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「窓…閉じたままじゃないですか?」


―透視かタヌ子?


「そういえば…最近開けて無いかも。」

女性は答えた。


「カーテンも閉じたままでしょ?」

タヌ子は続けた。


「は、はい…。」


「まずは窓を開けて新鮮な空気をお部屋いっぱいにいれてあげましょう! 人間と同じでね、部屋も呼吸が必要なの!」

タヌ子がそう言うと、突然女性は「うぅぅぅ…うぅぅ…。」と泣き出した。


―そこ、泣き所だったの? これって…占いなのかな? タヌ子、部屋の換気をアドバイスしただけだよね? 


 もしかしたら深い意味があるのかもしれないし、素人は口を挟むべきではない。僕は喉まで出かかっているツッコミの数々をゴクリと飲み込んだ。


「わかるわ…。」

タヌ子は呟いた。


―わからねぇ…。わからねぇよ、俺!


「体がね、今すごく重いと思うけど、とにかく毎朝窓を開けるようにしてみて! そして少しづつで構わないから掃除を始めて! まずはいらない物を捨てる事から始めましょう! お部屋を整える事で、部屋があなたを助けてくれるわ!」


「あぁぁぁ…いぃぃぃぃ…。」

女性は声にならない声で返事をした。


 タヌ子は女性に窓を開けさせ、お互いお茶を飲んで落ち着きましょうと言った。


 そしてタヌ子は暖かい緑茶を入れて美味しそうに飲み干した。電話の向こうの女性も何か飲んでいるようだった。



「少し落ち着いた?」

タヌ子は聞いた。


「…はい。何っていうんでしょうか…少し体が軽くなって…視界がハッキリした感じがします…。」


 女性はさっきまでとは打って変わって、憑物が取れたような声で話した。


「思いつめちゃうと…世界がどんどん狭くなっていくの…。本当は周りには素晴らしい世界が広がっているのに…それが見えなくなってくるのよ。」

タヌ子は優しく語り始めた。


「…あなたは…浮気する男にすがりついて、ストーカーになって、相手の女も呪って、そういう事をするのがふさわしい人間なの?」

タヌ子がピシッと言った。


「…わ…私…。」

女性は戸惑っていた。タヌ子はさらに続けた。


「私はそんな事、あなたにはふさわしくないと思う。占いで見てみると、あなたは素晴らしい星の元に生まれているわ! 周りの人を明るく照らしてあげられる、そんな優しさと勇気に満ち溢れている女性なの!」


「…私が?」

女性はまた泣きだしているようだ。鼻声になっている。


「あなたを苦しめているのは…本当はそのお相手の男でも浮気相手の女性でも無く、彼の浮気を疑って、いつもイライラしてて、相手がいるなら呪い殺して…って、自分がそんな人間になろうとしているあなた自身なんじゃないかしら?」


 タヌ子がそう言うと、女性は大声をあげんて泣き叫んだ。タヌ子は何も言わず、女性が泣き終わるのをじっと待った。


「本当は…私も…そんな事したいと思ってなかったの…。彼に他に女がいるのは悔しいし憎いけど、その感情に任せてストーカーまがいの事をしたり、相手を呪ったりするの、もう疲れてた。こんなことしていても逆効果だし、余計に彼は私から去って行くのもわかってた。だけど、自分の暴走を止められなかったの…うっ…うっ…。」


―自分の事を止められないのって…あるよね…。辛かったね…。


僕は心底女性に同情した。タヌ子もそんな表情をしていた。


「アンドロメダリー先生…本当にありがとうございました。」

女性はそう言って電話を切った。


―アンドロメダリー先生って…スッゲー名前付けたもんだな、タヌ子…。確かにすごい力を持った先生のような雰囲気ある名前だけど…。


 そんな事を思っていて、ふと横を見るとアンドロメダリー先生は白目を剥いて口をポカーンと開けたまま放心状態だった。



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