第113話 知らないことだらけ
「最魔の元凶?」
「知らないようね……教えてあげましょうか?」
「ぜひとも……」
「それじゃあ代わりにどうやって秘宝玉を手に入れたか教えてくれない」
「秘宝玉が欲しいのか?」
「ダメ?」
「ダメではないが、、、わかった。言おう、ソレを使うには磨き探し出すしかない」
「何それ?」
「秘宝玉の手に入れるための条件さ」
「……私も実物くらいなら何度か見て来たけど、秘宝玉ってそんなに簡単に手に入るものじゃない。ましてやあなたみたいな旅人初心者が手に出来る代物ではない。私が訊きたいのは手に入れる方法なのだけど……」
「だから、ソレを使うには磨いて探し出すしかないんだって……」
「ん? あなた秘宝玉に選ばれたからそれを持っているんじゃないの?」
「選ばれたってどういうこと?」
「はぁ~~ダメか。全然話になっていない。と言うか秘宝玉を持っているかも怪しい」
「いや、持っているぞ、って言うかそんなに秘宝玉が欲しいのか……?」
「出来ればね~~あむ」
フルーツタルトを頬張るスワン。
「済まないがオレもこれ以上の情報は知らないんだ。あと知っているとしたら丸くてまるで魂を見ているかのようなモノ……って、どうしたの?」
「魂みたいなもの? 宝石とかじゃなくて?」
「ああ、オレの秘宝玉はそうなんだ……」
「ふーーん、何だ私の勘違いか……?」
「どういうことだ勘違いって……」
「別に、、、それより旅をするなら最魔の元凶くらい知っておいた方がいいでしょうね」
「その最魔の元凶ってのは何なんだ?」
「あらゆる魔石や魔曲や魔法や魔物の根源……英雄たちの真の敵ってところかな」
「こんげん?」
「簡単に言えば、始まりのこと、ほら魔物がどうやって生まれるのかとか、魔石がどうやって生み出されていくのかとか……聞いたことないでしょうけど、それを何とかすれば魔王たちは全滅するって噂もあるから」
「それは本当か?」
「いいえ、ただの噂話、誰も見たことはないし、どこにあるかもわかってない。全ての魔王の統治者って噂もあるし……」
「統治者か……ならそいつを何とかすれば、あらゆる世界に平和が訪れるんだよな……?」
「まぁそうだけど……あくまで噂話だから」
「そいつは強いのか?」
「だからこれ以上のことは誰も知らないって……」
「そうか……でも、ありがとう」
「へ?」
「これで当面の目標は定まったオレはその最魔の元凶を何とかしてみるよ」
「本気で言ってるの?」
「ああ、それで世界が平和になるのなら手間が省けて助かる」
「もしかしてあなたの旅の目的って魔王を一体たりともこの世から駆逐するってこと?」
「そうさ」
「無理ね」
「それはやってみないとわからないじゃないか……?」
「わかるの……要するに誰よりも最強になりたいってことでしょう」
「最強……」
「まだまだ魔王の恐ろしさを全然わかっていない。ただの命知らず」
「そうか……オレが最強になれば世界が平和になる」
「へ?」
「ありがとうスワン先輩、オレもっともっと強くなって魔王たちが悪いことをできないようにするよ」
「ちょっと、それ本気で言っている訳?」
「ああ、本気さ」
「あなた年はいくつ? わたしは19歳」
「オレも19歳」
「はぁ~~~~青い夢」
フルーツタルトの最後のひとかじりしてマミズの実の果汁も飲み干して席を立った。
「それじゃあね。旅人さん良い旅を……」
「――ああ待ってくれ、まだ聞きたいことがいっぱい……」
ロードは急いでフルーツタルトを食べ終えて、マミズの実の果汁を飲み干す。
(もう行ってしまったかな?)
(色々と情報を持っていたようだし)
(せめて魔物がどんな奴らか聞いておきたかったけど)
その時だった。
お会計で固まっているスワンを発見した。
「スワン先輩まだいたのかって……アレ?」
「お客様当店のお支払いはフルーツが必要でございます。でなければ無銭飲食としてそれなりの労働をしてもらうことになりますが、よろしいでしょうか?」
「スワン先輩」
顔を真っ赤にしながらロードの方に向きを変える。
「ねぇ……あなたにお願いがあるのだけど、その山のようにある果物でわたしのピンチを助けてくれませんか……」
「ん? どういうこと?」
状況の理解できないロードだった。
「お連れ様ですか?」
「いや、オレは――――」
「そうなんです。お支払いの方は、この人が払ってくれますからご心配なさらず……」
「では、お支払いは合わせてフルーツ10個分となります」
「あっはい、フルーツ10個分っと」
紙袋から計10個分のフルーツを取り出して支払いを済ませた。
「ありがとうございました~~またのご来店をお待ちしております」
こうしてスワンの分の食事をおごらされる羽目になった。