妖怪祭:最終決戦2
炎がおさまると、倒れたままのアッシュが起き上がる。夜李は再度串刺しにしようと黒い棒を生成したが、様子がおかしい。
それはヨロヨロと立ち上がり、ニヤリと口元が歪む。
なんだ?と思っていると夜李に強い衝撃が襲う。
「がぁっ?!」
衝撃とともに吹っ飛ぶ。
その衝撃の正体のものはあの不敵な笑みを天に仰ぎながら高らかに嗤う。
『クハッ アハハハハハハハハハハハハハハハッ!! 嗚呼、身体だぁ。僕の身体……。アハッ、生身はいい!! アハッハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
狂ったように嗤うアッシュは刺さっていた棒に触れるとサラサラと消えていく。刺さっていた棒は全て灰となって消えてしまい、傷口は何も無かったかのように治っていた。
吹っ飛んだ夜李は壁まで飛ばされ、瓦礫に埋もれ、ガラガラと音を立てて起き上がる。
「ゲホッゲホッ!! ……なんだアイツ、ますます化け物だな……っ?!」
顔を上げると目の前にアッシュが立っていた。その姿は髪は真っ白になっており、瞳は瑠璃色が色濃く出ており、蒼い炎を纏っていた。アッシュはそのまま夜李の髪を掴み、無理矢理立たせる。
「ぐっ?!」
『痛みを……』
夜李の腹に容赦なく蹴りを入れる。
「がっ――ぁ?!」
『苦しみを……』
さらにそのまま1度手を放して首を掴み壁に思いっきりぶつける。手を放すと夜李は噎せていた。その姿をどうも面白いのだろうか、笑みを崩さないアッシュは彼を見下ろす。
『どんなに嘆いてもいい、君の全てを僕が壊してあげよう』
そういった彼は不気味な高笑いを会場に響きわたらせる。
観客席にいたアリスは絶句していた。あれは覚醒した時の姿?でも、響き渡る彼の声は今までとは違う。あんな笑い方をする人じゃない。あんな顔をするような人じゃないのに……!
ここから見るだけでも容赦なく夜李を痛めつけていた。何度も蹴り、何度も魔法で攻撃をしていく。
ハッとアリスはグレンの方を見る。
「ぐ、グレン!あれなに?! わ、私、あんなアッシュ見た事な――っ!」
アリスの言葉が止まる。何故ならグレンも理解してない様子だったからだ。
「わ、私も分からない。あんなのは私も知らない……!」
「グレンが知らないって……。アッシュどうしちゃっ――」
「アリス、グレン!! 危ない!!」
戸惑っているアリスとグレンの腕をエドワードが引っ張る。先程までいた場所にドンッ!!という衝撃音と共に何かがこちらへ飛んできたのだ。
飛んできたものを確認すると、血塗れになっている夜李だった。
「お、おい!大丈夫か?!」
エドワードが夜李の元へと寄る。息は絶え絶えで、傷が酷い。すぐに応急処置をしようとしたが、背後に強い威圧を感じてしまう。
恐怖しながら振り向くと、真っ白な髪を靡かせ、両手は紅く血に染ってる、アッシュがそこにいた。
そんなアッシュの姿にアリスは声を震わせながら近寄る。
「あ、アッシュ……?アッシュ、だよね?そうだよね……?」
『ん?あぁ、君かァ、君。そう。僕はアッシュさぁ。他に、誰に見えるんだい?』
「……っ」
そうは見えない。アッシュはそんな顔を私たちに向けたことがない……。そのままアリスから夜李に視線をかえて、そちらに歩く。
アリスは慌てて夜李の前に出て両手を広げる。
「よ、夜雀はもう戦えないわ!け、決着は着いたでしょ?!」
『アハッ 何言ってるんだい?』
夜李を見ていた目はゆっくりとアリスを見る。何も映してないと言った方が似合う程のどす黒くにごった瑠璃色の瞳で見られ、アリスはビクッとする。
『まだ、死んでないだろ?だから、まだ、終わってないんだよ』
そう言ってアッシュは指をパチンと鳴らす。鳴らした瞬間グレンはハッとして、急いでリリィたち含めて防御結界を周囲に張って、アリスとエドワード、倒れてる夜李を自分の元に引き寄せて同様に防御結界を瞬時に展開させる。
その刹那、激しくけたたましい爆発音と目が眩むほどの光、アリスたちは死んだのではないかと覚悟をしていたが、目を開くと、グレンが前に出て魔法を何重にも張って守ってくれていた。
周囲を見渡すと、グレンが張ってくれていた防御結界以外の場所は会場全体に何か大きなものが落ちてきたのではないかと思うほど、何も無くなっていた。
残っていたのは誰かがいたのであろう、血溜まりだけ。
「な、なによ、これ……」
「ぐっ……!」
魔法の反動だろうか。グレンは呻き声を出して、膝をつく。アリスはグレンの元に駆け寄るが息を切らしながらも、アリスを自分より前には出そうとしないように手で押さえる。
「前に、出るな。絶対に……っ」
「で、でも、でも!!」
泣きそうな顔をしてるアリス見るほど余裕が今はグレンにはないようだ。
ゆっくりと魔法を行使したアッシュが降りてくる。
『なぁんだ。生きてたか。……あれ?』
アッシュはグレンを見るとグイッと顔を彼に近付ける。
『●●●●●?嗚呼!●●●●●じゃないか!!久しぶりだねぇ!元気にしていたかい?』
「? な、何を、言っている?」
恐らく名前を呼んだのだろう。だがその部分は聞き取れない。だが興奮気味にアッシュはグレンの肩を抱きしめながら嬉しそうに嗤う。
『嗚呼、●●●●●!本当にいつぶりなのだろうね!』
「…………?」
『……あれ、●●●●●?』
「……私は、グレンだ。お前が言うその名は聞き取れない。お前はなんだ?アッシュじゃないだろ」
『………………』
アッシュはまた酷く暗い瞳に変わる。そのままグレンから身体を放して首を傾げる。
『君は●●●●●だよ? どうしたの?●●●●●。もしかして忘れてしまったのかい?』
「……話にならない。おい。お前さっさとアッシュに身体を返せ」
『…………そっか……。君も忘れてしまったんだね。でも大丈夫だよ。安心して』
「何を――っ?!」
ニッコリと笑うアッシュはおもむろに腕をグレンに押し込む。ズブリと突き刺さってぐちゃぐちゃと何かを弄り、探すように触れる。
魔力回路に触れてる……?いや、違う、もっと、触れたら、まずい……!!
グレンの顔が青ざめる。それを見てもアッシュは探るようにぐちゃぐちゃと何かに触れた。
ビクッとグレンの身体が跳ねる。
「はっ……あ”っ?!」
『アハッ 嗚呼、君の魂はよく見える。昔と変わらず、とっても綺麗だね。大丈夫、思い出させてあげるから、さ』
「うぐっ…ぁ……?! や、めろ!!」
バシンッとアッシュの腕を弾いて距離を取り、息を切らせながらグレンは剣を顕現させて睨みつける。
『……酷いよ……。君に思い出して欲しいだけなのに』
悲しそうな顔をするこいつに何故か心が痛む。こいつのことは知らない。なのに、こいつはいったいなんなんだ……?!
それでもグレンに手を伸ばそうとするが、アリスが前に出てアッシュにしがみつく。
「お、おねが、お願い!! もう、やめて……!! アッシュを返して!!」
『……君、邪魔だよ……。神子だからって言っても、君は僕の主でもなんでもないくせに』
「っ⁈」
『目障りだ』
アッシュはアリスの首を掴み、持ち上げる。首が締まるようになってしまい、アリスは小さく呻く。グレンが急いで止めようとするとーー
『おや?』
アッシュの前にリリィやノア、エドワードも出て、アリスから手を放させようとしがみつく。いつもと様子だが、だけどこれ以上のことはさせてはいけない。
もし戻ってきたときに、彼は去ることを決断してしまう。
「おい、バカアッシュ!! アリスが泣いているんだぞ⁈ いい加減、目を覚ませ!!」
「おいこら!! アッシュ!! あんだけ余裕で勝てるみたいな啖呵を切っておいてなんつーざまだっての!!」
「アッシュ!! アリスを殺したらお前は絶対に戻ってこれなくなる!! 起きろ!!」
『君ら、何言ってーーっ!』
ドスンッと今度はアッシュの背中からグレンは腕を突っ込む。驚いた顔でアッシュはグレンの方を振り向く。
先程の感覚は恐らく魂に直接干渉しているはずだ。だったらーー
「アッシュ、お前!! 自分の大事な者を壊す気か⁈ 還ってこい!!」
『あぐ、ぁっ⁈ き、君が、ぼく、を、拒絶、るすの……?』
「私はお前なんぞ知るものか!! アッシュを返せ!!」
『…………そう、か……きみ、も…………』
何か言いたげにしてアッシュは糸が切れたかのように崩れ、アリスも解放されて大きく咳き込む。
全員緊張の糸が切れたのか、その場にへたり込むとバタバタと司会者が現れて、こちらを見る。
「え、えーっと決着はついた……感じですかね?」
マイクをまだ電源つけてないのかアナウンス越しではなく普通に話しかけてきた。
「い、一部始終は見てましたので、先に気絶は夜雀のようですな……では!」
そう言ってマイクのスイッチを入れる。
こんな状況でもまだ続ける精神は本当に感心するほどだ。
《決着!! 両者ともに気絶により戦闘不能!審判判断で先に気絶したのは夜雀のため、勝者はーー鬼一族です!!》
鳴り響く勝利報告。だが会場は先程までの賑やかさはない。グレンが咄嗟に会場中に結界を張ったが、間に合わなかったところはあす。その為全員恐怖してる状態だ。むしろこの司会者の図太い精神がすごい。
最終の閉会式と表彰状授与が行われた。出場していたアッシュは目を覚まさないため、代わりにリオンとリンが出席をし、妖怪祭りは、閉幕となった。




