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 僕がそう思った瞬間、エマはポケットに入れていたスマホを取り出し、スマホケースの横の部分に付いている四つの穴に指を入れて拳を構え、前方の二人に向かって猛ダッシュした。


 エマのスマホケース、キーホルダーなんかを付ける穴なのかなぁ~って、エマったら女の子らしいじゃ~ん、なんて思っていたスマホケースの穴は、実はカイザーナックルだった!


―エマ! キミ、何者なの?


「キサーン、コノ、ボテクリコカッソー(注・おまえをボコボコにするぞ、の某九州弁)」

エマは男に向かって叫び声をあげながら走った。


 女の子のエマが人命救助に向かったと言うのに、僕は恐怖で足がすくんでしまって動くことすら出来なかった。


 相手は見たことが無いようなバケモノだ。僕が駆け付けたところであの大きな腕でボコボコにされて一瞬で倒されてしまうだろう。


―だけど…だけど…エマは走って行っちゃった。女の子たちを危険な目に合わす訳にはいかない! 俺が戦うぞ! 


 僕はヤケクソになって走って行った。バケモノは僕たちの気配に気づいてこっちを振り返った。


 おかしい…。やっぱり人間じゃ無い! 


 男は全身に真っ黒い煙のような物をまとっているように見えた。その煙は常に動いている。大量の虫にも見える。


―ぎゃぁぁぁぁぁぁ~! 俺、虫ダメなんだよ~!


 全身に虫唾が走り体中痒くなった気がした。


―もう逃げたい! エマごめんっ! やっぱ俺、無理~!


 この場を逃げ出してしまおうかと思ったその時、男はものすごいスピードでその場を走り去った。


 エマは諦めずその男を追っかけて全速力で走った。


 しかし、男のスピードは人間の範疇を超えていた。エマしばらく後を追ったが、とうとう男は見えない所まで走り去って逃げられてしまった。


 僕は男に襲われた女性の元へ向かった。女性は道に横たわって背中を丸め、苦しそうにしていた。


「大丈夫ですか? すぐ救急車を呼びますから!」

僕はポケットからスマホを取り出して救急車を呼ぼうとした。


 その時、スマホの灯りで女性の顔がハッキリ見えた。やはりその人はタヌ子さんだった!


「タヌ子さんっ! タヌ子さんっ! しっかりして!」

いくら呼んでもタヌ子さんはグッタリしてうめき声をあげるだけだった。


「救急車! 救急車! いや、ヒロキさんに連絡が先か?」

僕があたふたしていたら、タヌ子さんが目を薄っすら開けた。


「ウッチー、大丈夫だから、ウッチーの家に連れて行ってもらえないかな?」

タヌ子さんは小さな声で呟いた。


「で、でも、さっき殴られて…その腹の中に…手…を…」

暗がりだったけど確かに僕は見た。あの男はタヌ子さんのお腹に手を入れて…。


 僕はタヌ子さんの腹部を見た。服は破けてはいないし、血も流れていない。


 だけどあんな大きな手で思いっきり殴られたんだ。絶対医者に見せないと! 


 僕は無理やりにでもタヌ子さんを病院に連れて行こうと思った。


「内田…。タヌ子ヲ ウチヘ 連レテ行コウ…。」

いつの間に帰って来たのか、背後からエマが呟いた。


「だけどっ…だけど…やっぱり医者に診てもらわないと!」

僕は叫んだ。


「内田…コレハ…ソウイウ類ノ 治療デハ 治ラナイ…。病院ダト逆ニ危ナイカモ シレナイ…。」

エマは真剣な顔で言った。


 タヌ子さんはエマを見て、震えながらも小さく頷いた。


 いくら考えても僕にはさっぱり意味が分からないけど、エマとタヌ子さんの言う事を聞くべきなのだと、何かが僕の心に訴えかけていた。


 僕はすぐにタクシーを呼んだ。タクシーはすぐに来てくれた。


 僕とエマでタヌ子さんを抱えてタクシーに乗せ、急いで僕の家に戻った。



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