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 受験当日


 モデルは全部の爪に赤のマニキュアを塗っていかなくてはいけないので、当然、僕の爪は全部真っ赤だ。


 男で真っ赤のマニキュアをしているって、回りから見たら絶対変態と思われそうでかなり抵抗があったのだが、エマはそんな僕の不安な気持ちを汲み取ってこう言ってくれた。


「内田、安心シロ。男デモ真ッ赤ノマニキュア塗ッテ二人組ミデ歩イテタラ、絶対ネイル検定ダッテ、ミンナソウ思ウカラ。」


「そなんだね~。」


―って! それ、ネイル検定受けた人じゃないとわからないよね? 普通の人、絶対わからないよねっ?


 エマは無慈悲にも涙目の僕の首根っこを掴んで、そのまま僕らは会場へと入って行った。


 会場に着くと、意外と男性のモデルが多いのに気付いた。


 僕みたいに彼氏か旦那さん風の人だったり、息子さんだったり、中には、お孫さんの受験に付き合うおじいちゃんのモデルさんもいた! 


 僕は男が自分だけじゃない事が分かり、少しホッとした。そんな僕を見て、エマは勝ち誇ったようにフッと鼻を鳴らせて笑った。


 会場では、席に着く前にブロックごとに分かれて列に並ばされた。


 ちょうど横にさっき見かけたお爺さんとお孫さんらしき二人が並んでいた。聞こうと思ったわけでも無かったけど、真横にいる二人の話し声が否応なしに耳に入って来るので、悪いとは思いつつ耳をダンボにして聞いてしまった。


「じーじ、ごめんね。私のせいで長いこと爪伸ばさせて、真っ赤なマニキュアまでさせて。いつもじーじ、すごく爪短いのにいろいろ不便だよね? 恥ずかしい思いさせてごめんね…。 シルバー人材のお友達とかに、何か言われたりしてない?」

お孫さんは涙目だ。


「心配すんな。じーじはな、こんな風で、エミリに何もしてあげられなかったのに、今回こうやって手伝ってあげることができて、ほんとに嬉しいんだよ。こんな歳になって孫の役に立てるなんて、素晴らしい事じゃないか。じーじがエミリに感謝したいくらいだよ。ありがとう、エミリ。」

じーじは、赤い爪を自慢げに見ながら孫娘に語りかけた。


「じーじ。」

孫のエミリ、目がウルウル。


 じーじ、もらい無き。


 横で盗み聞きしていた僕、内田、号泣。


 そしてやっぱり盗み聞きしていたエマ、眉間に手をあて男泣き。



…僕らはネイル検定会場で、真実の愛を見た…。



 唯一の心配の種…右手中指のフラワーアート。本番では、僕の中指はマンドラゴラでは無く、きれいなハイビスカスだった。ホッ。


 それから…何でいきなりエマがネイル検定を受けるなんて言い出したかというと…次にアニメ化しようと提案されているのが、ネイル検定をモチーフにしたド根性バトル対戦物の漫画なんだって。


 実際にどんな物なのか、やってみるのとみないのでは作品に対する思い入れが変わってくるからしてみようと思ったんだ…って。


 エマの仕事に対する情熱…尊敬するよ…。…しかし… 


―え? 何その面白そうな漫画! 僕まだ読ませてもらってないよね? 見せて~! エマ~!


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