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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ
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誘拐事件簿2

 食堂でまさか女の子になろうと言ったらエドワードに怒られた。一旦一同は宿泊部屋に行き、準備をする。ノアに関してはユキが呼び戻してくれた。


 鏡の前でエドワードは眉間にしわを寄せながらも身支度をしてくれているアッシュを目でチラッと見ながらもため息をつく。



「まさか女装して潜入するってことか?」

「そうだよ、エドワード。その方が自然だし、何よりアリスたちに危害が来ることは避けたいからね」

「つーかよ、お前が強行突破で行けば割とすぐ片がつかね?」

「ノア、僕の経験上、規模がわからない状態で僕が行くとするとアリスたちが危険なんだ。居場所が明確じゃないのに強行突破したら彼女たちが殺されてしまうか、別の場所に連れていかれてそれこそ追えなくなっちゃうからね。だから慎重にいくんだよ」

「なるほどなぁ」



 ベッドの上にいたノアはあぐらをかきながら準備を進めていくマカオとアッシュを眺める。マカオはエドワードの髪を櫛でときながらヘアオイルを塗る。いい香りが部屋に広がって、その間にアッシュはエドワードにメイクをしていく。元々彼は青白い肌だからナチュラルメイクでいいだろう。アイライン、まつ毛を整えて、薄くチークとほんのりピンクに近い口紅を塗る。


 うん、いい感じに出来たんじゃないだろうか。



「マカオ、どう? メイク自体はこんなんでいいかな? 久々だから確認お願い」

「あらあらあら~! いいじゃないのぉん!」



 ぱっと見は化粧してるようには見えないが可愛い感じのメイクになった。


 …………正直、このメイクさっさと落としたい……。


 そう思うエドワードとは裏腹にマカオは楽しそうに彼を観察しながら首を傾げる。



「でもやっぱりそのままでも可愛いけどん、ちょっと服のせいで男の部分も見えちゃうからこれを着て頂戴な♡」



 そう言って取り出したのはスカート。白を基調でピンクのフリルのある服でエドワードにそれをマカオから渡される。エドワードは何かを諦めつつ、何か男として大事な者を失いそうな気がするエドワードは項垂れる。


 これを着ろと。


 途方に暮れたような様子のエドワードを置いて今度はマカオがアッシュの方の準備に取り掛かる。



「アッちゃんの準備はあたしがするわ♡」

「え、君がするの?」

「レイちゃんといた時はよくあたしがメイクやコーデしたじゃないん♡ 久々にさせてぇ~ん♡」

「別にいいけど……、じゃあ任せるよ」



 先程までエドワードが座っていたところをアッシュが座る。嬉しそうにするマカオだがすんなりと受け入れるアッシュもどうかと思いながら服を持ったままのエドワードが鏡越しに目を合わせながらアッシュに話しかける。



「お前、よく抵抗もなくできるな……」

「まぁ、昔よくレイチェルとそこのマカオに着せ替え人形のごとくされてたからかな。あんまそこまで抵抗ってのはないよ。それに何かで隠密で潜入する時とかにもしていたし」

「お前の奥さん、旦那に何させてるんだよ……」

「あはは、まぁレイチェルだからってのもあるね」

「……ほんと奥さんの事、好きなんだな」

「もちろん、すっごい愛してる」

「……お前がドのつく愛妻家ってのはよーくわかったよ」



 アッシュがキリッという姿に眩しさすら感じる。


 その後ろでノアは何故かダメージを受けている。



「はは……、奥さん、奥さんね……」

「大丈夫です? ノア」

「へ……っ」



 泣いているノアは確か奥さんに愛想尽かれたのか音信不通になったと言っていたな……。


 なんていうやり取りをしている間にアッシュのメイクも終わるとマカオは目をキラキラさせながら”んまぁ~! 会心の出来栄えよん!”と言って嬉しそうしていた。元々いい顔立ちということもあってメイクをするといつもよりかわいい顔立ちになっている。髪もおろしつつ、ふわっと三つ編みになっており、完全に首から上は女性だ。だが……



「身体はそこそこ男ってわかる感じだし、さすがにそれだけでは騙せなくね?」

「確かに、エドワードは華奢なので割と服装さえどうにかできれば見えなくもないですが、アッシュは戦闘タイプっていうのもあるのですこしがっしりしてますから」

「そこは見せ方の問題だよ。特にこういう肩の部分。背中で両肩の肩甲骨をくっ付けて肩を落として少し胸を張るようにすると女性に見えやすくなるんだ」



 そう言ってアッシュは実際にしてくれると、見た目が完全に女性になった。アッシュの女性バージョンだとこう見えるのかとノアとユキは感心してしまう。



「あとは、アッちゃんの服をこうして、こうで……。あとはこれでどうよ!」

「女子だ。すご」



 いつもの服装なのに着せ方でそうじゃないようにも見える。見せ方次第っていうけど本当のようだ。完全な女性にしか見えないアッシュの準備が終わったころでエドワードも着替え終わった。が、何故か部屋の隅で屈んで隠れてしまう。


 ベッドから降りたノアはニヤニヤしながら隅に隠れるエドワードを引きずり出す。



「おーい、アッシュもできてんだからお前もさっさと諦めて出て来いよ」

「~~っ! お前、他人事だと思って……」

「他人事だも~ん」


(こいつ……)



 殴りたい気持ちを抑えて出てくると、可愛らしい白のワンピースにピンクの可愛らしいレースだ。スカートをどうにか下げるように手で押さえいる。髪も長いせいもあるし、見た目がすでに可愛らしい女の子に見えるのでウブな感じが非常にいい。


 そんな彼にアッシュとマカオは”おぉ~”と感心したように拍手していたが、ノアとユキは固まる。



「俺、清楚系の女性結構好きなんだよな~」

「……似合ってますよ。エドワード」



 ジーっと見てるノアと、笑顔なユキに何ともいえないエドワードは少し泣きそうになってる。


 なんでこんな目にという思いと、いや、アリスたちがどっかについていこうとしたときに止められなかった罰だと思おう……。そうしよう……。


 無事に変装できたアッシュとエドワード。アッシュは凛としたお姉さん的な女性な感じでエドワードは可憐な清楚系の女性になっている。少女と言っていいかもしれない。



「よし、僕らの準備はできたから、二人は僕とエドワードが気を引いてる間に裏から潜入してほしいんだ。クロと視覚共有してもらうから見つけたらクロの鳴き声で教えて。その場で救出できそうなら救出お願いするよ」

「わかりました。隠密なら僕とノアの出番ですね」

「なら、あたしはアッシュちゃんたちと囮になるわん♡」

「え、君も来るの?」

「もっちろんよ~ん♡」



 正直邪魔になりそうな気はするけど……。いや、囮なら派手な方がいいかもしれない。



「わかった。マカオも頼むよ」

「こいつマジで連れてくの⁈」

「囮だからね。あくまでも、目立ってハデならいいんじゃないかな」



 マジかよと言わんばかりの顔をしているノアは引いたような感じだがたまにはマカオも目立つ姿が役に立ちそうだ。


 ……にしても他の人のメイクやコーデはばっちりなのに何で本人の姿は壊滅的なんだろうかと口に出さずに首を振って、アリスたちの気配のする方向へと向かう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場面を戻して冒頭。そんなこんなで現在に至る。そしてここは街からもかなり離れている。少し森に入って入り組んだところにあるし、どう見ても廃墟のようだ。ここにアリスたちはいるそうだがここからではどこにいるかもわからない。


 ただ、二人の救出のためとはいえこんな格好は死ぬほど恥ずかしい!! 


 顔も上げられないエドワードはずっとアッシュの後ろに隠れながら服を掴んでいる。


 後ろで隠れるエドワードや目の前にいるアッシュに対して男は嘗め回すように見ていた。男のエドワードでも鳥肌がでるほどだが、それでもアッシュは笑顔を変えず男を見ている。


 よく平然としていられると感動を覚えそうだ。



「へぇ、泊めてほしいねぇ。そこの嬢ちゃん二人はいいが後ろのでかいのはな……」



 露骨にマカオに対して嫌そうな顔をしている。というより怪しんでいる感じだろう。



「そいつ男だろ? どう見ても」

「いやぁねぇ! 乙女に失礼しちゃうわん!」

「いやいやどう見てもゲテモノのおっさーー」

「彼女は私たちの育ての方です。できれば一緒に居たいのですが……、難しいのでしょうか? もちろん同じ部屋で問題はないので」



 マカオと男の間にはいりながアッシュがそういうと男は悩みながら”そうだなぁ”と呟きながら再度まじまじとアッシュを見る。



「ま、ダダで泊めるってわけにはいかねぇな。そいつの分も含めてお嬢ちゃんがいいもんくれるならいいだろう」

「ご安心を。お代はきちんとお支払いいたしますよ。私のお支払いできるかぎり、ですが」

「へへへ、ならいいぜ。さ、入んな。部屋に案内してやるよ」



 そう言って男はアッシュの腰に手を回す。”うわ……”と思うと同時にエドワードは見えてしまった。男の死角になる方の逆の手がアッシュは笑顔のまま、握り拳を作っていた。


 あぁ、たぶん相当嫌なのと、殴りたいの我慢してんだろうなと思う。相手にそれを覚らせないようにしてるこいつの演技力もすごいな……。

 いや、感心してる場合ではない。とにかくこれで中には入れる。あとはこちらか見つけるか、ユキたちがアリスたちを見つけてくれればいい。


 気を引き締めて廃れた屋敷に足を踏み入れる。


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