000:再起動
《記憶領域にて読み込み可能なデータを確認》
《記憶データの抽出及び再生を開始》
―――
――
酷い話だ。
世界の果て、そこにそびえ立つ塔の最上階。
室内だって言うのに、砂嵐が吹き荒んでいる。
「――――ああ、クソッタレ」
ふらつく身体に活を入れる。
この砂嵐を早く止めなくてはならない。
この“砂”一粒一粒が微細なナノマシンで出来ている。
こいつらはプログラムに沿って世界各地で破壊活動を繰り広げている。
全世界のナノマシンを操作できるのはこの場所のコンソールしかない。
意識が白む。
自身の身体にもタイムリミットが来ている。
ここにたどり着くまでにかなりの無茶をした。
だが、こんなところで力尽きるわけにはいかない。
我々の勝利を祈る幾多の人たちを守るためにも、なんとしてもナノマシンを止めなくては。
「……ハハッ、まったく余計なものを随分と背負い込んだ」
最初は復讐のために戦っていたというのに、多くの守りたいものができてしまった。
まあ、悪い気分じゃない。
もう帰ることは出来なくても、帰る場所があるということはいいことなのだろう。
コンソールにたどり着く。
プログラムは予め作成してあるものが持ってきたメモリに入っている。
コンソールにメモリを接続し、プログラムを立ち上げる。
「――――さて、これで終わりにしよう」
その言葉とともにオレはプログラムを起動した。
―――
――――
《記憶領域に破損を確認》
《修復を実行……失敗》
《バックグラウンドでの修復作業を実行》
《以後再生可能な記憶データを確認次第再生を開始》
■
「……んぁ?」
目を覚ます。
どうやら少し眠っていたようだ。
それにしても――――
「変な夢を見たような……」
重要なようでどこか他人事な、遠い夢を見ていた気がする。
だが、内容があやふやで詳しく思い出せない。
まあ、夢なんてそんなものだろう。
頬をはたき、眠気を覚まして立ち上がる。
「いてててて、変な寝方したせいで身体がいてえ」
そもそも野宿というか、適当にそこらに転がっていたわけで、そら身体も痛くなる。
だが、不可抗力。
仕方ない理由もあるわけで……。
「さて、一体いつになったら人里に辿り着くんだか……」
辺り一面人気のない荒野。
なんだかよくわからん枯れ木みたいなのくらいしか生えておらず、緑は一切感じない。
ぺんぺん草も生えないとはこのことか。
極稀に建物のようなものもあるが、廃墟同然。
なんかあの転がっていく丸い枯れ草とかありそうな雰囲気。
オレはこの光景を2日ほど見続けていた。
「そもそもここどこなんだよ……」
そんなボヤキも虚空に吸い込まれていった。