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第十二話 権力者に居直られたら、何が出来ると言うの

「昔から、カマス頭を呼び寄せられないか、と言う研究はあったのだ」


 真実を知ってしまったわたしに、国家権力が居直りました。話しているのは錬成科長ですが、計画は国家規模のものだったのです。


「わたしが死んだらどうするんです」

「二級の光属性は時々生まれる。レーザーの概念がこの世界に定着すれば、習得は容易になるだろう。三級でもこの指輪を持たせて数人で組めば誘き寄せられると思う。多くの者にそなたがレーザーの威力を知らしめるのが第一なのだ」

「いきなり亜竜はないと思います」

「判り易い手柄が必要だったのだ。すでに港では評判になっている。故意に噂を流している訳ではない。多くの漁師が見ているからな」

「学院長が直接会って、王国守護将閣下が待っていた時点で、わたしに逃げ道も勝ち目もなかったんだわ」

「現実を理解してくれたようで嬉しく思う」


 おう、好きにしやがれ。


 五日後にまたカマス頭猟です。そんなに獲って値崩れしないのか聞いたら、百匹でもかまわないんだそうです。外国が買いたがるし、国の大きな四次元収納に仕舞っておいてもいいのだそうで。

 結局、わたしが撃っただけで怒って向かって来て、ガラデニア薬学科長が生き血が欲しいと言うところまで一緒でした。

 動脈血が欲しいんですね。死んじゃうと直後でも違っちゃうのかしら。その辺の知識はないようです。


 元締めの屋敷の宴会場は無礼極まりない無礼講の場と化しました。エロビデオの団体温泉旅行。なんでそんな物の記憶があるのかしら。

 同じ男の人と付き合っていると子宮が妊娠可能状態になる一種の刺激性排卵で、生理がないのがすごく楽に思えるので、前世も女だったと思うのですが。

 巻き込まれないように部屋に上がります。

 翌日の昼過ぎにロンタノとムーたんを連れて果物の食べ歩きも一緒。動物性タンパクは気にしなくても摂れているでしょう。


 四匹目は王都警備軍指令閣下がいらして、老師様の代わりをしました。女性でしたよ。お名前はエレガンティナ様。

 本当はこのくらいの人が軍を率いて出張って来て、退治するような魔獣だったのです。

 止めも警備軍指令閣下がして、大喜びでした。人生で何度も味わえない大物だそうです。それを五日おきに獲らされているんですけど。

 主戦力で戦って仕留め役もすると鎧一式分の革も貰えて、買ったのではなくて獲った革のはこのクラスの方でも自慢出来る物だったり。

 

 宴会は王都警備軍に混ぜてもらいました。秩序のある宴会が良いです。

 五匹目の止めを刺したのは、近衛軍指令閣下でした。バーチェス公子のお父様で、この方が前に老師様がおっしゃったインディソルビリス様です。


「れいざあの有用性、しかと見させて貰った。アニモサス王国守護将閣下からの推薦も、問題なく通るであろう」

「なんですか、老師様の推薦て」

「嬢ちゃんをな、二階級特進で少佐にして、特務遊撃大隊長にするんじゃ。特務遊撃隊は全員将校でも構わんのじゃが、将校が三名以上部下の場合は隊長は佐官なんじゃ」


 このジジイ、また勝手な事を。

 

「わたしに大隊長なんか務まるわけ無いでしょう」

「それは心配いらん。儂が特別参謀するで」

「王国最高位の将官が参謀の大隊ってなんです」

「嬢ちゃんの大隊じゃな。他にはないわ」


 殴られないと思って好き勝手しやがって。殴ったらこっちの腕が吹っ飛びます。オーラバリアが爆発反応装甲みたいになっていて、自動反撃してくるんです。

 近衛軍指令閣下も頷いていますよ。


「バーチェスは既に三体のカマス頭の仕留めをさせて貰ったが、更なる誉れを与えてやって欲しい」

「何をさせるつもりですか」

「前に云うたじゃろ。嬢ちゃんは竜殺しになるんじゃ」

「この少女が後に、飛竜落としのサピエンティアと呼ばれるようになるのを、この時知る者はいなかった」

「ワイサイト助教授、変なナレーション入れないで下さい。翼竜ならともかく飛竜なんか落とせる訳無いでしょ」


 プテラノドンタイプやワイバーンタイプは亜竜で、背中に翼の生えた凶悪大トカゲが翼竜です。

 飛竜は翼が六枚か八枚のワームタイプで、生涯を高空で過ごすと言われていて、たまに落ちている死体が見付かるだけで、上空を飛んでいるのさえ見るのも珍しいのです。


「後の翼竜落としのサピエンティアであった」

「翼竜なら落とすんじゃな」

「真竜狩りは武人の憧れである」


 誰か、こいつ等殴って。


 佐官は直接国王陛下から任官されるので、王都に戻ることになりました。大筏もさすがに点検する必要があるそうです。

 正装として、カマス頭の飛膜で造られた鎧と、牙製の短剣二振りを貰いました。

 バーチェス公子は三匹仕留めたので、前足の骨と爪で造った槍も貰って感激していました。

 本来は功労のあった将官に下賜される物だそうです。これからは定期的に入手可能になったので、インディソルビリス閣下とエレガンティナ閣下も貰って、わざわざ見せに来てくれました。

 仕留め役は鎧の他に槍も貰える規定になったそうです。

 あそこでなら大丈夫なので、次は各師団長にやらせて欲しいと頼まれました。


 任官は滞りなく行われ、陛下から、慣用句ではなしに今後の活躍を期待している、との、妙な御言葉を賜りました。

 なお、ロンタノのお父さんは国王陛下の乗騎フォルティッシモでした。

 競馬馬程ではないけど結構子供がいるのですが、ロンタノははっきり言うとはずれの子だったので、国王陛下の乗騎の子をおおっぴらに名乗れなかったのです。

 わたしの乗騎が御自分の乗騎の子なのも、陛下が大層お喜びでした。

 その後、バーチェス公子のお母様サオファ殿下のお部屋で、インディソルビリス閣下、アミラチオ学院長、ミューザレイヌ殿のお父様の交易局次長から、改めてお礼とこれから先のお願いをされました。

 とんでもない圧迫面接でしたよ。


 わたしの部隊の人達は六人ともカマス頭狩りに参加したので、士官学校は実力卒業になりました。

 少尉補だった四人は少尉になりました。尉官クラスの中級管理の娘だったセネアチータ殿は勿論の事、王孫のバーチェス公子も名門令嬢のミューザレイヌ殿も、最高学府の長の息子のラメール様も、こんなに早く実力で昇進出来たのを喜んでいました。

 誰の血筋だろうと、実力がないと相手にされない世界なのです。


 なぜか、王国守護将閣下のお身内二人も少尉補です。

 戦闘で重要な役割だった四人は判りますが、闘気弾撃っただけの十六歳ズはどうなんでしょう。老師様に文句言える人がいるとも思えませんが。

 亜竜に闘気弾の射程から攻撃が出来るだけでも、それなりの評価はされるようなのですが。

 わたしが敵意を向けられてからも平気で撃てるのが、士官学校生から驚かれたりしています。この図太さも転生者特典なんでしょうか。老師様の事も時々このクソジジイとか思ってますからね。


 大隊の宿舎として、四角い歴史的建造物な石造りの、太い石柱が飾りに並んでいる、屋敷なんだか砦なんだかも貰いました。中東当りの遺跡になっていない世界遺産です。

 本来は連隊用なのですが、独居してない独居老人の手勢もいるので、それなりの広さは必要なんだとか。

 お世話係として士官学校の優等生や、名家の子弟なんかも来たがっている様です。


 家族は引っ越して来ません。今の家に慣れていて、狭くも感じないので引越しの必要性がありません。

 ラメール様のことも話しましたが、随分と良いご縁を得られたねと言われて、それだけです。

 家を出た子供が誰と付き合っているかは、両親の身分くらいだとあまり気にしません。妊娠したら誰の子か聞く程度なのです。

 それなのに、薬学科長その他が大隊宿舎に居ます。


「薬学科がなんで引っ越して来たんですか」

「お部屋余っているじゃないですか。ここの方が広いのですよ。人間用の部屋だけでなく乗騎舎も」

「余ってるからって、他人の家に勝手に住んじゃだめでしょう」

「薬学科は子供の頃から香草や薬草を集めて生活していた貧しい者が多いのです。家賃がないだけでも随分と助かるのですよ」


 科長の周りに居るのは大学院生みたいな人たちなんだけど、貧乏かもしれない。


「この子達は可哀想なんですよ。実力はあるのに縁故が無いから典薬局に入れないのです」

「それは判りましたが、科長は自宅があるでしょう」

「実務系は発展性がないので、学院から頂けるお長屋が狭いのですよ。ここの将校用宿舎の方が広いし、連隊用は製薬所も付いていますから」


 この人にも話が通じない。

 妖女鳥の森からの付き合いで、まったくの赤の他人でもなく、自炊できる人が多くて、材料をくれるなら食堂を引き受けるからと言う事で、結局棲み付かれてしまいました。

 材料をくれたら作るって、そっちの食事代がタダって事じゃないの。

 亜竜五匹分の分け前がえらいことになっていて、お金のことはまったく気にしなくて良いようになったのですけどね。

 宿舎の諸費用は防衛費から出ます。食客みたいに王様に養われていて、普段は好きな事していざと言う時に戦力になる身分です。

 お金に余裕があっても、遊撃隊でもお仕事はしないといけません。主要メンバーが集まって相談です。


「次はどこがええかの」

「マグナムグスフラメンタムのトカゲ頭が獲れないでしょうか。走り鎌の前座として良いのでは」


 副隊長になったバーチェス公子が提案しました。ちゃんと聞きます。


「どんな生き物なんです」

「太い二本足で走る鳥なんじゃが、頭はトカゲなんじゃ」


 ディノニクスのもっと鳥っぽくなったのが頭だけトカゲのままみたいののようです。

 しかし森の中を走り回るので、レーザーの長射程が生かせません。


「パルスって出来ないんでしょうか」


 意味が判るはずのワイサイト助教授に聞きます。


「君は、判ってるんだよね」

「細かいの一杯出せるってだけですね」

「それが判っているなら、詳細は僕が説明出来ると思う」

「どう云うもんじゃ?」

「一斉攻撃が一人で出来る、みたいな。溜まってるのをどばって全部出しちゃうんじゃなくて、チビチビ出せればいいんですけど」

「できんのか、それ。嬢ちゃん達のは弾撃っとるのと違うじゃろ」

「そうです! 機械の真似することないんだわ」


 セネアチータ殿と特訓して、四日で安定してパルス状に撃てるようになりました。ただ一度撃ち出すとフルオートで溜めた分は全部出ます。

 今回はレーザーは牽制撹乱用と割り切って、トカゲ頭狩りに行くことに成りました。

 老師様以上に薬学科が張り切っています。


「アウレウムの森ですね! トカゲ頭を瀕死で動けなく出来ないんでしょうか」

「そこまで余裕がないでな。倒せるものを倒さんで死人出したら悔やみきれん」

「魔獣って頚椎折っても体動くんでしょうか」


 ちょっと余計な事を言ってしまいました。


「やった事がないで、なんとも云えん」


 薬学科長が食い下がります。


「落とし穴は?」

「森にトカゲ頭がすっぽり入る穴掘れるなら掘ってみい」


 森の地面は木の根が張りめぐらされてるんですよね。薬学科が知らないはず無いのに。

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