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第124話 水面に映る対決

「なんだよ隣になんか座って何のつもりだ?」


 スワンはロードの隣に座り込む。


「ちょっとわたしの力の一部を見せてあげようかなぁと思って……」


 そう言うとスワンは空間に、その綺麗な指で円を描いて見せた。直径50センチメートルの水の鏡が現れた。


「映し出せ、水面の記憶」


「これは――!?」


 そこに映し出されていたのは夜の草原に立つスワンの姿だった。


「音声はないけど情報を絞れるだけ絞り出して、魔王フォッテイル対わたしの戦いだから」


「いやいやこの鏡みたいなものは何だ? 何でスワンが映っているんだ?」


「それは……秘密でお願いします」


「いやしかし仲間の能力も視野に入れておかないと戦闘での連携が――」


「ほらほら見て見て、アレが魔王フォッテイル!」


 スワンに肩を叩かれて目の前の鏡に目をやる。魔王の姿はキツネ顔にどこか詫び錆びの有る風体をしていた。


「ここでわたしがあなた何者って言って――リンクテイルって言われて尻尾がついちゃったって訳」


 フォッテイルから凄まじいスピードで伸びる尻尾が一瞬にしてスワンの身体を捉えた。


(この魔王のスピード尋常じゃないぞ)

 

「ここ! ここで魔王フォッテイルがわたしに尻尾をつける呪いをかけたの!」


「何か尻尾でスカートの中を――――」


「――見るな変態!!」


 急いでスワンが両手でロードの目を覆い隠す。


「いや、よく見ておいてくれと言ったのはお前じゃないか……」


「確かに言ったけど――ここは見なくていい!」


 ギャーギャー騒ぐスワンだったが、両手のそのわずかの指の隙間から見えたのは――どうやってか知らないが、尻尾からドジョウのようにするりと抜け出す彼女の姿だった。


「もう大丈夫かな……ほら見て、尻尾が生えちゃって困っているでしょ?」


「いやそれよりもどうやって尻尾の捕えられていた状態から抜けだしたんだ? そっちの方が気になるぞ」


「それはわたしの特別な力が、って今はそんな話どうでもいい。ほら戦いが始まるから……」


 水面に映された魔王とスワン両者の戦いが今始まろうとしていた。

 まず行動を起こしたのは魔王フォッテイルだった、先ほどリンクされた尻尾を引っ張ってスワンを引き寄せるそぶりを見せる。

 しかしスワンは両手を振った――その時近場の湖から大量の水が宙に浮かびだし四本の指を持った手の形を作りだした。それに加えてスワンが湖の水で水分補給をするのが目に見えた。


「なんだアレは?」


「わたしの力」


「まさかお前も秘宝玉所有者か?」


「そうじゃない。まぁいいから今は黙って見ていて……」


 スワンの作り出した水の腕はいとも簡単に尻尾を掴み、彼女を引き寄せるフォッテイルを容易にぶん回していた。

 その遠心力を利用してどこかの岩場へフォッテイルをぶつけようとした瞬間――ヤツはリンクさせた尻尾を引き延ばしていた。そうして水の腕の一本釣りも引き寄せも、無限に尻尾を伸ばし続けることで回避する。

 

「この魔王、知恵が回るな」


 ロードは軽く賞賛した。


「魔王じゃなくて私を褒めてよ」


「あの水の腕みたいなものは何なんだ?」


「だから、秘密だってば……他に言うことあるでしょ? カッコいいとかきれいで隙のない戦い方とか……」


「謎すぎてよくわからない」


 距離を取りじっくりと間合いを見計らうフォッテイル。水の腕も尻尾を離れてしまっているが魔王への警戒は解いていない。その隙にスワンはもう一つの水の腕を作り出していた。

 その二つの腕がフォッテイルに掴みかからんと容赦なく突進する。しかしフォッテイルは第二の尻尾を詫び錆びの有る風体から飛び出させる。

 それは――


「今度はワニの尻尾か……」


 ジャンプしてワニの尻尾を身体ごと回転させて振り回し、バシャンと水の腕を薙ぎ払い形を崩す。

 着地の瞬間をスワンは見逃さなかった。形を崩した水の腕は今度は槍の形に姿を変えて魔王フォッテイルに襲わせる。

 しかし、今度は猫の尻尾が飛び出してきて空中でバランスを取り、襲い掛かる槍を避ける。

 だがスワンの攻撃もそこで終わりではない。魔王フォッテイルの死角からもう一つの水の腕にして、水の拳が襲い掛かった。

 その時、またも尻尾が生えた今度は犬の尻尾だった。見もせずに襲い掛かる水の拳をワニの尻尾で薙ぎ払い、またも形を崩させる。

 だが、水はそのまま宙に浮かんだ状態で水の腕を形成、ワニの尻尾を掴み取っていた。これで魔王フォッテイルは捕まり勝負が決まったかに見えたのだが、異変が起きた。

 何と魔王はワニの尻尾を別の尻尾にすり替えていたのだ。その尻尾とはトカゲの尻尾。思うがままに水の腕から逃れるように尻尾を切断。フォッテイルは水の腕から逃げおおせたのだった。

 

「トカゲの尻尾か……厄介だな」


 しかし、スワンはこの時湖の中に隠れ潜んでいた。フォッテイルと尻尾がリンクしているので、どこにいるかを見極めるのは、至極簡単なことだったのだが、スワンの狙いに気が付いて、フォッテイルは逃走したのだった。


「ん? 何で逃げているんだ?」


「次のシーンでわかる」


 何とスワンは湖の水を統べて操作して八又の大蛇を作り上げていた。その異形な化け物の姿に驚いたフォッテイルはここで戦うのは不利と判断し逃走するのであった。


「これで終わりか?」


 スワンの水の鏡がバシャンとはじけて消えていた。


「うん一応これで私を襲うことを諦めて逃げて行ったのかなぁと思ったんだけど、、、次の異世界に行ってまた出会ったからこれはおかしいなと思って原因を考えたの……そうしてある仮説を立てて未だ消えないこの尻尾が原因なんだなぁと思ったわけ」


「そうか……手強そうな相手だな」


「どう、あなたが倒した魔王より弱そう強そう?」


「どちらとも言えない」


 ロードは焚火に薪をくべる。


「魔王はその尻尾が震える後日に現れるんだったな?」


「今までの襲撃からだとそうだった……」


「なら、明日は思い切ってフルーツの祭典を楽しむとしよう」


「あなたって変わってるのね」


「スワンも手伝ってくれ、おいしい料理を出して、明日は優勝を目指すぞ」


「そんなにゴールデンアップルが欲しいの?」


「違う、おいしい果物料理だ」


 ロードの長い夜は続いていく。


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