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第106話 風船が割れちゃった

「小春のフルーツ祭典?」


 ロードが果物に手を付けながらおばあさんに訊いていた。


「おや、何も知らずにフルケット山を目指していたのかい……毎年あるんだよ。フルーツの最大規模のお祭りが……」


「ふん、お祭りですか……それは楽しみだなぁ」


「おお楽しいぞ。色々な種類のフルーツが一カ所に集まる式典だからのう」


「教えてくれてありがとうございました」


「なになに、いいんだよ」


 今にも枯れ果てそうなおばあさんが切り株に座り込む。


「さて、わたしはここで休憩でもしていくかのう……」


「それではオレは先を急ぎますので……さようなら」


「おお、何か出店を出すなら看板はデカいようにしておいてくれよ」


「はい」


 休憩を終わらしたロードが再び大荷物を持って歩み始める。ちなみに5個手に入れたリンゴは荷物袋の中に入っている。あまりの量の荷物に左に偏って歩くのであった。


 坂道を一歩一歩、踏みしだいて進んで行く。


(随分急な坂になってきたな、別の道を探すか……)

(……しかし、異世界に来て早速祭りごとに参加できるとはこれは期待していた冒険に入るんじゃないだろうか)


 ロードが考えていると、ふと、何か泣きすするような声が聞こえて来た。


(泣き声? それも子供か? どうしたんだろう)


 すぐさま子供の声の聞こえる場所まで駆けつける。7歳ぐらいのおさげ姿で可愛らしい女の子だった。


「うえ~~~~ん、うえ~~~~ん」


「どうした何を泣いているんだ?」


「ふぇ? お、お兄ちゃん誰?」


「オレはロード、聞いたことないかもしれないけど人を助ける勇者だ」


「ゆうしゃって何?」


 涙声の7歳の少女。


「まぁ、困っている人がいたら助ける人って考えておけばいい」


「よくわかんないよ」


(何で泣いているんだろう、、、もしかしてこの子にもオオカミの遠吠えが聞こえていたのかもしれない)

(ちょっと訊いてみるか……?)

「何で泣いてしまったんだ? やっぱりキミもオオカミの声が聞こえたからか?」


「オオカミなんているの? うえ~~~~~~ん、怖いよう怖いよう」


「いや、大丈夫だオオカミの話はたとえ話だ。例え実際にいたとしても襲ってきたりしないさ」


「うえ~~~~~~ん」


「うわわ、泣かないでくれ……えっと、お父さんやお母さんは一緒ではないのか?」


「うぅ、ひっく、お父さんとここに来た、えぐっ」


「お父さんとはぐれてしまったのか?」


「違う、うう、梯子とって来るからここで待っていろって……」


 流す涙が段々治まって来たのだろう。少女の目は赤く染まっていたが、涙が流れなくなっていた。


「梯子なんて何に使うんだ?」


「アレ取るために……」


 少女が指さしたのは自分の頭上、木に糸が絡まったフルーツの形をした風船だった。


「キミのお父さんには悪いがここは格好をつけさせてくれ」


 その場に荷物を全て降ろして、屈伸したりと準備運動をする。


「ふぅ~~~~、さて飛べるかなっと――」


 その場で大ジャンプをひろして見せた。そして木に糸の絡まった風船のところにまで余裕で到達することが出来た。ロードは木の枝に跨り糸をほどいていく。


「そこで待っていてくれ! すぐに糸をほどいてそっちに戻るから」


「危ないよ~~、お兄ちゃん!」


(大丈夫、大丈夫、よっとほどけたな)

「下がってくれ今からそこに飛び降りるから……」


「……う、うん」


 少女が一歩、二歩、三歩と下がっていく。十歩目のところでロードは跳び降りた。


 そして地面に着地するのだが、


「「………………………………」」


 飛び降りからの落下の際、風船が他の枝に引っ掛かり割れてしまった。二人は無言で割れてしまった風船を見ていた。


「ご、ごめんよ」


「う、う、うわ~~~~~~~~~~~~ん!!」


「ああ、泣かないで泣かないで……お兄さんが悪かったから――」


 その時、草むらから鬼の形相で現れた男が出て来た。


「よくも、娘をいじめたなぁーーーー!!」


 恐らく少女の父親だろう。梯子を振り回しながら容赦なく襲い掛かって来た。


「ち、違うんです!!」


 とりあえずロードは振り回される梯子が少女に当たると危ないので、常人を超える力で掴み止めた。

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