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「エピローグ」
あの事件の後、僕は救急車で病院に運ばれたらしい。ウッチーが言うには、何日か意識不明だったそうだ。
「ヒロキさぁ~ん! 僕もう本当に心配しましたよ~! もう目を覚まさないんじゃないかって…うっ…うぅぅ…。」
病室のベッドの横の椅子に座っているウッチーは涙目でそう訴えた。
「傷ハ心配イラナイソウダ。シバラクシテ抜糸ガ アルガナ…。」
エマは笑顔でそう言った。
「男は? あの男はどうなった?」
僕は聞いた。
「あの時、駆け付けてくれた藤堂社長の知り合いの中に、警備会社の社長さんもいて、来る途中にすでに部下たちを呼んでくれていたらしいんですよ。すぐに取り押さえられて警察に引き渡されました。」
ウッチーは説明してくれた。
「アノ時、藤堂社長ガ来テクレナカッタラ オマエ 死ンデタゾ!」
エマが言った。
「そうそう! あの怨霊ね、結果的に社長が浄霊してくれたんですよ!」
ウッチーが付け加えた。
「そ、そうなの! 藤堂社長、浄霊まで出来るのっ?」
―さすがにあのクラスの社長ともなれば…何でも出来るのか…!
「藤堂社長ノ波動ハ強クテ高イカラナ! オマエ、チャント オ礼シロヨ!」
エマは言った。
「そっか…。藤堂社長にはお世話になりっぱなしだな…。」
―退院したらすぐに社長にお礼に伺おう…。
「タ、タヌ子はっ? タヌ子の事、何か分からなかった?」
僕は二人に聞いた。
すると二人は顔を見合わせて困ったような顔をしていた。
「…残念ながら…タヌ子さんの事は何一つ分かりません。タヌ子さんの入院している病院でも分かれば…と思ったんですけど、個人情報保護の関係から警察は何も教える事が出来ないって言われて…。本当にすみません…。」
ウッチーは悔しそうに言った。
「いや、ウッチーたちのせいじゃないから! 退院したら俺が探すよ。ありがとな!」
ウッチーとエマは申し訳なさそうに微笑んだ。
あの事件の前、傷ついたタヌ子をウッチーの家に保護していた。その時、客間の布団でタヌ子は寝ていた。
事件後、彼らが急いでウッチーの家に戻ってみると、タヌ子の居た場所はもぬけの殻だったそうだ。
僕たちの元に、タヌ子の手がかりは何一つ残されてはいなかった。
僕は最後の望みをあの場所に賭けた。




