第111話 質問
フルケット村・紅茶カフェ
ロードの目の前には水色の長髪をたなびかせる美女がいた。後髪の毛先は紐で結ばれていて魚の尾ひれのようになっていた。
「スワンていうのか……」
「コラ、先輩をつけなさい先輩を、私の方があなたより冒険歴長いんだから……はい次、あなたの自己紹介の番」
「お、おれは、ロード……レオリカン王国に認められた称号、勇者の二つ名を持つロードだ」
「ん~~なぁに、勇者の二つ名ってなに?」
「勇者を知らないのか?」
「知らないし、聞いたこともない異名ね……それで名前がロード、これは姓の方かな?」
「せい……ってなんだ?」
会話の空気が変わる。
「あり得ない!? 姓のない文明世界から来たってこと!? 一体どこの田舎世界からやって来たわけ! と言うかどうやって異世界転移してきたの!?」
「えっと竜の世渡りの力を使ってやって来たんだ……スワン、先輩はどうやって来たんだ?」
「ストップ、ストップ、竜!? いま竜の世渡りって言った!?」
「言ったけど今度はこっちの質問ではないか? スワン先輩」
「――っ!? わ、分かった。とりあえず順番に会話していきましょう」
「せいってなんだ?」
「姓ね~~なんて言ったらいいのか……血縁一族のことを差してるわけで、どこで生まれた~~とか、どんな部族か~~を表して……って説明が難しすぎる」
「要するに何なんだ?」
「名前の後ろにつける名前だってこと……意味わかった?」
「わからないが要するに地名でもつけておけばいいんだろう? それじゃあ育ち故郷から取ってロード・ストンヒューだな」
「今考えてるし、どんだけ田舎世界から来たの~今まで姓のある人には会わなかったわけ?」
「う~~ん、うん、会わなかったな」
「そう、まぁわたしもこの世界じゃ姓のある人、聞いたことないから駆け出しの旅人ならこの世界の環境はあっているんじゃない」
「じゃあ今度はこっちの質問ということで、、、」
「えっ……次わたしの質問の番じゃないの?」
「何を言っているんだ質問ならされたぞ。姓のある人物にあったことあるか~~とか」
「どうでもいいところで鋭い人……わかった。質問どうぞ」
「スワン先輩はどうして旅をしているんですか?」
「そこはノーコメント。旅好きな女の人ってことにしておいて……」
「答えになってないじゃないか」
「答える気がないから……で、今なら質問を変えることを許可するけど……」
「それじゃあ~~」
マジマジとスワンを見る。着飾っているモノは魚の鱗みたいだった。とりわけ珍しかったが、
(聞くほどの格好じゃないな)
「何じろじろと見てるの? 質問決まらないなら私の番」
「待った待った、あるさ質問……えっと、スワン先輩はいくつの世界を回って来たんだ?」
「たくさん回って来た。まっ軽く50は超えるほどにね」
「ご、50!?」
「驚いた? それじゃあ次は私の質問の番……
「一体どんな世界があったんだ? 教えてくれスワン先輩」
「あなたさっき自分で言ったこと覚えていないの? 今度はわたしが質問する番でしょう」
凄い睨まれた。
「その異世界からここへ来るときに役に立ったであろう竜は今どこにいるの?」
「それは本人の許可がないと答えられない」
「それじゃあ質問の仕方を変えましょう。あなたはその竜を配下に納めたというの?」
「いいや、仲間だ」
スワンの凄い睨みにもへこたれず、純粋無垢なまなこを返すロードだった。
この時スワンは心の中で(そう、仲間は売れないってこと……少し一緒にいると安心するかなこの人)そう思っていた。
少し警戒心が弱まった目で語りかけて来る。
「じゃあ今度こそオレの質問……」
その時だった。
「お待たせしました~~こちら注文のフルーツタルトとマミズの実の果汁にてございます」
「ありがとう」
スワンが座り直して食事を始める。すると今度はロードにも、
「お待たせしました~~こちら注文のフルーツタルトとマミズの実の果汁にてございます」
皿の上には三角形のフルーツタルト、紅茶のカップには無色透明なマミズの実の飲み物が入れられていた。
「あっはいでは……」
「「いただきます」」
二人そろって昼食を取ることにした。
「で、さっきの話の続きなんだけどこの前の世界で魔王に出くわしたと言ったら、あなたにはどんな質問を返せばいいのやら」
「――っ!?」
(ま、魔王だって!!)
食事を始めたというのに会話は続いていく。