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「ヒロキ、何でタヌ子にこんなによくしてくれるの? そんなにタヌ子のこと好き? 一度聞いてみたかったんだけど、ヒロキ、タヌ子のどんなとこが好きなの?」
モンブランを口いっぱい頬張りながらタヌ子が唐突にそんな事を聞いてきた。
ー…タヌ子のどこが好き…だって? それ…彼女に対しての気持ちだろ? タヌ子は…だって…その…。
僕は言葉に困った。タヌ子は僕以外には人間の女の子として見えるらしいし、当然タヌ子自信も人間という自覚があるだろう。
確かにタヌ子はいい子だし可愛いし好きだけど…女としては見る事が出来ない。きっとタヌ子の求めている気持ちと僕の気持ちはかけ離れていると思う。
ー何と言った物だかな…。
「んー……、そだな…。目がクリクリしてて可愛いよね。それから…毛並みがいい! フッサフサだもんねっ! 撫でてて癒されるよ!」
タヌ子は何だそれは…と言いたげな目でじっと僕の目を見つめた。。
「あ! 散歩がいらないのがすごくいいよね! 忙しい時とか雨とか雪だと、散歩連れていくの大変じゃん! トイレトレーニングもいらないし、ほんとお世話いらないっていうのが、すごいよね!」
僕はおちゃらけて言った。
生まれつき嘘はつけないタチなので、そう言って適当にお茶を濁そうとした。
「…タヌ子、ペットじゃありません…。」
タヌ子はピシャリと言った。
ーそうだよなぁ…。タヌキに見えているのは俺だけで、内田君が言うには本当は美女らしいからな…。
「じょ、冗談だよ。タヌ子は可愛いし性格もいいし、料理も上手いし、一緒にいると癒されるよ。」
ーそれは本当だ! 事実タヌ子はタヌキでさえなかった素晴らしい女性だと思う。
「それほどでも~。」
タヌ子は満足したらしく、照れながらパフェを食べ始めた。
最初はいきなり押しかけてきて戸惑ったけど、一緒にいればいるほどタヌ子の良さがわかってくる。
安心とか安定とか癒しとか。
ーでもそれってペットってことだよな…。タヌ子と俺は、恋人同士なのか? 同居人なのか? 飼い主とペットなのか???
「タヌ子は俺のどこがいいの?」
ーそーいやタヌ子こそ僕のどこがいいんだ?
「いやだ~! そんな事言うなんて、なんだか、お互いにノロケあってるバカップルみたいじゃ~ん!」
―はぐらかされた…。俺にだけ言わせやがって…。タヌ子は口の回りに生クリームをつけたままケラケラ笑ってやがる。やれやれ…。
可愛いのだけど、居心地最高なんだけど、俺たちこれからどうなるのだろう…。




