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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ

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神竜がいる谷へ1

 少女をは目を覚ます。

 周りを見渡すと、ここは……冒険者ギルドの休憩室のようだ。



「んん……、わたくしは……」

「あっ! 神子様! お目覚めですか?!」



 ギルドの職員が慌ててこちらに来る。


 確かわたくしは、馬車に乗ってる時に、急に賊に襲われて……。あとは、気付いたら知らない所へ連れていかれ、殴られて、しまった後、身体の痛みがないと思ったら、金色の……



「あ、あの、金色の髪をされた方に助けられたと思うのですが、その方はど、どちらに?!」

「え、えぇ? あっ、なるほど、アッシュさんのことですね。彼なら今日、発つと言ってもうひとつ依頼を受けて行かれましたよ」

「アッシュ、様……」



 アッシュの名前を知った少女は自身の頬に触れながら赤らめる。


 アッシュ様……、アッシュ様……。


 忘れないように焼き付けるように何度も呼ぶ。バッと顔を上げて少女は笑顔で職員の手を掴む。



「その方はどちらに向かうと仰ってましたか?」



 ――――――――――――――



 アリスからの提案もあり、谷からアッシュの娘に会うためにこの神竜の谷を進むことになったが、当然、エドワード、ノア、ユキは呆れかえっていた。

 頭を抱えるエドワードはアリスとアッシュ、グレンに向かって睨みながら大きくため息を吐く。



「お前らな……、ホント、相談するって言葉、知っているか?」

「あはは……。ご、ごめんね」

「いいじゃない。どーせ行くんだし、馬車も空きがないって言われたし、林に関しては今通行止めになってるって言ってたし。どっちにしろだったわ」



 リリィの頭を撫でながらアリスはベーッと舌を出す。挑発的な返事にエドワードはピクッとし、相当怒ってることがわかるくらい睨んでいる……。アッシュは慌ててアリスとエドワードの間に入る。



「え、エドワード! ほら、僕も頑張って君らを守るからさ、安心してよ」

「そういう問題ではない。お前もだぞ。ちゃんと相談するようにしろ」

「わ、わかった。ごめんよ」



 怒るのも無理はないことしてるから何とも言えない。ユキもハラハラしながら三人のやり取りをみていたがその横にいたマカオがうふふと笑う。



「エドちゃん、このメンバーのお母さんねぇ」

「てか、お前も来てんのかよ」

「あらぁ、ノアちゃん一緒にいれてそんなに嬉しいのん?♡」

「はぁ?! ぜってぇねぇわ!!」



 叫ぶノアにくねくねしながらノアに近づいてくるので逃げるようにユキのほうへ行き、逃げる。


 グレンはそのやり取りを視線を向けた後、谷の上で飛び交う竜に視線を向けた。天まで届くくらい高い。



「思ったよりもでかいな」

「そうだな。しかも、黒竜だけじゃなくて赤竜……レッドドラゴンまでいるじゃないか」



 エドワードがため息を吐きつつ、腕を組む。


 確かに普段群れることがない竜があんなに……。普通の冒険者や旅人はかなり嫌がる、というか絶対に近づかないだろうな。



「あの街、出る時もこの谷で何人も行方不明になったものがいると言っていたが、絶対に竜に襲われてたり空へ攫われたりしたのが原因だろ。本当に大丈夫なのか?」

「問題ない。もしそうなったらーー」



 グレンはスナイパーライフルを生成する。出したスナイパーライフルをくるくると回す。



「これで撃ち落とす」

「待て。撃ち落とすのはいいがそれは私たちも危なくないか?」

「その時こそアッシュがどうにかするだろ」

「ん? 僕? あぁ。竜が攫いそうになったら僕が全力で叩き落すこともできるよ」



 にっこり笑うアッシュとスナイパーライフルを持つグレンを見て余裕な顔をするこいつらは本当に規格外だ……。


 グレンが先頭に歩いていくが、普段人が立ち入ることがないからだろう、まともな道が全くない。ほぼ崖のようなところを歩いていくと、通れそうな洞窟を見つける。その洞窟に光魔法で照らしながらそっと置くまで投げるがかなり深いく、いろんな横道などもあってかなり入り組んだ洞窟。


 中は獣の臭いと何かが焦げている臭い。


 中の様子を見ていたグレンの横にアリスがひょっこりとくる。



「この谷、幾つもの道があるみたいね」

「…………おい、ここ結構迷路みたいになってんぞ。しかもバカでけぇし、たぶん、魔物の巣窟にもなってるぜ」



 洞窟の規模を確認してくれてるノアも”普段ならぜってぇ嫌だわ”とボヤく。


 まぁ普通そうだろうけど。



「ま、進んでいけば何かしらあるだろ」

「いいのかよ、ぜってぇ途中で竜に遭遇すんぞ」

「運が悪ければだろ」

「つーか、お前とアッシュは多分は何とかなるけど、俺らはまじで無理だからな」

「だから私が先頭に、アッシュが後方にいるんだぞ」

「そうだけどよ……」



 今のところ、私とアッシュ以外にも、リリィもその域に行きそうだからあいつの成長にやらせてもいいんだが、それで時間を取られても困る。


 そう考えていると――


 バサッバサッ!


 なにかの羽音が聞こえる。見上げると、黒竜が複数体こちらを見ていた。そのうちの1匹がこちらに向かって飛んでくる。


 エドワードは真っ青な顔になりながら、アリスやリリィたちの背中を押す。



「ぜ、全員早く洞窟に入れ!!」

「わぉ、結構デカイね」

「い、いいから入りますよ!!」



 バタバタと急ぎ洞窟へと入っていく。最後尾のアッシュは問題ないことを確認してみんなの後を追っていく。洞窟からはエドワードが”もっと奥まで走っていけ!”と叫ぶ。



 ――――――――――――――



 かなり走っていったが振り返るともう追ってきている様子がない。アッシュとグレン、リリィ以外は息切れをしながら立ち止まる。



「はっ……はっ……。び、ビックリしましたね……。まさかこっちに飛んでくるとは思いませんでした……」

「ほ、ホントね……、……ってあら? エドワードとアッシュは?」

「あそこだ」



 グレンが指をさすと、エドワードとノアを抱えているアッシュがいた。恐らく二人とも体力と、エドワードに関しては喘息が起こる前に抱えて来てくれていた。


 顔を真っ赤にしてるエドワードと逆に真っ青なノアを降ろす。



「二人とも大丈夫かい?」

「お前は抱える前に先に言え!」

「だって立ち止まると危ないと言っていたのはエドワードじゃないか」

「そ、そうだが……」

「どっちでもいいけど、俺はもう走れねぇ……」



 バテているノアをユキが肩車している間にアッシュは真っ暗な洞窟を照らすために、アリスに預けていた炎を使い照らしつつ、足りない分は自分の炎を使う。


 これで周りがよく見える。


 周りをよく見ると光に反射しているのか光る草がところどころにあり、まるで道標のように続いていた。


 グレンは後ろにいたアッシュにこっちに来いと呼び、光る草を摘む。



「どうする? 道に迷わないようにこれを辿ってみるか?」

「そうだね……。ただこうして草が生えてるってことは……」

「恐らく竜が居る可能性は高いな」

「でも真っ直ぐ抜けるならこの道を辿るのはありだと思うよ。出口があるってことだし」

「それもそうか。なら辿ってみるか」

「おっけ。なら僕は後ろに戻るよ」

「ん。わかった」



 アッシュは頷いて後ろに戻る。

 再び先頭を歩こうとすると、アリスがグレンの服を引っ張り、同じように隣を歩き始めた。



「どうした?」

「あのさ、アッシュの娘、見つけてくれてありがと」

「……急になんだ?」

「なんていうかさ、元々アッシュは娘ちゃん探すために私たちに着いてきてくれてたんだけど、私やエドが色んなところに聞いても、見つけきれなかったの」



 初めて会った時のアッシュは本当にいたたまれない程にどうしようもないくら……、今のように笑ってくれることは無かったから。


 本来の瞳である瑠璃色の瞳を見ることも嫌い、ずっと守護者じゃなければと、もっと早く帰ればと泣いていた。



「今は少し時間が解決してくれてきて、アッシュも笑うようになったけどすごい時間かかってたから……」

「……いや、時間だけでは無いと思うぞ。あいつが立ち直って昔と変わらずいられたのはお前たちのおかげだ。私もお前たちには感謝している」

「そうかしら?」

「あぁ。もしお前たちに会わなかったら、きっとあいつは今も笑えずにいただろう」

「それならいいけど……。なんかそう言われるとアッシュを旅に誘って良かったわ」



 アッシュを初めて見つけた時は本当に怖さよりも……



「……怖さよりも、なんだかほっとけない気持ちになっちゃったから、アッシュのためになってるなら良かったわ」



 ふふふっと笑いながら嬉しそうにするアリスにグレンも少し笑うとふと思った。



「というか、よく暴れていたアッシュを宥めて仲間にできたな」

「んー、あん時は確か――」



 そう言いかけようとする前にグレンがなにかに気づいて、アリスの前に腕を出す。急に出てきた腕に当たりながらも止まると何事かと思うと進む先をどうやら睨んでいるようだった。



「ど、どうしたの?」

「…………ちょっと下がっていろ」



 グレンがアリスを下がらせながら数歩先を歩く。このクソ暗い中でまだ外に出る気配もないにも関わらず、”灯り”のようなものが見えているのは嫌な予感がする。


 立ち止まったグレンにアリスも含め心配しているとアッシュが少し声を張りながらグレンに問う。



「グレンー! 大丈夫?」

「問題ないがそこから動くな」



 アッシュはエドワードと一緒に首を傾げていると、正面からの灯りが他も気づいた。が、なにかおかしい様子だ。


 だんだん光が強くなっていき、目視でも分かるようになり、すごい勢いでこちらに炎が迫ってきていた。


 その炎に対してグレンはパチンッと指を鳴らして防御魔法を張ると、強い勢いのまま飲み込んでいく。

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