表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第七章 神竜の住みし谷へ
83/211

誘拐事件簿1

 妖怪の里を出て三日経ったころ。アッシュたちは新たな街へと到着していた……のだが、ある事件が起きてしまっていた。


 その為、アッシュとエドワード、そして何故かマカオも一緒に街外れの廃れた屋敷にいた。


 三人の先頭にいたアッシュは扉をノックする。すると中からは厳つい目つきの男性が現れると、三人を見て眉間にしわを寄せる。



「あん?なんだ()()()()たち。」

「あら? ごめんなさい。てっきり無人かと思ってました」

「わりぃがここは俺たちの縄張りなんでね。何の用だ?」

「はい、実は道に迷ってしまいましてね……。もしよろしければ一晩泊めて下さらない?」



 まるで女性のような声音で喋るアッシュはにっこりと笑う。いつもと違う話し方と髪型をしてるおり、仕草も女性のそのものでぱっと見は完全に女性だ。


 そんなアッシュの後ろでエドワードは苦笑いしながら彼の背中に隠れていた。



(くそ……。なんでこんなことに……)



 嘆くエドワードだが、こうなってしまったのは約2時間前に遡る。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 辿り着いた新しい街に到着して時の事。アッシュたちは宿屋に到着してからは自由行動をしていた。

 アッシュは一応冒険者ギルドにも登録をしており、魔獣や魔物、賊の討伐の依頼をこなして稼いできてくれる。そこそこ高いもの選んでくるが、もちろんアッシュに頼りっぱなしではなく、エドワードたちもそれぞれ金策をしている。


 アッシュとユキは冒険者ギルドへ。

 エドワードは薬剤師の資格があるのでそれで薬を作って売っている。その人に合うものを調合するので割と人気だ。

 ノアは不要なものを整理してそれを言い値で売る。たまにノアがぼったくろうとするのでエドワードが止めたりと苦労しているらしい。

 アリスとリリィは占い相談所のようなものを宿屋の一角を借りてしている。彼女の場合、心を読む力があるのでドンピシャに当てて話すため、お客さんからは結構好評だ。主に恋愛相談で。ただしリリィは護衛なので見ているだけ。



「じゃあエドワード、僕はギルドで依頼を受けてくるね」

「あぁ、迷うなよ」

「あはは、大丈夫大丈夫。ちょっと道に迷っても遅くなるだけだからさ」

「やめてくれ。迷ったら探すのはこっちだぞ。……ユキ、お前も後でギルド行くんだろ? 一緒に行ってくれ。仕分けは、あと私とノアでする」



 不要なものを整理していたユキにそういうと、ノアは露骨に嫌そうな顔をして”えー!俺らだけですんの⁈”というので”そうだ。不服か?”といいながらエドワードも仕分けに参加する。



「不服じゃねぇけどよぉ、これ仕分け終わった後、非力な俺らで持っていけんの?」

「やかましい。そもそもお前が山賊どもから奪ったものが大半だろうが。あとお前、断捨離苦手だろう。これもいらない。これも、これも」

「あ~~っ! それはいるいる! 何かで使えるかも知んねぇだろ!」

「いらん」



 そう言って売る用の箱に投げていく。本人が断言して大事なもの以外のもしかしたら使うは信用ならない。ノアの反応を見ながら仕分けをしていく。



「では僕とアッシュは行ってきますね」

「二人とも頑張ってねー」

「あぁ、行ってらっしゃい」



 二人を見送って仕分けを再開する。


 その間に注文していた料理がきたようだった。ここの宿屋は注文したらわざわざ持ってきてくれる仕組みのようで手間が省けて楽だ。



「あら♡ 見たことあるお顔と思ったらエドちゃんにノアちゃんじゃない!」



 聞き覚えのある声がして顔を上げると以前会ったマカオがいた。彼……彼女の方がいいのだろうか、マカオが持っていたものを私たちの前に置く。頼んでいた料理だが、これは作ったのはこいつなのか?


 そう思い、マカオに視線を向けると前回の全身ピンクの服では無い、料理服を身にまとっていた。相変わらず顔は濃い。

 マカオの方を見ながらノアはうわっと言うような顔をする。



「お前、なんでここにいんの?」

「あらやだぁ、あたしに会えてそんなに嬉しいの? やだもぉん! 照れちゃうじゃな〜い♡」

「人の話聞けよ、こいつ話通じねぇのまじ嫌だ!」

「まぁノア落ち着け。この料理はお前が作ったのか?」

「あら、そうよ」



 そう言ってマカオはもうひとつノアの分を置く。その格好をしてるから恐らくそうだとは思うが、少々意外だった。

 エドワードは目の前に置かれているビーフシチューを掬い、食べる。

 ……うん、美味い。



「美味しいな」

「あらありがとん♡」

「食べたらこいつみたいになるとかない? 大丈夫だよな?!」

「お前は1度失礼なことを言わないと気がすまんのか」

「あたし、そういうノアちゃんのところ好きよん♡」

「お前も褒めるな」



 持ってきてもらった料理を食べながらアリスとリリィの方を見る。何やら誰かと話をしているようだが……。今のところ敵意は感じない、と思う。占い相談してるから変な動きがあれば引き離そう。



「ところで今日はアッちゃんは?」

「今は冒険者ギルドに行っている。しばらくしたら戻るだろ。ところでお前は何してるんだ?」

「見ての通りここの料理バイトよん♡ 明日までここで働いてるから何か食べたいものあればなぁ〜んでも作っちゃうわ♡」

「へぇ、なんでもな。レパートリー多いんだな」

「こう見えてあるところでは料理長してたのよん♡」

「ふぅん」



 こいつを雇っていたところも凄いが、料理の腕前は思った以上にあるようだ。マカオは”じゃ、もう少ししたら仕事終わるからまたね♡”と言って厨房に戻っていく。


 残りのビーフシチューを食べているとアリスがこっちを見て手を振る。


 なんだろうと思いながら手を振ると、何故か席を立って、先程まで話をしていた男たちについて行った。様子が少し気になったがなんだろうか……。匙を口に運んで止まる。先程のアリスに違和感が……。


 …………ん? あいつどこに行く気だ?


 もう一度アリスの方を見たが居ない。リリィも一緒だからそこら辺のゴロツキならいいだろうが……。大丈夫なんだろか。


 そう心配していると、ようやく荷物整理を終えたノアが”終わった〜。よーし! 売りに行くぜぇ!”と息巻いて不要なものを担いで売りに出ていく。


 一人残されたエドワードは手持ちの薬品を取り出して調合をしようとすると、カタンッと隣に誰かが座る。誰かと見るとアッシュが戻ってきていた。



「ん、おかえり。いい依頼はあったのか?」

「うん、一応。この辺りで誘拐事件が多発してるそうだからその依頼を受けたんだよ。女性だけを狙う悪質なやつらなんだってさ」

「ここ1週間で20件以上発生してるようなので、僕たちで探してみようということです」

「へー。特徴とかは聞いてるのか?」



 この辺りで誘拐ねぇ。賊絡みだろうが、こんな街中でよくやるもんだ。


 そう感心しながらアッシュが手配書を取り出す。



「ん?こいつら…………あぁっ?!」



 今度はエドワードが手配書を持って立ち上がりながら驚く。急に立ち上がったエドワードに驚きながらもアッシュは首を傾げながら問う。



「ど、どうしたの?」

「あ、アリス、こいつについて行ってる……」

「えぇ?! い、いつ?!」

「い、いまさっきだ!」

「えっ!本当?!」



 アッシュがそう言いながら炎を取り出してアリスたちの気配を辿る。だがアッシュは眉間にシワを寄せて唸る。



「……うぅん、もう範囲外だ……。方角は分かるけどアリスたちのところに飛べない距離だよ、もう」

「…………」



 エドワードは頭を抱えて再度席に落ちるように座る。


 ついて行きそうになってる段階で一旦止めて置けば良かったと後悔していると、先程まで厨房に戻ったマカオがこちらに来た。



「あらやっだ〜ん!アッちゃんじゃなぁい♡」

「ちょっと今君に構ってる暇ないだけど」

「あらぁ、いつになく不機嫌ねぇ」

「…………」



 睨むアッシュにマカオは変わらずくねくねとして動じない。


 一応、方向はわかる。強行突破で言ってもいいけど規模がわからない。かなり狡猾な連中もいたりする。奇襲や襲撃があると、商品である攫った人をまた別に連れ出すか、バレた段階で皆殺しにしてきたパターンもある。

 リリィがいるから簡単にはやられないだろうけど、できれば早めに助け出したい。さて、どうするか……。


 悩んでるアッシュにマカオがエドワードにこっそりと聞きに行く。



「ちょっとちょっと~ん、何かあったのん?」

「アリスたちが攫われた。これなんだが」

「あ~ん、これねぇん。…………あらあら、アッちゃん簡単な方法あるじゃな~い」

「ん? 何かあるの?」

「レイちゃん直伝の、あ・れ、があるじゃない♡」

「? …………あぁ、あれかぁ。確かに犯人もそれで狙ってるからありではあるかな」



 アッシュとマカオの話についていけないエドワードとユキは顔を見合わせる。何かいい手があるのだろうかと考えているとマカオは何かを取り出したかと思えば化粧道具を取り出してくる。



「化粧道具を取り出してどうするんだ?」

「ねぇ、エドワード」

「なんだ?」



 アッシュが足を組みながらエドワードの髪に触れる。にっこりと笑い、首を軽く傾げる。



「僕と一緒に女の子になって」

「…………………………は、はあああ⁈」



 アッシュの言葉にガタンッと席を立ちながらエドワードは叫ぶ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ