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「うおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!」
社長たちエグゼクティブ女装軍団は大声を張り上げて一斉に男の元へ駆けて行った。
すると、その超ポジティブなオーラで、悪霊の影が爆発して吹き飛んだ。
姿が見えなくてもその振動は社長たちも感じたようだった。
「さっき…何か出てきたな?」
女装軍団の一人が言った。
「あぁ…。しかし…こんなので良かったのか、俺たち…。強い敵がいるって聞いていたのだが…。」
また別の一人が呟いた。
「おい! 誰か出てきたぞ!」
一人が指を刺した。
その指の指し示す先からヒロキさんが光るものを抱えて出てきた。
女装軍団はフラフラしているヒロキさんを抱え上げ、僕らのいる魔法陣まで運んでくれた。
藤堂社長だけは何故かその場に残った。
社長は何かをじっと見ていた。
すると社長の目線の先の靄の中から、ざんばら髪のオバケ屋敷にいる幽霊のような女が出てきた。
―こいつがエマの言っていた怨霊のボスだ…。藤堂社長が危ないっ! 彼には怨霊は見えないんだっ!
「社長! すぐその場から逃げて下さい!」
僕は叫んだ。
―社長の身に何かあったら…僕はどうやって償えばいいんだ!
僕は慌てふためいた。
しかし藤堂社長は取り乱す事なく僕に微笑みかけ、そっと右手を上げて僕を制止した。
僕の目に映るのは、一方はザンバラ髪でボロボロの着物のお化け屋敷にいるような怨霊、そしてもう一方は百花繚乱の如く美しく着飾った和装の中年男。
―…何なんだ…この光景は…。
「邪魔だ…どけ…。」
怨霊は身震いするような恐ろしい声で藤堂社長に言った。
「…事情はよく知らないが…君は…とても辛そうだね…。」
藤堂社長は怨霊に言った。
「は? アタシが辛そうだって? 笑わせてくれるね。私があの子を手に入れたら、この世はアタシのもんなんだよ! どこが辛そうに見えるってのさ?」
怨霊は高笑いした。
「仮に世界が君の物になったとしても…誰も君を愛してはくれないよ…。」
藤堂社長は言った。
その言葉を聞くと、怨霊の顔にさらに怒りが滲み出てきた。
ザンバラの髪はまるで炎のようにメラメラと逆立ち、黒い靄はさらに漆黒へと変わっていった。
―社長! 危ない! 早く逃げて!
僕は叫ぼうとしたが、恐怖で声が出ない。
そんな僕の気持ちに反して、あろうことか社長はさらに怨霊の方へ歩みを進めた。
 




