第125話 どんな料理を出すべきか
食事を終わらせた二人はまだ会話を続けていた。
「それで、フルーツの祭典なんだけど、どんな料理を提出するつもり?」
「まだ決めていない」
ロードは、本日山のように収穫のあったフルーツを見つめていた。
「これだけあっても提出できる料理は一つ、どの果物を使うの? 個人的にはマスクメロンがいいと思う」
「ん~~~~オレはリンゴが好きだから焼きリンゴとか作ってみたいかも……」
「そんな誰でも思いつく料理じゃ優勝なんて狙えないよ……?」
「じゃあスワンなら、マスクメロンを使ってどんな料理を作るんだ?」
「えっわたし? わたしなら~~んん~~~~、そうだね~~~~」
「何だ、そっちも提案なんてないじゃないか……」
「待って今思いつきそうだから……メロン、果肉、果汁……かじゅう、果汁だ!」
「果汁?」
「ジュースを作ればいいじゃない!?」
「――――!? なるほどジュースか、、、そう言えば村でジュースの売っている店は見かけなかったな……」
「紅茶カフェくらいしか飲み物見かけなかったしね~~」
「いいかもしれないジュースづくり……」
「材料は何個もあるけど一つしか選べないのは難点ね~~」
「しかもマスクメロンは一つしかないぞ? ぶっつけ本番で行けって言うのか?」
「それしか優勝する一品は作れないでしょ? それとも他にいい方法があるとでも?」
「……一応色んな果物で試してみたい、搾り機とかあるか? あとコップも頼む」
「あるけど……何? 飲み比べでもするつもり? 時間の無駄だと思うけど……?」
「いいから持って来てくれ」
「は~~~~い」
近くに安置された荷船に向かって行くスワン。
(ん~~王道でリンゴジュースなんてどうだろう)
(それとも意表をついてキウイジュースとか?)
(それか世にも珍しいドラゴンフルーツジュースとか?)
(明日ぶっつけ本番で作るマスクメロンジュースとか?)
「あったよ~~」
スワンが果汁搾り機を持ってこちらへ向かってきていた。
「ありがとう、まずはミカンの果汁でも取ってみるか……」
スワンから果汁搾り機を受け取って、ミカンの皮を剥き始める。
剥き終わると果汁を絞り取るために、搾り機にミカンを押し付けて行く。
そうすると、ミカンの表面がつぶれて汁だけが溜まっていく。
それをコップに注いで飲んでみる。
「うん、うまい」
「ちょっとわたしにも味見をさせて……これでも一応協力しているんだし……」
「わかった」
スワンにミカン汁の入ったコップを渡す。しかし彼女は固まってしまった。
「どうした? 飲まないのか?」
「どこに口つけて飲んだの?」
「そんなことを訊いてどうするんだ?」
「いいから教えて……」
ロードは仕方なくコップに自分の口をつけた場所に指で指示した。
「わかった」
スワンがロードの口をつけた部分を避けて、別の場所に口をつけて飲み干す。
「うん、普通のオレンジジュースね」
「これなら優勝できないか?」
「ちょっと夕方見せてくれたフルーツ祭典の紙を見せてくれない?」
「ん? ああ、これか……はいっどうぞ」
懐から村の地面で拾ったフルーツ祭典の紙を取り出してスワンに渡してあげる。
「えーーっと、書いてあるかなぁ……えっと、あった! あった!」
「ん? 何があったんだ?」
「えーっと、審査の対象を見つけたの」
「審査の対象? どういうことだ?」
「待って今説明するから……えっと今回も昨年度と同じルールでフルーツの採点をします。審査員は5名、まずは味部門のグルアキ氏、見た目部門はビューナツ氏、アイディア部門はジャンハル氏、特別審査員は村長のトロッピ氏とその奥さんナニガシ氏である。だって」
(ナニガシさん……今日会ったあのおばあさんのことだろうか……)
「聞いてる?」
「聞いている審査員の話だろう?」
「そう、わたしの見立てではこのオレンジジュース、味部門は合格できると思う。それから見た目部門も悪くはないはず、ただアイディア部門だと黄色信号ね。もう既に誰かが過去の採点に提出できる程度の発想だと思う……これでは特別部門の方も難しいと思う」
「つまり何が言いたいんだ?」
「あなたのオレンジジュースは不合格!」
スワンはそう言い切った。