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第119話 火起こし石のコツを教えてもらった

フルケット村・人通りのない道。


ロードはスワンの店まで戻って来ていた。もう太陽が沈む時間だった。


「あっロード」


でかでかと掲げられている帆に書かれたおいしい水ここにあります、という文字は彼には読めない。


「どう、客足の方は……」


「すっごい来た……見て見て! マンゴーに、ドリアンに、シャインマスカット貰っちゃった」


「収穫があって何よりだ……」


「あっ、バケツ、空のになったんだ……どうするまたおいしい水補充しようか?」


「待て、スワン今日の果物の売り上げはいくつあった?」


「えっと~~約50杯分だから~~50個かな」


「じゃあ今日は店仕舞いしよう」


「え~~~~もうちょっと売らない? こんなに売れたの滅多にないんだけど……」


「いや、オレの本命はあくまで明日のフルーツの祭典だ。どんな料理を提出するか考えなくてはならない」


「その時間が欲しいから今日はもう店仕舞いってこと?」


「ああ」


「わかった言う通りにする。お腹も減ってきたことだし、夕食にしましょう」


「ああ、まずは腹ごしらえからだな」


 ロードとスワンは店のシンボルである大きな帆を片付けはじめ、イルカのような水の精霊ドルちゃんによって荷船を村の外まで移動させるのだった。



 ▼ ▼ ▼



 フルケット村の近隣。


 明日はフルケット村のフルーツ祭典、その前祭りが行われているみたいで、村の方から騒がしい声が聞こえて居ていた。

 日も完全に暮れて来たので、オレンジ色の火起こし石で焚火を作っていくロード。


 カッカッカッカッと石と石がぶつかり合う音が響く。


「出来ないなぁ~~」


ロードが困り顔をしていると、


「ちょっと貸して……」


 スワンが催促してきた。


 カッと石と石がぶつかり合う音を出して藁に火が灯った。


「ありがとう」


 お礼を言いながら荷物袋から竹を取り出してフーフーと空気を送り、火を大きくしていく。


「あなた、火も起こせないようじゃあこの先やっていけないよ……?」


「わかってる。影で練習はしているんだがなかなか火が起きなくてな」


「一つコツを教えてあげましょうか?」


「あるのか?」


「火打石は難しいけど、火起こし石ならこう石と石をスライドさせるようにすれば、摩擦熱で一気に火花が出るはず」


「そうなのか? 今度試してみよう」


 夕食はやはり単純なもので、山のように積まれた生のフルーツを食べることにした。


「アオーーーーーーン!」


 ロードが突然吠える。


「――うわっ!? 何々!? オオカミでも呼び寄せたいの!? 実はオオカミ人間だったとでもいうの!?」


 スワンが慌てふためく。


「何点ぐらいだった?」


「えっ?」


「だから今の遠吠えオオカミに比べて何点ぐらいだった?」


「ほ、本気で訊いているの?」


「似ていなかったか?」


「似てた……けど」


「何点くらい似ていた?」


「何点て言われても……89点くらいかなぁ、あははは……なんてね」


「やった!! 89点だ!! 聞いているかルロウ!! オレはオオカミの遠吠えをマスターしつつあるぞ!!」


「オオカミ人間じゃないよね?」


「オオカミ人間てなんだ?」


「月を見るとオオカミに変身する亜人のこと……あなたは違うの?」


「オレは友達のオオカミに森で食事をする前には遠吠えをした方がいいぞって言われてたんだ」


「へ~~どうして?」


「何だっけお客さんが来るから遠吠えして遠ざけるんだとさ……」


「ああ! なるほど!?」


「ん? どういう意味か分かるのか?」


「わかる……って言うか分からずに遠吠えしてたの?」


「いや、遭難したとき別のオオカミに助けてもらえる可能性もあるからって……」


「オオカミが助けに来るわけないと思うけど……」


「それで遠吠えにはどんな理由があるんだ……?」


「えっと、たぶん縄張りを張るんだと思う。オレはここにいるぞ、食われたくなければここには来るな! だと思う」


「オオカミが何を食べるって言うんだ?」


「それはまぁ……人や動物でしょ……?」


「オオカミが食べるのはブークの実とか、コケキンの実だぞ」


「あなたの元いた異世界ではそうなんでしょうけど、大多数の異世界では人も動物も食べるオオカミばかりだから」


「怖い例え話するなよ」


「いや事実なんだけど。それで縄張りを主張してどうするの?


「ルロウが言うにはお客さんが来るらしい」


「お客さん……なるほど食べ物の匂いにつられてやって来る動物さん達のことね」


「ああ、そんなようなこと言っていたなぁ」


「へ~~旅慣れしてるのね~~あなたの友達のオオカミさんは……」


「そろそろ食べようか」


「食べましょうか」


「「いただきます」」


 こうして今日稼いだ果物で夕食を取り始めたのだった。

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