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「タヌ子、仕事って何やってんの?」


「私…タヌ子は占い師をやっております。」


「え~! タヌ子、占い師なの???」


「意外でしょ? 占い師やってるっぽくは見えないよね~ってよく言われるの~。」


―でしょうね…。占い師やってるっぽく見えないってより、そもそも人間には見えないしね…。タヌキの占い師なんて見たことない。



 タヌ子は昔、占い館みたいな場所で占い師として仕事をしていたらしいが、数年前からネットや電話での相談に切り替えて、今は主に自宅で仕事をしているそうだ。ネット上で占いコラムを書くウェブライタ―的な仕事もしていると言っていた。


「だから時間と場所は、けっこう融通きくんだ。ノマドワ―カ―なの、タヌ子。」

タヌ子はもぐもぐ食べながら言った。


「占い師って…タヌ子、霊感あるの?」

僕は聞いた。


―あなたの後ろに霊が見える! とか、よくテレビなんかで占い師だったか霊能者だったかが言ってたりするけど、本当なのかな…。そもそも占いなんて、誰にでも当てはまるような事を適当に言ってるだけじゃないの? 

 僕はあまりその手のたぐいの事を信じていない。


「霊感っていう程の物じゃないんだけど…野生の感、というか、昔から私、けっこう感が鋭かったかも…。でもまあ占いってのはね、そういう第六感的な物もある程度は必要だけど、計算して出す物もあるし、お客さんの話を聞いてアドバイスしたりするカウンセラー的な役割でもあるんだよね。」

タヌ子はそう言った。


―野生の感か…でしょうね…だって君、タヌキだもん…。そういや、動物って不思議な力を持ってるっていうな…。地震を察知したり、死ぬ前に姿をくらませたりするって、どこかで聞いたことある。タヌ子もそんな力を持っているのかもしれないな…。


「占い師やってる人、初めて会ったよ。」

僕は言った。正確に言うと、占い師をやっているタヌキに初めて会ったよ…だけど。


「ほんとはね、占い師になるなんて思ってもみなかったんだけど、よく友達から相談されることが多くて、相談してきた友達からね、私のアドバイスは的確だし、占い師さんに占ってもらったみたいに当たってるって言われること多くて…。それからね、私に相談すると、元気になってパワーもらえるって言ってもらえること多いの! それがすごく嬉しくて、たくさんの人に元気になってもらいたくて、それで占い師になろうって、思ったんだ!」

タヌ子は恥ずかしそうに言った。


「そうなんだー。すごいな、タヌ子。」


「そんなことないよ~!」

誉められた嬉しさと料理の美味しさでタヌキ顔がデレデレダルダルになっている。


「占いの仕事はいつもあるわけじゃ無いから、私、暇な時はヒロキのお仕事のお手伝いするよ!」

タヌ子はそう言った。ヤル気に満ちたタヌキ顔の目の奥にはメラメラと燃えさかる炎が見えた。



 こうして、タヌキの飼育生活は始まった。



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