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第115話 甘くておいしい水

 フルケット村・近隣。


 辺りをフルーツの木々が生い茂る。

 スワンに連れられて村の外までて来てしまったのだ。


「なぁどこへ行くんだ」


「ちょっとそこまで、いいからついて来て……」


 スワンの後ろをついて行くロード。辺りを見やってフルーツを発見していた。

 

「こんな所にもフルーツが実っているのか……」


「当然でしょ……この異世界はフルーツだけで生計を立てているみたいだし……」


「これだと勝手に取られるんじゃないか?」


「よく見て良く考えて、まだ熟してないから食べごろじゃないし、だから商品にはならないと思う。それにこの土地は村のモノになっているはずだから、勝手に取ると犯罪になるかも……」


「はんざいってなんだ?」


「あなた本当にモノを知らないのね~~ホント変わってる。えっとね犯罪って言うのは悪いことをするって意味。例えばさっき言っていた盗みとか」


「なるほど、勝手に取って食べると犯罪になるわけだな、覚えておこう」


「まぁ、村はずれに生い茂っている果物なら問題ないと思うけど、、、ていうか犯罪も知らないなんてホントに田舎世界ね。そっちの異世界に物を盗んで行く人とか居なかったわけ?」


「そういう者は見たことも聞いたこともないけど……」


「いいなぁ~~今度あなたの住んでいた異世界に行ってみたい」


「どうやって行くんだ?」


「それは運があればね……」


「やっぱり、一度出てしまった異世界から戻る方法はないのか?」


「わたしは聞いたことが無い」


「そうか……」


 何か情報が得られるのではないかと期待していたが、落胆して少し肩を落とす。


「着いた」


 そこは森にしては広々とした空間だった。


「こんなところまで来て何の用だ?」


「ん? ああ、さっきおごってもらったお礼をしようと思ってね」


「お礼ならいい、別に見返りを求めたんじゃないし……」


「それじゃあ、わたしの気が治まらないの」


 スワンは誰もいない空間に右手人差し指を向けて、はめ込まれた指輪から光を放つと、異質なものが浮かび上がってきた。


「何だこれ? 荷車か?」


 それは大きな荷車にも似た形状をしていた。しかしどこにも車輪のようなものはなく。少しだけ宙に浮いているようだった。


「不正解、、、これは荷船なの」


「荷船?」


「船だよ、、、ふ~~ね」


「船か……噂には聞いていたが始めて見た。って言うかこんなデカい物どうやって出したんだ?」

(異世界の技術で作られているのだろうか)


「出したんじゃない、隠しておいただけ。この隠者の指輪でね。まぁ動かない時だけ消える超常現象だと思っておいて」


「いや、意味が分からないんだが……」


「まぁとにかくそこで待っていて、今いいモノ持って来るから」


 スワンが荷船に乗り込んで行った。


(船……噂では海を渡るときに使われる代物だが……ここは海じゃないよな……?)

(それにあの指輪、船を隠しておいたって言うけど……一体どんな技術なんだ?)

(けど、こんなものに乗って旅できればきっと楽しいかもなぁ……)


 その馬車ぐらいもある大きな荷船を見てロマンを覚える。

 ほどなくしてスワンが戻ってくる。


「はい、どうぞ冷えてますよ~~」


 差し出されたのは紙コップに注がれた冷えた水だった。


「ナニコレ……」


「水」


(見ればわかるよそんなもの)

(だからこれは何、じゃなくて何のつもりって聞いているんだけど)


「さぁ飲んでみて……」


(そんな笑顔で返されても)


「とりあえず飲んでみて……」


(まぁいいけど)


 とりあえずゴクゴクと飲んでみた。


「――――!?」


「どう、おいしいでしょ」


「あ、甘い何だこの水!? すごくおいしい」


「ふう、おいしいって言われた、よかったよかった」


「これは何だ? 何を原料としているんだ?」


「ん~~、ただの水だけど……」


 勝利の笑みを浮かべていた。


「いや、水にしては甘かったぞ、なんだ砂糖でもまぶしているのか?」


「それが入っていないんだな~~」


「じゃあどうしてこんなに甘いんだ?」


「それは~~企・業・秘・密」


「そうか残念だ……」


「でも、気に入ったのならもう一杯飲ませてあげるけど」


「ぜひ、お願いしたい」


「わかった。もう一杯の水をくんでくるから」


 そう言ってスワンは再び荷船の中へと入って行くのであった。


(ついて行ってもいいだろうか)


 と思ってついて行ったのだが、


「企・業・秘・密!」


 怒られてしまった。


(甘くておいしい水の正体が、この先にあると言うのに……耐えろオレ)

(スワンが秘密にしておきたいものなんだ……我慢だオレ)


 そうして好奇心を抑えていた。


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