」


 ロードは紙袋に詰め込まれたフルーツの山を手に持った。


(そいえば搾り機持って来るの忘れてた)

(一応助かってわけか……?)


 そのまま受付嬢に道を促されるままにレンガの塔へと入って行った。



 ▼ ▼ ▼



 フルケット村・フルーツ祭典の会場内レンガの塔。

 そこには50名近い参加者が集まっていた。既に料理も始めているようで芳ばしい香りやフルーツ独特の生臭さ、おまけにドリアンの臭さマックスの強烈な匂いまでして、鼻が曲がりそうなロードであった。


「おっロードさん! こんなところでまた会えるなんて奇遇でさ~~」


 後ろから少しなまりの入った声が聞こえてきた。


「ん? スベリさんじゃないか……キミもフルーツの祭典の参加者なのか?」


「んだんだ。まさかロードさんとこんなところで再会できるなんて、そちらさんも参加を?」


「ああ、キミは料理しなくていいのか?」


「今キジが焼きあがるところを待ってるんでさ~~、ロードさんの方こそ料理の方は作らなくていいんだべか?」


「オレは今来たばかりで搾り機を探そうと思っている」


「それでしたらあちらの方で見かけましたよ……」


 スベリがあると言った方角を指で差し示す。


「ありがとう」


「いえいえ、こちらこそ道案内ではお世話になったので……」


 ロードが行こうとしたその時だった。あることが思考の中によぎった。


(そう言えば、トローのイチゴをくれたのはこの人だったけど……)

(アレは昨年の優勝品の逸品だと言われていたな)

(まさかスベリさんがその優勝者なのか? 一応聞いてみるか?)


「スベリさん」


「はい何でおば」


「キミは去年のフルーツの祭典で優勝したとかあるか?」


「はいそうですが……?」


「何!? 優勝したのか!? ちなみに何を出したんだ?」


「実は去年出したのはイチゴのミルクセーキなんですよ? 知りませんか? レシピは公開されているはずなんですが……」


「レシピが公開?」


「はい、優勝したフルーツ料理は未来永劫語りづかれて行くんです……それはもう大変名誉なことでした」


「ちなみに聞くがこの大会ってジュースとか出たことあるか?」


「ジュースとはオレンジジュースとかああいった類の飲み物でしょうか?」


「そうなんだが、やはりこの大会で出すとしたら発想力に掛けるか?」


「はい、そうですね。貧困な発想だと思います。以前敗退した人をお見掛けしました。それが何か?」


「何でもない。オレの出す料理の名前にジュースが入っているから聞いてみたでけだ」


「そうですか。まぁ発想しだいでは優勝も十分あり得ますが……どうかされましたか? ロードさん?」


「フフフ、発想がないわけではない。まぁオレにも策はあるんだ。ジュース一本で勝負してやるさ」


 ちょいと含み笑いをするロード。


「凄い自信これは期待が持てそうでさ」


「そうか~~優勝するとレシピが公表されるのか~~」


「ではお互いライバルとして共に優勝を目指しましょう」


「悪いが勝つのはオレの料理の方だ」


「わたしこそ負けません、トローのイチゴは世界一だということを皆にしらしめて見せます」


 互いに意気投合する二人であった。

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