第101話 初めての異世界
ロードは赤い竜と一体となった赤い竜封じの剣を握っていた。彼はアカという竜に堂々と仁王立ちしていた。異世界の移動の為、周りの景色が赤と白の線でいっぱいになっていた。
「もうじき着くぞロード」
(はじめての異世界だ一体どんなところだろう。いきなり悲しい世界に着かないといいけどなぁ)
視界いっぱいの赤い線は薄っすらとしてきて、白い景色が広がって来た。
「この辺りがいいだろう……」
高速で移動していたアカが速度が段々と落ちていき、あるところで停止する。
「ここはどこだ? 異世界に着いたのか? 辺り一帯が真っ白い霧で覆われているぞ……?」
ロードが始めてみる異世界は白一色の霧の世界だった。
「勘違いするな。堂々と出現してもいいように雲の中に飛び込んだだけだ。まぁ、ここが異世界であることには変わりはないが……」
「ここが雲、異世界にも普通の雲があるんだなぁ……? あっ雲って掴めないんだ……」
白い景色を掴もうとしても手に何も残らない。
(くぅ~~、面白い。雲ってことは今宙に浮いてい入るんだよなぁ。そうだ!)
「アカ! 外が見てみたいいったいどんな異世界に来たのか早く見たい」
「そう期待するな、もしかしたらすでに魔王に支配されている世界かもしれないぞ」
「脅かさなくていいから早く外を見せてくれ!」
「まぁいいが」
アカの身体が雲からスッと出てきて、その竜のシルエットがあらわになっていた。もちろんロードは雲の中から顔を出し視線を眼下におく。
「うおおおおおお!! 見ろよアカ、下の世界が辺り一面、木が生えて森になっているぞ」
「森か……なら我が身体をさらしても大丈夫そうだ」
雲からアカのその姿がゴバッと吐き出された。その時ロードがずっと握りしめていた竜封じの剣に異変があった。突然ドクンドクンと脈打っていたのだ。
「な、なんだ!?」
「くっ、どうやら竜封じの剣の殺しの力が強くなってきている。どうにかしなくては……」
「わかったすぐに降りようそれまでオレが道の力で生命力を送り続けるから……」
手に力を込めたのだが、以前魔王と戦っていた時のような生かす力が働かなかった。
「何も起きない……?」
「竜封じに送る力の量が限界に達したのか、ロードが道の力を使いこなせていないかだ。今の内に景色をその目に焼き付けておけ、何かあるかもしれん」
「景色って360度見渡せってことか? わかった見ておく」
ロードは辺り一帯の景色を上空から見て目に焼き付けておいた。基本的に森、森、森が広がっていた。
「こっちの世界にも日の光があるんだなぁ」
「アレは太陽と言うんだ。空気もいいみたいだし、とにかく降りるぞ。もう我の身が持たない」
アカはその身体を森の中へと沈めていった。
「ここまでが限界だな。我は剣の形に戻るぞ」
「わかった……」
そうロードが答えると、アカは剣の形に戻っていく。まるで剣がアカを飲み込むように、吸収するように戻っていく。そうすると、アカの背中に乗っていたロードは宙に浮いた形になって、スタッと地面に着地した。
「で、何か見えたか」
剣の鞘に収まったアカが答える。
「とりあえず森しか見えなかったが、ひときわ大きな山がキラキラしていたような……」
「では、まずそこに向かうとしようじゃないか」
「何でだ?」
「何かあるかもしれないだろう。例えば人とか食べものとか仕事とか見つかるかもしれないだろう」
「そっか……アレ? ちょっと待て、俺たちは魔王によって悲しむ人々を救いに来たんだよな……?」
「そうだが……」
「人々が安全に暮らしていそうなここには特別用はないんじゃないか?」
「ルロウも言っていたんじゃないのか? 旅は楽しめよとか……」
「ああ、言っていたな。よしキラキラ光る山の方を目指してみるか……」
「我は少し眠るとしよう…………」
こうしてアカと共に始めて降り立った異世界に、少し緊張をしながらロードは目的地を見定めた。
(って言うか、俺のいた世界より木がどっしりしているような。よく見れば木の実がたくさん生えているような)
そんな感じでロードたちの旅は始まった。