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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ

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誘拐事件簿3

 正面からアッシュたちが囮になっているころ、別行動でノアとユキは裏からの潜入するため、今は屋根裏まで到達した。ぶらんと上から穴の空いている屋根から誰もいない部屋に降り立つ。



「ふぅ、ようやく忍び込めましたね」

「しっかし思ったより警備も多いしな。忍び込むのに一苦労だぜ……」



 ノアが言う通り、ここまで忍び込むのにかなりの警備がいた。ここまで来ると外から、というより中の方の脱走防止のための警備態勢だし、これだけの多さなら結構な人数がいる可能性がある。

 なるべくバレないようにしてはいるが、どうしても厳しい場合は仕留めるようにしていた。主にユキが。


 部屋の鍵をノアに解除してもらい、そっと扉を開ける。やはり中にも見張りがいる。



「いますね……」

「足音的にあいつ以外はいねぇみてぇだな。ただ下にはいるからすぐ仕留めないと気づかれるぜ」

「わかりました」



 ノアの言葉に頷きながら見張りが後ろを向いた瞬間に扉からサッと出て背後からユキが羽交い締めにし、サイレンサーの付いた銃で相手のこめかみに瞬時に打ち抜く。撃ち抜かれた見張りは力なく崩れ落ちる。そっとユキがおろして、先程の部屋に引きずり込む。


 中にいたノアがその死体の身体を調べると鍵束と見取り図、無線機を回収した。

 これで向こうの動きもわかる。



「ん、ノア。アッシュたちも屋敷に入れたようです」

「おけ。……え、マカオも?」

「アッシュのフォローのおかげで、という感じです」



 クロと感覚共有してるユキはアッシュたちの動向を確認できる。その代わりこっちと向こうの音が混じるので潜入の際はノアに頼りっきりだ。ずっと行動していたので阿吽の呼吸でたちまわれている。



「さて、本格的に二人を探しましょう。外からでは中の様子は見れませんでしたからね。上から確認していくしかありません」

「だよなー。んじゃま行きますか~」



 仕留めた死体を隠し次のところへと向かう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして無事に潜入できたアッシュたちは部屋へと案内されて、鍵を閉められる。まぁ案の定といったところだ。勝手に出回らないようにするためもあるのだろう。


 埃まみれだからかエドワードは咳き込みながら袖で口元と鼻を隠す。



「で、こっからどうする?」

「しばらくしたらどうせ誰か来るよ。その時に、仕留めればいいさ」

「加減しろよ」

「いやだなぁ、うっかり殺しちゃうなんてことしないさぁ~」



 うっかりで殺る可能性があるから言ってるんだが。それに女性の姿でアッシュのいつもの声が聞こえるとなんか違和感が……。


 アッシュは口元を手で隠しながら何か考えているのか、その際に彼の瞳が翡翠から瑠璃色に変わる。しばらく考えていると、先程の男ともう一人が入ってきた。周辺の気配はこの二人だけのようだ。


 男が言葉を発する前にアッシュが男の顎に思いっきり蹴り上げる。蹴り上げられた男は脳が揺れ、脳震盪を起こして倒れた後、あともう一人の男が銃を取り出そうとしてきたので、アッシュは男の口をそのまま掴み、押し倒す。馬乗りになり、男の両腕に足を置いて身動きも封じる。アッシュはにっこりと笑いながら男に向けて口を開く。



「ダメじゃないか。相手が女性でも油断してはいけないよ……。もしかしたら、とーっても強い人かもしれないからね?」

「ンンンッ⁈」



 男は何か言いたげだがアッシュの力が強いせいで喋ることは叶わない。空いている手でアッシュは無線機と銃を男から回収し、パチンと魔法で回りの音を遮断する。魔法の効果範囲にエドワードたちもいるので互いの声は聞こえる状態だ。



「さて、君に聞きたいことがあるんだ。神子を最近攫ったよね? どこにいるの? 地下にいるのはわかるんだけど、明確な場所がね、分からないから教えてほしいんだ」



 そう言って男の口から手を放し、放された男はギリッとアッシュを睨む。



「こンのくそ(あま)!! てめぇ守護者か⁈ だれがてめぇなんぞにーーギャアッ⁈」



 突然、男が悲鳴を上げる。理由は簡単だ。アッシュが踏みつけている腕に徐々に力を入れているからだ。


 男を見下ろしているアッシュから笑顔が消えていく。



「悪いけど、僕、今かなり不機嫌なんだよね。だからさ、うっかり僕に君を殺させないでほしいんだよ」

「ひぃっ⁈」



 正直、こいつに聞かなくてもこれくらいの距離になれば彼女たちのところに飛ぶのは簡単だ。

 だけど、この規模だ。もしそれをして他の女性たちが犠牲になってしまう事は望まないだろうし、それこそ助けてもかなり怒られることは避けたい。


 だからこんな無駄な手間ではあるがしないといけない。


 さらに踏みつけている足に力を入れる。



「それで、話す? 話さない?」

「は、話す! 話すから! 腕、腕が折れる!!」

「早くしないと、ぽっきりといっちゃうよ」



 ミシミシと嫌な音が響く。問われている男は泣きながら口を開く。



「ち、地下の降りて一番奥の部屋だ!! い、一緒にいる守護者の女の抵抗が、激しくて、まだ何もしてねぇ!! …………っ、ちくしょう!! だから神子に触れるとまずいっつったのによ!!」

「ふぅ~ん」

「しゃ、しゃべっただろ⁈ は、早く足をーー」

「まだだよ。君たちのボスの場所は? これだけの数だ。統率してる人がいるはずでしょ」



 そう言うと男はビクッとして顔を背ける。

 知ってるけどそれは言えないと言わんばかりの様子に、アッシュは目を細め、足に力を入れて男の右腕をへし折った。折った衝撃で男の断末魔が響く。



「君に拒否権はないんだよ。もう一度聞く。君たちのボスの場所は?」



 折った方の腕をぐりぐりと足に力を入れていく。そのたびに男は泣き叫び足をばたつかせる。


 その光景をエドワードとマカオは互いに顔を見合わせていた。



「アッちゃん、容赦ないわねん……」

「……おい、アッシュ殺すなよ」



 エドワードの注意にアッシュは首だけエドワードたちの方を向きながらケタケタと笑う。



「あはは、いやだなぁ。彼が渋ってしまわなければ大丈夫だよ。君も、死にたくない、よね?」

「ヒィッ! た、たの、頼むから!! こ、ここ殺さないでくれぇ!!」

「喋ったら、殺さないよ。さ、早く言って。もう一方の腕も折られたい?」

「言います!! 言いますからぁ!!」



 泣きじゃくる男に場所を事細かに聞く。二階の中央の部屋とのこと。それも猫を通してユキたちに共有する。ユキたちにはそのまま地下にいるアリスたちの救出。アッシュたちはそのボスのところに行くことにした。


 この男がそもそもここに来たのはそのボスのところにアッシュとエドワードを連れていくためでもあったそうだ。

 素直に一応、話をしたので折った腕も回復させて元に戻してあげる。が、まだアッシュが怖いようで萎縮していた。



「さて、じゃあ君、早速だけど僕をそのボスのところに連れて行ってね」

「へ、へぇ……。ただボスのところには用心棒とかいるんですぜ? あんただけでできるとはーー」

「黙ってーー」

「ヒィッ⁈」

「ーー連れていけ」



 アッシュは脅すように男の胸ぐらを掴み上げる。


 小さく悲鳴を上げる男にエドワードは少し同情してしまう。腕を折られたことがあるからこそすごい怖いんだろう。



「僕、パッと行って片付けようと思うけど、エドワードはどうする?」

「私は他に捕まってる人たちを開放してくる。そっちに行っても足手まといになるからな」

「わかったよ。なら、クロは君が預かってて。ユキたちにも協力してもらいながら他の人の誘導した方が楽だと思うし。じゃあ行ってくるね」

「あぁ」



 クロを受け取ると怯える男に連れられてアッシュは行ってしまった。さて、私たちは私たちで動くとしよう。



「マカオはどうする?」

「あらん、あたしも行くわよん♡」

「お、おぉ……」



 こいつを連れて地下に無事に行ける気がしないが、いないよりはマシだろうと思い、もう一人倒れてる男から鍵束と見取り図を拝借する。廊下を見て周囲を確認しながら見取り図に記載されてる各部屋へと回っていった。


 扉を開けていくとやはり結構な人数が捕まっており、無線で配置やタイミングを見ながら少しずつ脱出させる。地下に向かう途中のユキにも協力してもらい、建物内の見張りはほとんど片付いた。


 そろそろ他の連中が異変に気付き始める頃合いだろうから早急に逃がしていく。



「この部屋が最後だな。マカオ、そっちはどうだ?」

「ばっちりよん! さっきユキちゃんたちともすれ違ったから他の連中は問題ないと思うわん♡」

「そうか。なら私も地下に向かう。マカオはこの人たちを連れて外に。そのまま街へ誘導も頼む」

「はぁ~い♡ 転送石使えるからひとっ飛びしてくるわん♡」

「え、いいのか? その魔法石、かなり貴重な石だった気がするが……」

「いいのよん。どうせ、前のところでもらったものだから」



 そう言ってピースしながら出ていく。


 問題ないならいいかと思い、そのまま地下へと向かう。


 地下にいた見張りはすでにユキが片づけてくれていたようだ。



「おや、エドワードも来たんですね」

「まぁな。アリスは?」

「えーとですね……、そこで元気に優雅にパンケーキを頂いてました……」

「…………」



 こっちの心配も露知らず、パンケーキを呑気に食べてたのかあのアホ……。


 呆れながら見に行くと、アリスがこちらに気づいて元気よく手を振ってきた。



「あ、エドワード! ノアから聞いたけど、それ似合ってるわ、ね⁈」



 最後まで言い切る前にアリスがビクッとする。かなり怒った顔をして近づいてくるエドワードにだらだらとアリスは汗を流しながらソッと椅子から降りてゆっくりと下がっていく。



「まず、我々に言うことはなんだ? アリス」

「す、すんませんでした……」

「……なんでついて行ったんだ? 心を読めるんだからこいつらの企みくらいわかるだろ」

「うぅ……。だって、だって……」

「だってなんだ?」



 両手の人差し指でつんつんとしながらぼそぼそと言い始める。



「………………から……」

「ん?」

「ふ、ふわっふわな、パンケーキ、あるって……い、言われて……」

「…………はぁ~……。お前アッシュに怒られても知らんぞ」



 そんなに怒りはしないだろうが、こいつの甘いもの好きをどうにかしよう。甘いものにつられてどこかに行かれても困る。


 呆れながら頭を抱えてると、ドスンッ!と大きな音が上からした。

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