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「タヌ子を救った。そしてさようなら。」 



 気が付くと、僕はまだ生きていた。腕の中にはタヌ子のかわいい魂がキラキラ光っていた。


―良かった。本当に良かった。


 現場には何故か女装したおじさんたちがたくさんいた。


 どうやらウッチーが助けを呼んでくれたようだ。ありがとう、ウッチー、そしてエマ。


 エマは僕に気付くと駆け寄ってきた。


「マダ終ワッテ イナイ。タヌ子ノ魂ヲ 元ニ戻サナケレバ!」


―そうだった!


 僕は信楽焼のタヌキを見た。タヌキは僕を見るとウインクした。


 痛む体に鞭打って立ち上がった。エマが肩を貸してくれて、やっとの事で起き上がれた。


 信楽焼のタヌキは心配そうに僕を見ていた。


「タヌ子の魂、どうすればいい?」

僕が聞くと、タヌキは少し考え込んだ。


「私の中に、彼女の魂の半分がある。君が持っている半分を私の口の中に入れたら、彼女の魂は元の姿に戻って、自分の体に帰って行くだろう。しかし!」

信楽焼のタヌキは眉間に皺を寄せ腕組みした。


「しかし?」


―タヌ子が元に戻れるというのに、何か不都合な事でもあるのだろうか…。


「これだけ長いこと魂と体が離れていたんだ。私が彼女の体にエネルギーを送って、なんとか命を保てていたが、魂が戻っても眠りから覚めることはないかもしれない。」

信楽焼のタヌキは眉間に皺を寄せたままそう言った。


「それでも今よりは良くなるはずだ! やってみないとわからないじゃないか! 例え眠ったままだったとしても、俺がタヌ子を探し出して、タヌ子の元へ行って、毎日目が覚めるように呼び掛けるよ!」

僕がそう言うと、タヌキはとても悲しそうな顔をして僕を見た。


「言いにくい事だが…彼女は今、昏睡状態だ。眠っているんだ。君と出会ってからの出来事は…彼女にとっては全て夢の中の出来事なんだ。起きたらきれいさっぱり忘れているかもしれない。いや、覚えている事は無いだろう。君の事も、全て忘れるだろう…。」

信楽焼のタヌキは言いにくそうに言った。


「そんな…。」


―タヌ子が俺のことを忘れる? 今までの事…初めて会ってから…一緒に暮らした楽しいあの日々の事を…タヌ子は全て忘れてしまう? …そんな… 嫌だ! 僕らの思い出がタヌ子の中から消えてしまうなんて…そんなことってないだろ!


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