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「備えあれば憂いなし」
戦には準備が必要だ(内田)
こんにちは、内田真斗です。ええ、マナトですよ…。
とんでもない事態になっちゃいました!
タヌ子さんがバケモノに襲われちゃったんです!
そして…ああ…なんてことだ! タヌ子さんを救うには、あのバケモノと戦わなくちゃいけないんだって!
は~俺、昔からケンカは苦手なんだよなぁ~。
だけど、そうも言ってられない!
男、内田真斗! タヌ子さんを助けるために戦うぞっ!
そうそう! エマの特殊能力にはビックリしましたよね!
彼女とはいえ、まだまだ知らない事は多かったんだなぁ…。そんなミステリアスなとこがまた堪らないんだよねっ!
え? おまえのノロケはいらないって?
分かりましたよっ! ではお話させていただきますねっ!
ヒロキさんは「居酒屋ぽんぽこの信楽焼のタヌキだ!」と叫んで先に家を飛び出して行ってしまった。
ヒロキさんをそんな危険なところへ一人で行かすわけにはいかない。
―ヒロキさんに何かあったら僕の給料は? 生活は? また就活か? …小っちぇえ、俺~! いや、そんなこと微塵も考えてない! ヒロキさんのことを本当に案じているし、何よりタヌ子さんが心配だ!
「エマ! 俺はヒロキさんを助けに行くから、君は危ないからここに残りなさい。」
僕が意を決してそうエマに言うと、エマはすでにブルースリーのようなツナギに着替えてヌンチャクや木刀のチェックをしていた。そして道具箱のような大きな箱からさらにいろんな武器を出しては物色した。
「エ、エマちゃん?」
恐る恐るエマに声をかけると目をカッと見開いて睨まれた。
「内田! ココハ戦場ヤ! キサマ丸腰デ戦ッテ勝テルト思ットルンカ!!!」
「あ、あの、お相手は、そんなにお強いのですか?」
ビビリながらエマに聞いた。
「強イニ決マットルワ。サッキ、タヌ子ノ体カラ読ミトッタラ、マトモニ勝テル相手ヤナカッタワ! キサマ、私ガ彼女デ、命救ワレタゾ!」
―やばい…。チビリそうだ…。
エマが言うには、その男は何者かに魂を乗っ取られているらしい。
何か邪悪な霊が、同じ波長の悪霊や浮遊しているネガティブな想いなどを吸い取り巨大化した。
その怨霊がその男を意のままに動かし、他人のエネルギーを吸い取りながら生きながらえている。
エネルギーを吸い取られた人間は抜け殻のようになり、そこに悪霊が入り込んで人が変わったようになるか、体が耐えられずに死ぬか、とにかくまともな状態ではいられなくなるらしい。
せっかく取り込んでも、体から離れたエネルギーの寿命は短く、男は常に人からエネルギーを奪い続けなければ生きていけない。
タヌ子さんの発しているエネルギーはとても強いらしく、全て取り込めば、男は永遠に生き続けられるくらいの力があるらしい。
だから男は執拗にタヌ子さんを追っていたのだそうだ。
「私タチガ マトモニ戦ッテモ 勝テル相手ジャナイ。ヘタニ近ヅクト、逆ニコッチガ魂ヲ奪ワレテシマウ…。」
エマが溜息をつきながら呟いた。
「警察に頼もうよ! 素人の僕らがいってもラチあかないでしょ!」
僕はエマに言った。
「警察ハ コンナ話 信ジナイゾ。」
エマは僕の目を見据えて言った。
ー確かにそうだよな…。怪物がいるからやっつけてくださいって言っても、こっちの方が頭がおかしいって思われそうだ…。
「どうすればいいの?」
「低イ波動ヲ出シテイル 奴ラヲ 弾キ飛バスホドノ、強イ ポジティブナ波動ガアレバ、ナントカナルカモ。」
「俺、超ポジティブだよ!」
「ソリャ、ノー天気ッチューモンダ。ソウジャナイ! モット威厳ノアル 圧倒的ナ 波動ジャナケレバ ダメダ! ソシテ、一人ジャ ダメダ! 大勢イナイト 負ケテシマウ!」
エマは悔しがるように行った。
僕も少し違う意味で悔しがった。
―小っせ~俺!
「デモ、ヒロキヲ 一人ニ シテオクノハ危険ダ。内田! 行クゾ!」
悪霊を弾き飛ばすほどの…強い…ポジティブな…威厳がある…大勢の…
…圧倒的な波動…




