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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第六章 妖怪の里

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妖怪の里:後日談




 それからは幾年の月日が流れたであろうか。


 俺は夜李と変わらないくらい背も伸びたし、子供も出来た。


 けれど、その間にアッシュたちが来ることはなかった。あいつは約束を破るタイプではないと思うし、何か来れないわけでもあったのかもしれない。



 そんなある夜の事。月明かりに照らされている、すっかり大人の姿のリオンは自分の足元にいる愛娘、シオンと一緒に縁側に夜風に当たっていた。シオンが眠れないというのでアッシュたちの話をしてあげていた。



「しょれで、おとーしゃまはまだそのひとたちにあえてないんでしゅよね」



 まだ小さいシオンは拙くも喋ってくる姿は可愛い。とっても可愛い。

 自分の娘にキュンとしながらもシオンの頭を撫でながら”そうだなぁ”と呟く。



「俺はずっと待ってんだけど、あいつら全然来ねぇんだよな。ま、どっかでくたばるような連中でもねぇし、忘れられたのかもしんねぇな」

「で、でもしょのひとたち、にんげんしゃんなんでしゅよね?あってみたいけどこわいでしゅ……。おそとはこわいにんげんしゃんがおおいってきいてましゅから」



 シオンには俺のように怖い思いをさせたくないから、俺や夜李が奴隷になっちまっていた話をして人間の怖さも恐ろしさも話をしている。その為か無断で外には出ない。基本、夜李がこの手の話をしてくれてるけど。



「ま、人間でもいろんなやついるからさ。アッシュたちのおかげで俺はここにいられてるしな。だから俺は結構人間は好きだぜ」



 昔はクッソ嫌いだった。もちろん俺が勝手に里の外に出てしまってから起こったことだけど、それ以上に怖い目に俺も、いやもっと怖い思いもしてる夜李がいる。そんなかでも俺はあいつらに助けられたことでいろんなやつがいるんだなって知れた。


 シオンの頭を撫でながら話をしていたら二階から夜李が降りてきた。



「ん? そんなところにいたのかリオン」

「よっ」



 昔と変わらない姿の夜李の手には酒が握られていた。珍しく持ってるなと感心すると俺の視線に気づいたのか、持っている酒を持ち上げながらため息をつく。



「俺のじゃないぞ。リンから没収した酒だ」

「あー母様の」



 てことは二階で酔いつぶれた母様を今頃、俺の嫁さんが看病してくれてるのだろう。ついでなので”その酒一緒に飲もうぜ”というと”少しだけならな”と言って同じ縁側に並んで座って酒を注いでくれた。



「ところで何を話をしてたんだ?」

「シオンにアッシュたちの話をしてたんだよ」

「あー、あいつらか。お前その話好きだよな。周りのガキにもその話してるだろ」

「まーな」



 この話は俺の中では大事で自慢したくなるような話だ。



「そう考えるとお前は背も伸びて、ガキもできた。髪もアッシュみたいに長く伸ばしてるし」



 そう言って夜李は俺の黒髪に手を伸ばす。俺はあの日以降忘れないようにずっと伸ばしていた。アッシュのように強くなる。強くなってあいつをアッと驚かせてやりたいと思ってるけど……



「カッカッカッ! まぁ、でかくなっただけで強さはまだまだほど遠いがな。雑魚鬼め」

「るっせーな」



 夜李に言われてもそこはぐうの音もでねぇ。いまだに夜李にも全然かなわない。母様にも勝てねぇし、悔しい。


 酒を煽るように飲むとカッと喉が熱くなる。けどこんなんじゃ酔うことはない。御狐神さんからたまにもらう油揚げチョコの方がまだ酔える。アッシュはあれで酔いつぶれたけど。


 隣に座ってきた夜李の方までよたよたと歩きながらシオンは可愛らしく首を傾げる。



「よりしゃんもあったことありゅのでしゅか?」

「あぁ、会ったことあるぞ。恐ろしく強くて、腹立つような笑顔で来るやつだ」

「つーかあいつ夜李が串刺しにしても死なないやつだしな」

「しな……⁈ も、もしかしておばけしゃんなんでしゅか⁈」

「ぶつ! アッハッハッハ!! お化けって!!」

「カッカッカッ!!」



 シオンはなんで笑われてるかわからず、また首を傾げる。あいつをお化け扱いなことに俺と夜李は大笑いしてしまう。妖怪の俺らなのにあいつ妖怪よりもお化けになっちまってる。


 二人で大笑いしていると、バタバタと河童ーーではなく河藤が何やら慌てて庭に入ってくる。その際にこけそうになったがどうにか持ち直してこちらに来る。



「リオーン!! 人間が、人間が来たぞ⁈ 大鬼姫様はいるか⁈」

「んだよ、うるせぇな。母様ならもう寝ちまってるよ。河童」

「だーかーらーよ!! 俺は河藤だっつってんだろが!! あと何年言わせんだよ!!…………まぁこの話はあとでするとして、大鬼姫様を起こせねぇか? 結構騒ぎになってんだよ。 他の妖怪たちも戸惑ってるしさ」



 こいつもたいがいうるせぇとは思う。けど里にはいまだに人間が怖いというやつや恨んでいるっていうやつらもいるわけで、できれば早めに対処しないと収拾がつかなくなる。かといって母様を起こしても悪いしな……


 自分の足をパンと叩いて立ち上がる。



「わーったよ。俺も行くから他の連中がちょっかいださねぇようにしろよ」



 河藤は俺の言葉に頷いてまたバタバタと走っていく。


 ついでにキースも泊りに来てることだからあいつも連れて行こうと思い振り返るともういた。キースもここ数年でかなり成長している。あのおどおどがなくなったのは惜しい。



「若様、行くなら僕も行きます」

「おう、行こうぜ」



 キースが持ってきてくれた羽織を着て、行こうとするとシオンが俺にしがみつく。



「おとーしゃま、わたしもいきましゅ!」

「鬼姫様はダメですよ。危険ですから」

「好きにさせろよ。なんかあれば俺も夜李もいるし、大丈夫だろ」



 そう言って俺は里の入り口へと向かうとシオンもそれにくっついていくように走ってくる。


 慌ててキースが追いかけようとしたが、諦めた顔をしてため息をつく。そんな様子を夜李は”カッカッカッ”と笑いながら見送る。



「本当に変わったな」

「? 何がですか? 僕は苦労ばっかですけど……」

「まぁそれもあるが、俺からしたら一瞬の時間だったが昔はシオンと同じくらいガキで弱かったリオンが気が付けば俺と同じ目線で俺と酒飲むくらいでかくなって、いつか力も追い越されそうで、結構、俺はハラハラしてんだからな」

「夜李さんも変わったと思いますよ。特に大鬼姫様と一緒の時とか以外でも笑うようになったじゃないですか」

「それは褒め言葉か?」



 夜李は酒を飲みながら”ところでお前はいかないのか?”と聞くとキースは慌てて”あ!”と言いながら草履もちゃんと履かないで里の入り口まで走って向かう。


 里の入口にリオンが到着するとそこには河藤が言っていた人間が二人いた。


 それは金髪の少女と、黒いマントとフードを被った人間だ。あれは見覚えがある気がする。その人間たちは特に武器を構えず両手を上げて無害を主張していた。



「お、おじ様、どうしましょう。これ入国させてもらえますかね?」

「黙ってたら里長が出てくるだろ。それまではこのままだ」

「も、元々はおじ様が結界を強行突破しなかったら、こうして怪しまれなかったと思いますぅ……」

「すまん、つい癖で」

「もお~……」



 ……やっぱりあの黒いのは知ってる。あいつらと途中から一緒にいたやつだ。



「おい、お前ら下がってろ」



 シオンを抱きかかえながら、他の妖怪たちを下げる。ゆっくりとその人間に近づくと俺はにかっと笑う。



「はじめまして、俺は鬼月リオンだ。滞在すんなら喜んで歓迎するぜ」

「っ! はい! ありがとうございます! 私は、アティ・アウロラフラムといいます!」



 嬉しそうに笑う綺麗な金髪の少女はにっこりと笑う。


 その姿はまるでアッシュを見ているようだった。

妖怪の里、お話はこれで終わりです。次回、新章に入ります。


幼女は可愛いですね。

そして今回はリリィが中盤頑張ってくれました。本当は元々出るのはノアのみでしたが非戦闘になってしまったのでリリィに活躍してもらいました。


ありがとう、リリィ

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