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第二話 それなりの霊力量があれば比較的簡単に霊力蓄積ができる指輪

 案内の人は助教授の人にわたしを紹介すると、とっとと帰って行きました。

 ここで待っていてもしょうがないからと、第二錬成科の校舎? に入ります。入り口の脇にある、すこし広い感じの応接室に通されました。

 女の子はユリアナちゃん、八歳。爆音雷造りの専門家セルビアーナさんの娘でした。座るとワイサイト助教授にしがみ付いています。

 今日は入学式なのでお母様のお仕事はないだろうと思って遊びに来たそうのですが、可哀想な事になってしまいました。

 妹のアマビリアと同じ歳なので、とても気になります。ワイサイト助教授に聞きます。


「大丈夫ですよね」

「うん、ユリアナもこんなのは慣れてるから。生まれた時からセルビアーナさんの娘やってるんだから」

「それに慣れるとか、そこからだめな気がします」


 第二錬成科長先生は最年少で賢者の称号を授かり上級教授になった為に、古参の教授から目の敵にされているそうです。

 本当ならもう暫くすれば錬成科長になれたのですが、優秀だから早目に科長にしようとの屁理屈で第二錬成科が作られて、学院の端っこに追いやられたのです。

 そんな話を聞いていると、扉が開きました。

 立派なトーガを纏った長身の男性と、細身で暗い感じの美人が入って来ます。


「早かったですね」

「ああ、途中で学院長から、逸材が現れたので、早く帰れと連絡があった」


 この方が第二錬成科長先生に間違いないので、立ち上がります。


「そなたが、前世の記憶を持つ光属性の特級適応者か」

「はい、サピエンティアと申します、どうぞ、よしなにお願いいたします」

「そうか、座れ。これを付けてみろ」


 紹介とかちゃんとした挨拶とかなしで、いきなり指の一関節分ある楕円形の金属の指輪を渡されました。真ん中に二センチくらいの象牙色の球体が嵌っています。


「それは、それなりの霊力量があれば比較的簡単に霊力蓄積ができる指輪と言って、それなりの霊力量があれば比較的簡単に霊力蓄積ができる指輪なのだ」

「それ、名前か説明のどちらか片方でいいんじゃないんでしょうか」

「何を言うか、世の中には名前通りの性能を持たぬ霊法具がいくらでもあるが、これはその名の通りの性能を持つのだ」

「とても素晴らしい物なのですね」

「判ればよい」

「師匠のこう言うのは慣れて」

「はい」


 この先も慣れなければいけない事がたくさんありそうです。

 レーザーの仕組みを説明してもらっていると、気が利く人がお茶とお菓子を持ってきてくれて、更に気が利く事に、お昼をどうするか聞いてくれました。どうなるんだろうと思っていたのです。

 そのまま済し崩しに肉野菜炒め入りクレープを食べてから、レーザーの試し撃ちになりました。

 ちょっと厚手のクレープは癖の無い白いトウモロコシの粉で出来ています。このトウモロコシが主食です。


 食休みの後、大学院警備部隊の修練所に向かいます。もう、どこがどこやら。置いて行かれたら完全に迷子ですよ。

 ユリアナちゃんはお母様がいるのに助教授にしがみ付いたままです。お母様と遊びに来たわけではないようですね。

 それほど歩かずに警備部隊の修練所に着きました。第二錬成科が学院の敷地の端っこにあるんですね。


 もの凄く立派な革鎧を着た将官と思われる方がお出迎えしてくれました。身長は二メートル弱くらいでしょうか。いかにも武将な感じの厳つい顔が小さく見える程の筋肉質です。

 まったく霊気が感じられませんが、これは完全に自分の霊力をコントロールしているからで、能力が高い証拠なのです。獲物に感付かれないためですね。

 この世界には武人と呼ばれる、別種族じゃないかと思われる戦闘民族がいます。

 属性を乗せた攻撃が出来ない代わりに、無属性の闘気弾を撃てたり、武器から闘気の刃や切先を伸ばせます。

 武人以外の人間は文人と呼ばれていて、文人と武人の間にも子供は出来るのですが、文人か武人のどちらかになって、中間的な力を持つことはありません。


「嬢ちゃんが新しいれえざあの子かい」

「はい、サピエンティアと申します」

「儂はムウロムじゃ」

「王国守護将閣下!」


 危うく跳び下りそうになりました。信長とか家康みたいに、名前だけで国中が誰だか知っている方です。


「陛下から貰った称号じゃで、違うとは言わんが、近いものには老師と呼ばれとる。これから長い付き合いになるで、嬢ちゃんもそう呼んどくれ」

「はい、老師様と呼ばせて頂きます」


 元近衛軍指令で、名誉職に退かれた方です。なんでこんな偉い人がここにいるんでしょう。入学式の来賓だったにしても、もう帰っているはず。

 長い付き合いになるんですか?


「シェムーザが凄い嬢ちゃんが現れたと云うとったで、楽しみじゃ」


 うわあ、待ってたんだ。期待はずれだったらどうしよう。わたしのせいじゃなくても、怖い。

 シェムーザって学院長先生のお名前です。呼び捨てなの。

 御身分は王族同格で、爵位があれば大公くらいなんですけどね。

 老師様が隊長らしき人に修練所にいた人を全員下らせました。どれだけの威力を期待しているんでしょうか。

 その上、石の柱に乗せた缶ビールくらいの木の的では威力が判らないかも知れないので、石の柱を直接撃つ事になりました。


 どうなっても知りません。修練所の端から、曲げた左腕に右腕を乗せて、かなり遠くにある石柱を狙います。

 指輪に霊力を送り込むと、嵌めてある石を中心に淡い円形の揺らぎ「霊光輪」が出来ます。溜め過ぎると四散してしまうのですが。

 

 ギリギリまで溜めて「撃ちます」と言ってから撃ちました。ギュンなんて音とかしません。一瞬後に石柱が爆散しました。


「貫通する前に、石が気化したんでしょうか」


 この世界で一人だけの、似たような知識を持っている人に聞きました。


「そうだろうね」

「威力としては、どうなんでしょう」


 老師様がぐっと寄ってこられます。


「嬢ちゃん、あれで不満か」

「不満ではないのですが」

「あれ一撃で壊せるのは佐官以上じゃぞ。とりあえず、近衛軍特務遊撃隊少尉に推薦しとく」

「はい?」

「少尉は不満かもしれんが、実績がないで」

「いえ、いきなり尉官を頂けるのですか? しかも近衛軍?」

「特務遊撃隊は市井の優れた者が宮中に入りやすくする方便じゃ。インディソルビリスの命に従う必要はない」

「は、はい」


 誰の事か判りませんが、凄く偉い人でしょう。


「儂の推薦が却下されるはずはないで、嬢ちゃんはもう少尉でよいじゃろ。乗騎を見繕いに行こうか」

「ロンタノでしょうか」


 ずっと黙っておられた第二錬成科長先生がおっしゃいます。

 聞いたことのある名前でした。


「まあ、あれがよかろう」

「ロンタノって、触れ合い広場にいる子牛では?」

「知っておったか」

「妹がよく話していましたが、子牛ですよね?」

「なぜか見た目が子牛のままなんじゃ。気持ちが幼いだけで頭は良いし、体は大人と遜色ない、子供乗せ慣れとるで、安全じゃろ」


 最早決定事項のようで、老師様のお車で、人間と共存する動物と子供が一緒に遊ぶ触れ合い広場に向かいます。

 この世界では下手に動力源のある機械などを作ると、魔獣化してしまうのですが、熱冷管動力機と呼ばれているスターリングエンジンで動く、非武装の自動車があるのです。

 魔物の霊核を簡単に熱源に出来るので、蒸気タービンとスターリングエンジンが普通にあるのでした。

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