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「観葉植物とコーヒーと、お気に入りの音楽があればいい(内田)」
内田の生活
こんにちは、内田真斗です。真斗と書いてマナトと呼びます。そんな事はどうでもいっか…。
僕はヒロキさんのデザイン事務所で働いています。ここからしばらくは僕の話をさせていただきます。ではでは…。
父親の退職と共に、両親揃ってしばらくマレーシアへ移住するなんて言うもんだから、僕は実家に戻ることにした。
誰も住まなくなると家は急激に傷むし、かと言って得体の知れない他人に貸すなどもってのほかだ。
僕は実家が好きだった。海外駐在が多かったセンスの良い両親が建てた家は本当にオシャレなのだ。
そんなに広くは無いがヨーロッパにあるようなレンガ作りの家で、表には二台の駐車場、そして裏には寛いだりバーベキューをしたりするのにちょうどいい大きさの庭もある。
玄関の前の鉄製のアーチには母が育てたブドウの木が絡みつき、季節になるとその実を垂らす。
庭はイギリス風ガーデンで、母は植えてあるハーブをよく料理に使っている。
木陰のウッドチェアで本を読みながら寛ぐのが僕の最高の癒しだった。
家の中はシンプルで、趣味の良いアンティークの家具で統一してある。
壁には海外で買い求めた新鋭アーティストの幾何学的な絵が飾られて、それが妙にアンティーク家具と合っていた。
そんな素敵な我家をどこの者ともしれない輩に貸すなど有り得はしない。
だがしかし、姉は結婚してシンガポールに住んでいるので、残された僕以外、実家を管理する人間がいないのだ。
勤めていた隣県の会社は辞めることにして、早々に退職願いを出した。
消化し切れなかった有給をまとめて取ったので、その間に次の職場を探そう。
住んでいたマンションも、更新時期が近づいていたので、引っ越しするにもタイミングが良かった。まるで家が僕に帰って来いと言っているような気がした。
実家は都心部から少し離れたベッドタウンにあり、バブルの始まりの頃に開発された街というせいもあってか、高級感が漂っていて雰囲気がいい。
クリスマス時期になると、駅前に大きなクリスマスツリーが飾られて、外国の町並みのようになる。
学生時代は、その当時の彼女と手をつないで、よくツリーを見に行ったものだ。
毎年見に行く彼女が違っていたが、それぞれいい思い出だ。
たまに同じ年で何人か違う彼女と行ったこともあったがそれもまた一興。
今カノの前で元カノに頬をぶちまわされたこともあったが…、フッ…今となっては懐かしい思い出だ。
―しかし何故女の子たちは怒るのだろう?
―何故、僕はぶちまわされるのだろう?
と、いろいろ考えたら、原因と対策がわかってきた。
僕の出会った女の子たちは、行間の気持ちを汲み取ってほしい願望が強いらしい。
しかし「嫌い」と言われれば、言葉通りに嫌われているんだろうなと思うし、「もうかまわないで!」と言われれば、希望通りにそっとしておいてあげたくなる。
僕なりの気遣いなんだけど、向こうにとっては「そのまんまとってんじゃねーよ、クソ野郎!」となるらしい。
僕はそんな気持ちがわかるような超能力を残念ながら持ち合わせていない。
かまって欲しいなら「かまってくれよ!」ラインの返信がすぐ欲しいなら「この文章を見たら1分以内に反応しやがれ!」と、ハッキリ気持ちを言ってくれた方がわかりやすくていい。
その通りにはきっと出来はしないけど…。
外国の女性は、自分の気持ちをハッキリ言う傾向にあるので、そうか僕は外国の女の子と付き合えばいいのだ、と思い、即実行に移した。
結果?
オマイガッオマイガッ…って…結局ぶちまわされた…。
 




