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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ
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神竜がいる谷へ2

 ボシュッと音と共に結界ごと炎に飲み込まれる。結界のおかげで熱さはないが炎の勢いは止まらない。

 結界を維持しているグレンは腕を組み炎の先をじっと見つめるとかなり奥の方でこちらに徐々に近づきながら迫る竜の姿が見えていた。



「ふむ。さて、どうするか……」



 スナイパーライフルで撃ったところで逆鱗に当たらねば効くわけでもなく、もしくは弾に術式をのせてたところで、この狭い洞窟では中途半端な魔法しか使えない。炎に単独突っ切って直接やったほうが早そうだな……。


 そう思い、結界外にグレンが出ようとしてアッシュが腕を掴む。



「炎のブレスの中、突っ切ると危ないよ」

「その方が早いだろ」

「もっと簡単な方法があるじゃないか」

「ん? ……あぁそういう事か。まぁ確かにその方が早いな」



 アッシュの言葉に何か察したのか、これは任せたと言わんばかりに数歩グレンは下がる。前に出たアッシュは左手に自身の蒼い炎を纏わせる。髪の一部分が白く変わる。



「炎の火力勝負としようか」



 炎を纏った腕をまっすぐ伸ばし、炎を放つ。

 放たれた炎は竜の炎に当たるとそのまま押し込んでいった。アッシュは押し込みながらも前へと歩いて結界の外へと出ると同時にさらに火力を上げていく。


 後ろで見ていたマカオは”あらあら~ん、相変わらず綺麗な炎ねぇん。惚れ惚れしちゃう♡”と言いながらノアに抱き着こうとして、それを察したノアはマカオの方に目線を向けずに横へスススッと逃げる。


 しばらくするとアッシュは炎を解除して、くるっと振り向く。



「ん、終わったよ」

「相変わらず火力はでかいな」

「まぁ竜くらいの炎なんかじゃ負ける気がしないからね」

「それもそうか」



 返事をしながらも先程の炎が来た方向を見ると、ドシンドシンと地響きが聞こえてくる。炎で敵わないからとこちらに直接来ているようだ。


 グレンは迫りくる竜に対して大剣を生成して肩に担ぐ。



「あれは私が仕留めてこよう」

「ひとりで行ける?」

「ハッ 誰に言っている」



 ダンッと地面を蹴り、竜に一直線に走っていく。普通であればこの剣では竜の硬い鱗に剣は通らない。だが、それは彼にとっては関係ないようだ。



「”剣技ーー”」

「グォオオオオオオオッ!! グオッ⁈」



 ニヤリと笑うグレンに咆哮を上げる赤竜だったが、獣としての本能なのだろうか、急いで止まって逃げようとしていたが勢いは止まらない。


 赤竜に向けて彼は剣を振るう。



「”一刀両断”」



 シュインッと風を切る音が響く。切り捨てられた赤竜は白目を向き、ずるりと首と胴体が分かれていった。ズシンッと音を立てて崩れていく。

 竜が倒されたことで、アッシュたちもグレンの元に行くと見事に一撃で仕留められた竜にアッシュも驚愕していた。



「え、君、鱗ごと両断したの?」

「赤竜くらいなら黒竜ほどの硬さはないからな。簡単だ」

「いやいや、赤竜も結構硬いけど。僕の剣じゃ通らないし」

「そうか。それと竜の討伐も依頼されてるのだろ。ついでに持っていけ」



 グレンにそう言われて、両断された竜をアイテムボックスにしまいながら、アッシュは頬を膨らませて少々悔しそうにしている。



「むぅ、僕ももう少し剣の扱い訓練してみようかな……」

「おい、お前、まだ鍛える気か?」

「いいじゃないか、エドワード。それでもしグレンがいないときでも竜を切れるならいいことじゃん」

「そう何度も竜に襲われることなんてこの先この谷にいるくらいだろ」



 呆れながらエドワードにそう言われるがそれでもアッシュは納得できてないのかムスくれたままだった。


 竜をしまい終わると再度先へと進んでいく。少し歩いたところで空間がひらけた空間が見えてきたため、一度足を止めてグレンだけ先に進み様子を伺う。覗き込むと、ここまでアッシュの炎が来ていたのか出口付近は焦げている。だが、ほかに竜がいる様子はない。


 周りを確認しつつ穴から出てると、背後からまるで奇襲するように赤竜が牙をグレンに向けてきていた。

 が、グレンは振り向かずに竜の鼻鏡ーーいわゆる鼻の部分を鷲掴みする。通常その程度では止まらないし、それくらいではダメージなんてないはずだが、かなり痛がるように竜は声を上げる。



「ギャオンッ!! ギャオンッ!!」

「トカゲが、不意打ちとか考えるものなんだな。……おい、竜はこいつだけだ。出てきていいぞ」



 そう言われて一同が出てくると、アリスは彼が掴んでいた竜をジーっと見つめる。見た後、何かを悟ったのか慌ててグレンの元に近寄る。



「待って! グレン!」

「なんだ。いくら掴んでるとはいえ危ないから離れていろ」

「えっとね、その竜は殺さないであげてほしいの」

「? なんでだ。危ないから始末するつもりだが……」

「その竜は卵を守っていただけみたい。だから巣に来てビックリしてるだけよ」

「…………」



 少し考えてグレンは赤竜を見る。そもそも赤竜はかなり凶暴性が高い。見逃したところで危ない気がするが、アリスがどうしてもという顔で見てくる。その間でもどうにか赤竜を宥めるために撫でているためゆっくりと赤竜から手を放す。



「まったく、竜とはいえ、ドラゴンと同じで危険なんだぞ。そこを理解はしているな?」

「もちろんよ!」

「…………はぁ、分かった」



 最後にグレンはギリッと竜を睨む。ビクッと怯える赤竜は頭を下げながら下がっていく。余程怖いのか尻尾もまるで犬のようにクルンッとなってしまっている。あの様子なら襲ってくることは今のところないだろう。


 それを見ていたアッシュは何故か少し笑っていた。笑う彼にグレンは少しムッとする。



「……なんだ?」

「あはは。君、やっぱり獣に怖がられるよね。竜まで怖がらせるとは思わなかったけど」

「……竜が獣のうちに入るか? 一応魔物に部類されるだろ。獣と一緒にするな」

「この前クロも怖がらせてたじゃん」

「……あー、うるさいうるさい」



 クスクスとまだ笑っているアッシュにグレンは舌打ちをしながら手をパタパタさせて次の洞窟のほうへと歩いていく。その後ろにノアも一緒にくっついていき、一緒に行き先の確認をする。


 その間にアリスが先程の赤竜の顔を撫でながら”大丈夫大丈夫。少ししたら行くから、ごめんね”と断りをいれていた。落ち着いた赤竜はのしのしと自分の巣に戻ってそっと座る。その間もこちらを見ていたが炎を吹く様子も攻撃的な様子も見受けられない。珍しいタイプの赤竜だ。


 再度、三つほど道があったがそのうちの一つは外につながりそうだが上に伸びているもののようでさすがに行くのは厳しそう。二つ目と三つ目は行き先が不明のため獣臭いが少ない道を進んでいく。


 真っすぐ進んでいると、先頭の彼は気づかなかったのか進んでいく道以外もあることにアッシュが気が付く。道がそれているところがあり、そこを覗き込みがその先もかなり暗い。それに少し細い道だったのでそちらではなく、正面の道を進もうとする。最後尾にいたアッシュもそれに続こうとしたが、その細い道から誰かが泣く声が聞こえてきた。



(? 誰かの泣いている声?)



 チラッと見るが声なのかどうかわからないがやはり真っ暗だ。

 なんだったんだろうと思い、アッシュは再度みんなの後に続いて行こうとする。



「あ、あれ?」



 炎で照らしながらなので今の一瞬の目を放しただけなのに誰もいない。曲がり角でもあったのかと思い、駆け足で行くがそんな道に当たることもなくひたすらに長い長い暗い道が続くだけだった。



「え、嘘……。今の一瞬で僕、迷子になった……?」



 慌ててみんなの気配を辿る為に炎に意識を持っていくが何故か気配は散り散りに散っていて明確には感じ取れない。そんな遠くにいってるはずもないし、みんなが散り散りに動くはずもない。

 魔法の類も視野に入れたが特別変な魔力も感じないため、頭を悩ませる。



(壁を壊してしまっていくのもありだけど、さすがに崩れられても困るしな。一旦、このまま真っすぐ走っていこう。何処かには出れこれるはず。それにグレンのことだ。いなくなってもみんなを谷の外には出してくれるだろうから大丈夫でしょ)



 そう結論づけて、暗い道を駆けていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 先頭を歩いていたグレンは目を凝らしながら進んでいけば遠くに光が見えてきた。先程のような妙な揺らめきもない。外の光だろう。

 振り返ってもう少しで出口だと伝えようとしたが、アッシュがいないことに気が付く。



「っ! おい、エドワード。アッシュはどこだ?」

「え? アッシュなら後ろに……っていない⁈」

「え、いないの?」



 グレンはため息を吐いて、エドワードの方まで歩く。



()()()だぞ。迷子になることないのにどこに行ったんだ、あいつ」

「そうよね。ずっと道一つしかないのにどこに行ったのかしら……」



 何処かに行くにしても声はかけていくはず。急にいなくなってしまうなんて……。



「……あいつのことだ。一旦はお前たちを谷から出す。あいつは後で私が探すからまず先に進むぞ」

「だ、大丈夫なのかよ?」

「ノア、あいつが自分を優先させて探してもらおうと思うやつか?」

「……いや、そりゃあ一番ねぇな」

「そういうことだ。幸い街の方角はわかっているだろうからな。さっさといくぞ」



 そう言ってグレンは先に進む。


 心配じゃないわけではない。あいつが急に姿を消したのは何か巻き込まれてる可能性もある。急いでこいつらをまず谷から出すことが先決だ。


 彼は焦りを隠しながら先を急ぐ。

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