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「お手伝いタヌキ」

   初めてのおつかい



 占いの仕事が入っている時、タヌ子は僕のマンションで仕事をした。


 そしてその仕事の合間に家事までこなしてくれる。ありがたいこと限りなしだ。


 タヌ子は料理の腕も大したもので、いつもバランスのとれた美味しい食事を毎日作ってくれた。


「私、家事できますよ…的なアピールみたいで、逆にあざといって思われるかなって思うんだけど、逆に全く出来ないと思われるのも嫌だし…逆に実際得意な訳だし…ありのままでいる方が逆に自然な気もするよね?」


 タヌ子は自分の長所を話す時、「逆に」が多い。


ー自慢するみたいで恥ずかしいのかな? 謙虚なタヌキだ。


 一生懸命に家事をがんばっているポッテリしたタヌキの姿を見るにつけ、健気でかわいくて顔がホッコリしてしまう。



 そしてタヌ子は掃除も得意なようで、彼女が来る前に比べて家の中がすごくキレイになった。


 それまでも僕は自分ではちゃんとしていると思っていて、ズボラな自覚など無かった。男にしてはキレイに暮らしているつもりだった。


 だけどタヌ子が掃除をしてくれるようになって、それは幻覚だったと分かった。


 特に水回り! 風呂場の鏡は水垢がたくさんこびりついていたし、見えない所にカビも…。流しも死角にあるシンクの手前は真っ黒になっていた! 


 今まで僕は何を見ていたんだ…ってくらいに気づかなかった汚れが、そこかしこに現れた。


 つくづく男って盲目だなって思った。


 掃除が行き届いた部屋。開け放たれた窓からそよぐ新鮮な空気。


―あぁ…気持ちいい…。


タヌ子は掃除の後、よくヒーリング音楽を聴いていた。


「綺麗にお掃除してこんな音楽をかけると、空間が浄化される気がしてくるの!」


 そして彼女は持って来ていたヨガマットをリビングの中央に広げてヨガを始める。


 お腹ぽってりの丸々と太ったタヌキが短い手足を一生懸命伸ばしてヨガのポーズをとっている姿は滑稽で、その度に僕はプッと吹き出した。


「笑う事ないでしょ~!」


 彼女はその度、ヨガのポーズをしたまま牙を剥きだして怒った。それもまた面白くて僕は笑いが止まらない。


 窓から注ぐ光が彼女の毛をキラキラと照らす。そよぐ風はその毛をさわさわとなびかせる。いくら頑張ってみてもお腹は引っ込みそうにない。


 何てことない景色…。だけど不思議と心が和む。


―こういう景色って…もしかしてこれを…人は幸せって呼ぶのだろうか…。


 なんて変な妄想が頭の中をよぎる。


 ペットがいる生活が暮らしを豊かにさせるって、まんざら嘘でもないな…。



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