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―しかし何故こんなことになったのか? そもそもあのタヌ子との出会いは? 落ち着いて記憶を掘り返さねば…。
あれはたしか二日前の夜。その日は大学時代のゼミ仲間の集まりで、旧友たちと久しぶりに盛り上がって、かなり飲みすぎてしまっていたんだ。
二次会、いや、三次会だったかな? 仲のよかったグループで行ったバーで、確か僕はタヌ子と出会ったんだ。
その時はもうかなり酔っ払っていて、フラフラしてろれつも回らない状態だった。喋り疲れてボーしていたら、前のテーブル席のグループにタヌキが座っていた。
最初は店のイベントか何かで、着ぐるみを着たキャラクターかと思っていた。そのキャラクターが各テーブルを回ってお客たちをもてなしているのかと思っていたんだ。
しかしその着ぐるみは、そのテーブル席から全く動こうとしなかった。テーブルには若い女の子が4人とその着ぐるみが座っていた。
最初はよく出来た着ぐるみだな~と思っていた。だけど、見れば見るほどそうでない事がわかった。目を擦っても生きている動物にしか見えない。あれが作り物だとしたら、人類は想像を超えた技術を手にしたとしか考えられない。
僕が疑問に次ぐ疑問に戸惑っているにも関わらず、タヌキは泣いたり笑ったりしながら女友達と話をしている。女友達はタヌキに全く違和感を感じていないようだ。
―何故だ? 君たちおかしいだろ! だって仲間内の一人がタヌキなんだぞ! 何故そんなに普通に出来るの? ドッキリか?
僕はこの状況が理解できなくて、つい身を乗り出すようにタヌキをガン見してしまった。その視線に気付いたのか、女友達の一人が肘でタヌキを突き、僕の方を目で促した。
タヌキは僕を見た。そしてしばらくの間、ポケーっと僕を見ていた。僕もタヌキから目が離せないでいた。
タヌキはクルっと女友達の方に向きなおした。そうかと思いきや、また僕の方に振り向いて、ニコーっと笑いかけてきた。
その笑顔がめちゃくちゃ可愛くて面白くて、その後、僕とタヌキは二人で別の席へ座り直し、夜を明かして語り合った。
何を話したかは酔っ払っていてあまり覚えて無いのだけど…でもめちゃくちゃ楽しかったのだけは今でもハッキリ覚えている。
―そうだ。そんな風に僕らは出会ったんだ…。
どうもその時に同居の話までまとめ上げてしまっていたようだ。
事務所に向かいながら、僕とタヌキの関係…いや、そもそも何でタヌキなんだ…という事を考えた。考えれば考えるほど訳が分からなくなってきた。
相手がタヌキでなく、人間の女の子だったとしたら…いい出会いだったと思えるんだけどな…。