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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ

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神竜がいる谷へ3

 はぐれたアッシュは、来た道を戻ったり、進んでも変わらない空間に取り残されていたような感覚。その間いろいろ調べたが、残る細い道。そこ以外は調べたと思う。



「あとはここだけど……。正直、通りたくないんだけどな……」



 異変のあったのもここからだ。ならここにあるとみていいけども炎飛ばしても先は全く見えない。

 少し進んでみたが急に狭くなるから詰まったらそれこそ終わる気がする。その為ここはかなり後回しにしていた。


 しまっている懐中時計を取り出す。



「とはいえ、時間間隔はわからないけど二日くらいは経過してるだろうし、このままここに取り残されるのも嫌だしな……。進むしかないかぁ」



 ため息をしながら覚悟を決めてその道に足を踏み入れる。最初は普通に歩いて行けたが段々横幅が狭くなる。横向きになりながら進んでいくがそこも少しずつ狭くなる。服と壁が当たりながらも進んでいく。



「ん? 卵が腐ったような臭い……、硫黄の臭いかな、これ……?」



 進むにつれてて硫黄の臭いも強くなる。


 臭い。やっぱ戻って最終手段で壁を壊した方がいいかなと思い始めたとき、ふと、急に足元にあるはずの地面の感覚がなくなる。

 滑り落ちそうになるが、壁を掴みどうにか落ちないようにして壁も狭いことなので足も壁につけながら落ちないようにする。だだ、急に足元がなくなって驚いた……。


 空いてる方の手で炎を投げて、足場を見るが……。



「……ちょっとこれは予想外かな……」



 さっきまであった足場は言葉通りなくなっていた。飛び乗っていけばあるという話ではない。まったく、床がないのだ。明らかに落とそうとしている。目的はわからないけど。


 さて、思惑に乗って落ちるか否か。下を見てもどのくらい深いのかも予想がつかないくらいの真っ暗だ。炎を落としても照らされることはない。



「はぁ、仕方ない。行くしかないか」



 そう言って支えにしていた足と手を放す。ズザザッと壁沿いに降りていくが、一応洞窟の中だ。岩や危険なものが急に出てくる可能性もある。目を凝らしながら落ちながら進むと、一層に硫黄の臭いが強くなっていく。刺激臭にアッシュは服で口と鼻を覆う。目も痛い。


 そしてーー



 バシャンッ!



「うわっ! 熱っ⁈」



 熱湯だろうか。足が思いっきり突っ込んでしまって慌てて上がる。ここが底なのかもしれないが、まさが熱湯の中に入ってしまうとは思わなかった。炎をそっと出そうと思ったが臭いがこれだけ強いんだ、炎で引火されても困る。



「”光魔法:光よ(ライト)”」



 ライトで周囲を確認すると広い空間で、硫黄の臭いの元となる水場はボコボコと沸騰している。相当臭いが強くて頭痛が酷い。あまり吸っていいものでもないため、他に行く道がないか見渡すと奥の方に明かりが見える。


 岩から岩へと飛び乗っていき、先へと向かう。


 進むにつれて段々周りは人の手の加えられている遺跡のようなところにたどり着き、固く閉ざされた入り口部分の石碑をバサバサと砂埃をはらうと何か文字がある。



「古代語かな……。えーっと”解放”? 何の?」



 そう言うと言葉に反応したのか一瞬、石碑と扉が光ると、扉は軋むような音と共に開いていく。突然、開いたことに驚きながらもゆっくりと中を覗き込み、ライトで辺りを照らす。まだ奥の方も続いており、中に数歩、歩いていくとバタンッ!!と扉が閉まる。


 そして……


 奥からは泣き声が聞こえる。

 これは異変が起こる前に聞こえた声によく似ていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一方そのころ、谷に入ってから2日経った。その間にグレンが竜を切り捨てつつ、進んでいたがアッシュに会うことはなかった。

 途中アッシュの炎も消えてしまい、一番不安になっていたのはアリスだった。炎が消えたことで何か良くないことでも起こったのではないかと気が気じゃない状態になっている。グレンからアリスの持ってる自立型とは違うので炎に宿る魔力がなくなったからとは言っていたけど、それでも不安は拭えない。


 谷に入った時よりもかなり大人しくもなっているため、気落ちしているのは明確だった。


 唯一、アッシュの炎である自立型の炎を抱えながらアリスはとぼとぼと歩いている。



(アッシュ、何処に行っちゃったのよ……)



 泣きそうな顔になりながら、先へと進む彼女にリリィは肩を撫でる。少し無言になってリリィが口を開く。



「……あいつのこれがちゃんとあるんだ。大丈夫だぞ。アリス」

「…………うん」



 ちいさく頷く。


 まだ暗いままのアリスに先頭のグレンは隣にいるエドワードにボソリと呟いた。



「あいつ、アッシュがいなくなってから、相当元気がないな」

「突然いなくなったからな。心配しているんだろ」

「……はぁ、あんな一本道でなんで迷子になるんだ。あいつは……」

「それは思うが、後ろから魔物に襲われた……なんてことあってもあいつだからなぁ……」



 その辺の魔物にやられるわけもないから直ぐに出てくるものだとも思ってもいた。それなのにまだ会えないとなると心配してしまうのも無理もないとは思う。



「ま、どちらにしろ私は今、変に探しにも動けないからな。あいつ自身がどうにか出てきてくれると助かるんだが」

「すまんな。お守り役させてしまって」

「別に大丈夫だ。……ん? ひらけた所へ出そうだな。少し待っていろ」



 話の最中にグレンは少し駆け足で外を確認する。


 かなり広いところで、外の日差しが良く入り込み、中心にある泉と多種の竜の休憩場になっているような場所だった。



「……ふむ。エドワード、ちょっとここから動かずにみんな待っててもらってくれ」

「あぁ、わかった」



 グレンは防御魔法だけエドワードたちに張るとそのまま外の日差しが差し込む外壁へとよじ登っていく。そこから外の様子を覗き込むと、本来の目的である街も見えてきている。


 それならあと半日もあれば抜けられそうだ。


 確認を終えて戻ろうとすると――



「うわあああああ!! あ、アカンて!! だ、誰か助けてー!!」



 誰かの叫び声が聞こえる。声の方向を見ると、その人物は緑色のショートヘアに服装は迷彩柄の服を来て背中には背丈には合わない大きな銃を付けたまま走っていた。

 よく見れば先程、竜が集まっていた泉に不用意に近づいたからなのか三匹程に追いかけ回されている。



「はぁ……ったく。知らない人まで助ける気はないんだがな……」



 そう言いながら今いる場所からスナイパーライフルを構える。


 どうせあいつらの事だから見過ごせないといって突っ走りそうなやつがいるから早めに終わらせておこう。


 スコープから覗き込みちょうどそいつと竜との間に当たるように、パァーンっと撃ち込む。


 地面に被弾すると煙幕のように煙が発生し、その間にそいつの元へと飛ぶ。



「来い」

「うぉあっ?! なんや?!」



 声的に女だろう。そのまま襟首を掴んで、エドワードたちがいる穴の方へと向かって降りていく。

 ドサリと落とされたそいつは、ゼーッ、ハーッと荒い息を上げながら座り込んでしまった。



「し、死ぬかと思ったわ……」

「誰だ、そいつ?」



 穴で待機していたエドワードがそいつを見ながら首を傾げる。ノアやユキたちもなんだろうと覗いてくるが、私もこいつは知らない。



「知らん。竜に追いかけ回されていたから連れてきた」

「そうか。おい、お前、名前は?」

「オレか? オレの名前はナギや! ちょー凄腕の狙撃手やで!!」



 この首に黒のチョーカーと男のような髪型をしている女は自分のことを指をさして自信満々な自己紹介をする。背中に背負っている銃を見れば狙撃手なのは何となく分かるが、そんなやつがなんでこんなところにいるのかは些か疑問だったが、とりあえずこいつのことは後回しだ。



「そうか。ならナギ。私たちは先を急ぐからあとは気をつけてどこかへ行ってくれ」

「なんやなんや! せっかくなんやからオレも一緒に連れてってくれや!」

「お守りを増やす気は無い」

「まぁいいんじゃねぇの。ほっといたら勝手に行動してんれんじゃね?」

「……はぁ、やっぱり助けない方が楽だったな……」



 頭を抱えながらも、次の通り道を探すために身を乗り出し、周りを確認する。後ろでまだナギがギャーギャー言っていたが、あとはあいつらに任せておこう。



「グレンが見てもらっている間に私たちも他に行けるところないか見ておくか」

「ん? グレン?」

「あぁ、お前を助けてくれたのはグレンだ」

「……ふぅーん、あれがグレンはんなんやな。へぇ」



 ナギがグレンを見ながらジーッと見つめる。


 こいつが何を考えてるかは分からないがニヤリと口元が笑っているように見えた。


 しょんぼりしたままのアリスはグレンの方へと行くと、服を掴む。



「ねぇ、さっき見た時にアッシュ、いた?」

「いや、いなかったな」

「そっか……」



 グレンの回答にアリスはまだ悲しそうな表情のまま、手を離した。落ち込んでいるアリスの頭にグレンがわしゃわしゃと撫で回す。



「あぅあ〜、な、なにぃ〜?」

「しょげるな。いつも通りにしていたら出てくるからな」

「…………そうだね……そうよね!」



 少しずつ目に輝きが戻って行った。

 やはり落ち込んでいるよりも笑って貰えるならいいか。


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