第108話 到着フルケット村
フルケット村・入り口。
村の入り口に到着したロードとスベル。入り口の門には見慣れない文字が書かれている。
「えっと、、、ここがフルケット村でいいのかな」
「いんや~~短い間ではありんしたが、お世話になりました。それでは私はこれにて……さようなら」
「あ、ああ、さようなら」
こうしてスベルは村の奥へ奥へと進んで、人ごみに紛れて見えなくなっていった。
ここはフルケット山の山頂、フルケット村。
祭りごともあるので村の中はお祭り状態どこもかしこも人、人、人、で溢れかえっていた。
入り口の前でロードはボーーーーっと突っ立ていた。
(ここが例のフルーツ料理が採点される村か……確か祭典は明日からだって聞いたな……?)
(けど入場チケットがないと入れないって聞いたが、どれくらいの集客力があるんだろう)
(スベルさんの話だとチケットは1000枚で締め切りと聞いたが、ここには1000人以上の人たちが集まっていると言うことにならないだろうか……?)
(ちょっと村の人に訊いてみるか……)
ロードは歩みだした。人ごみに紛れながらもフルケット村へと入って行く。
周りを見れば色んな格好をした住人や外来者が来ていて、村の活気がもの凄い熱量で埋め尽くされていた。
村一つなので多少狭いこともあって、前へ進むのも一苦労である。
(ちょっと人が多すぎないかこれは、もっと村を開拓して広めの空間にした方がいいぞ)
(いや待て、1000人規模が出入りするのが明日だから、1000人もの外来者さんたちが会場を埋め尽くすという訳で、この村から1000人は消えるという計算にならないだろうか……?)
(何にしても早く情報収集できるような現地人に会いたいものだ)
ロードの言う通り村を開拓した方がいいのだが、これでも毎年、村を開拓している方なので、対策が出来ていないという訳ではないのだが、毎年増え続ける客足に追いついていないだけだったのだ。
(よっと、やっと人通りのない場所に出たぞ……)
いくつものフルーツ出店を目にしてようやっと路地裏に出たロードが目にしたのはこの村の地図だった。
(さてここは村のどの辺りだろう)
目で村のどの辺りか追いかけていくのだが、どこだかわからず、挙句の果てには、
「ちょいとお若いの……その地図はずっと前の物だから役には立たんぞ」
ローブを頭までズッポリと着込んだおばあさんに声を掛けられた。
ロードも振り返り正体不明の謎のおばあさんの方へ振り向いた。
「あなたは誰ですか?」
「この村の村長の妻ナニガシじゃよ……」
「この村の? ちょっとお尋ねしたいんですけど、この地図が使い物にならないってどういうことですか?」
「ん? お前さんひょっとしてフルケット村は初めてかい? なら、説明してあげようじゃないか……お代はそうさな。その紙袋のフルーツ1個分でどうじゃろ」
「フルーツを? わかりました。説明してください」
「その地図はもう20年前のモノなのじゃ」
「20年前この村にはこんなに人は集まらなかった」
「だが、12年前とある大会を開いたのじゃ」
「それが皆も良く知るフルーツの祭典」
「その時の優勝料理が村の外まで轟いてのう」
「フルーツ料理の腕に自信のある者たちがこの地に毎年集い」
「競い合うことになったのじゃ」
「そのコンテストの噂は腕自慢だけでなく、客足をも呼び込んだ」
「そうして毎年、段々と客足が増えるようになったのじゃ」
「それに合わせて毎年村を拡張しているんじゃがのう」
「いかんせん客足の方が毎年上回ってしまうんじゃよ」
「だからその地図を見ても村の全貌は読み取れんぞと言う話じゃ」
村長の妻さんの話はそこで終わった。
「そうだったんですか……」
「ホレ、果物を一つくれないか?」
「あっそうでしたではこれを……」
適当に紙袋からつまみ出したフルーツを手渡した。それはロードに取ってみたこともない異形の形をしたフルーツだった。それでもとてもおいしそうに見えたのでそれを選んであげた。
「うん、確かにもらい受けたぞ。それではのう若者や」
おばあさんにはどんなフルーツかわかったようで、それを生でかじりつく。
「――おばあさん! もう一つ聞いていいですか!?」
「何じゃらほい」
「コンテスト入場チケットはもう売りきれですか?」
「そんなもん朝の内にとっくに売り切れておるよ」
気になっていたことに答えると、村長の妻であるおばあさんは表通りの方へ姿を消した。
(朝の内に売り切れか……やっぱり見ておきたかったな。残念だ)
(もう昼頃だし、どこか落ち着いた場所で食事にしよう。丁度フルーツもたくさんあることだしなぁ)
(昼ご飯はこれでいけないだろうか……いや)
(折角この村に来たんだし、お祭り気分だけでも楽しむか……)
(そうとなれば出発だ)
ロードも地図を一応頭に叩き込んで人通りの多い、表通りへと移動する。