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会津遊一 ホラー短編集

原因不明の奇病

作者: 会津遊一
掲載日:2009/09/10

熱い。


私は、もう熱くて死にそうだった。


何十時間も汗をかき続けている。


健康には人一倍、気をつけていたのに。


買い置きしていたスポーツドリンクとマルチサプリが無かったら、本当に死んでいたかもしれない。


私は、これ以上我慢は出来ないと思い、救急車を呼んだ。


 だが。


入院した後も、熱は下がらなかった。




7日程たったある日。


突然、熱が平熱に戻ったのだ。


こんな不思議な事があるものなのかと、医者達も首を傾げていた。


 だが、誰よりも驚いたのは私だった。


退院しようと思っていたら、腹部に大きな口が出来ていたのだ。


 しかも、その口は、


「おい馬鹿面、何か食える物を持ってこい」


と、喋った。


あまりの出来事に、私はしばらくほうけていた。


すると、もっと大声で罵声ばせいを浴びせられたのである。


 大慌てで担当医に相談した。


「これは、ウチでは直せませんね。紹介状を書きますので、そちらに行って下さい」




私が紹介されたのは、古いお寺だった。


 現れた住職に腹の口を見てもらうと、渋い顔で聞かれた。


「貴方、普段は何を食べています?」


私は、無農薬の野菜と無菌の肉だと、答えた。


「なるほど。では、今から指定された物を一週間ほど召し上がって下さい。それで直りますから」


そんな事だけで、この腹にある口は直るのだろうか。


口は、今も飯を食べさせろと、わめいている。


だが、半信半疑ではあったが、他に頼る当てもなかったので、私は指示に従った。


 すると、みるみる口が弱っていき、すっかり黙り込んだのだ。


あの住職が言っていた事は本当だった。


私はお寺に向かい、腹にある口は何なのか尋ねた。


「名を、応声虫おうせいちゅうと言います。寄生虫の一種で、健康そうな宿主やどぬしを見つけると取り憑くんですよ。それで飯を食わせないと何時までも叫び続けるという、厄介な虫ですね。これは江戸時代の閑田随筆かんでんこうひつにも記されています」


聞いた事がなかった。


私は、うへぇ、という相づちとも返事とも取れない言葉を返した。


「まあ、最近じゃあ、見掛けるのも珍しい病ですからね」


私は、そうなんですか、と尋ねた。


「ええ、応声虫には苦手な物があるんですよ。昔も、それを飲ませて退治させていたらしいです」


苦手な物とは、何なのだろう。


覚えがなかった。


 私がいぶかしんでいるのをさっしてくれたのか、住職が教えてくれた。


「それは、毒ですよ」


だが、それこそ私は食べた記憶はない。


私が口にしたのは、住職に指示されたとおりだ。


ポテトチップやジュース、コンビニのお弁当、ハンバーガーなどのジャンクフードだ。


「ええ、それが毒でしょう」


と、住職は言った。


 それを聞いて、私は唖然とした。


私達は日頃、虫が毒だと思う物を食べているというのだろうか。




帰宅後。


トイレで用を済ませた便器の中に、見慣れないモノが浮かんでいた。


それは、一本の角が生えた白くて長い、応声虫。


キューと弱々しく泣いているが、私は大便と一緒に流したのだった。

  

 

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