表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第六章 妖怪の里
63/212

妖怪祭:予選1

 祭当日。


 祭りなのでかなり朝から賑やかだ。普通の人のところではないくらい騒がしいしなんなら人が多いくて騒がしいとも言える。不参加組者は高いところから観戦できるとのことで早めにきては場所を確保しようと思ったところ、前回の優勝ということもあり、かなりの特等席に案内されてしまった。


 松葉杖を着いたリンが席に着きながら、後ろで同行していたエドワードに向けて話しかける。



「ここなら全体的に見れますね」

「あぁ、確かに……にしても……、リリィはとノア、どこに行ったんだ?」

「あー……その、実はですね……」



 ユキが視線を泳がせる。エドワードは少し嫌な予感がしてしまう。モゴモゴとしてるユキに顔を近づけてジーッと睨む。

 そのエドワードに無言の圧力に負けて、ちょっとずつ言い始める。



「じ、実はーー」



 ところ変わって、控室。アリスとアッシュ、リオンそして何故かノアとリリィ、先日いた猫又の子も一緒にいた。

 リオンが呆れた顔で三人を見ているとノアは疲れた顔でいるがリリィはそのノアと猫又の子を掴んでいるところを見ると連れてこられたのだろうか……。



「おれは一応、母様の代わりに出ることになったけどさ、何であんたらもいんの?」

「お、俺は巻き込まれただけなんだけど……」

「アリスが出るなら私もやる。だからこの猫も連れてきた」

「ぼくはありがたいですけど……」



 おどおどしてる猫又の子の首根っこを放してあげると、アリスはリリィの両肩に手をおいて目を輝かせてにっこりと笑う。



「リリィ!一緒にやっちゃうわよ!」

「わかった」



 アリスに褒めてもらえてると思っているリリィ。ようやく手を放してもらったノアはアッシュとリオンのほうへ行き、アッシュに半べそかきながらしがみつく。



「アッシュー!俺マジで巻き込まれただけなんだけど!どうしたらいいんだよ?!」

「あはは、まぁエントリーしちゃったんだから仕方ないよ。応援してるからさ」

「アッシュも巻き込まれたって聞いてんのに何でお前はそんな前向きなの?! 俺は戦闘マジでポンコツなんだって!!」

「大丈夫大丈夫、やられる前にやったらいいんだって」

「お前は強いからできるけど俺はそうじゃないのって!! 隠密とか偵察とか!! そういうのは得意けど戦闘マジ勘弁してよ!!」



 ノアの口からハーフフットと種族名言わないだけ偉いと思う。周りにも他の妖怪の目もあるからだろうけど。


 項垂れるノアにアッシュはフォローになってないフォローをするもノアは気持ち的に玉砕されていると思う。そんな二人のやり取りにリオンは少しノアに気の毒に思っていると、リオンの近くに誰かが話かけてきた。



「リオン君? リオン君じゃないか」

「ん?あ!御狐神(みけつかみ)さん!」

「久方ぶりだな。リンさんは?」



 御狐神と呼ばれた狐の尻尾が9つある妖怪が話しかけてきた。呼ばれたリオンは御狐神の尻尾に抱きつく。かなりモフモフした尻尾だが引っ付かれても嫌そうな顔をせずにニコニコしている。彼は尻尾にリオンをつけたまま、一緒にいたアッシュに目線を合わせる。目が合ったアッシュにはなぜか睨みつけてくる。



「貴様がリンさんの代わりに参加してるよそ者だな」

「そうだよ。君は?」

「俺は妖狐の御狐神だ。……貴様みたいなよそ者風情がリンさんの代わりになるとは思わないけど。リンさんとの再戦を楽しみにしていたのに残念だ」

「あはは、そうだね。リンはとっても強いからね。僕なんてまだまださ」



 謙遜するようなタイプではないけどアッシュは笑いながら言う姿が気に食わないのだろう。御狐神は睨みながらリオンの頭を撫でる。撫でながらも、アリスにもその睨む視線を向けようとしていた。だが、その前にアッシュがアリスの前に立って視線を遮る。アッシュは口元が笑ったままだが、目は笑っていなかった。



「用は済んだなら、向こうに行きなよ。狐くん」

「え、ちょっと何よ?アッシュ」

「うぅん、狐くんがね、力量も理解しないでトラの尻尾を踏みそうになってるから追い払おうとしているだけだよ」

「……なんだと?」



 御狐神がアッシュに掴みかかろうとするとーー



 《お待たせいたしました。これより第168回妖怪祭の開催されます。エントリーされた方は指定の場所へとお集まりください》



 そんなアナウンスが繰り返し流れる。御狐神は掴みかかろうとした手をしまい、尻尾にいたリオンを降ろす。



「祭の間、この覇権争いになる。死人が出ることは当たり前だ。たとえ事故で死んだり、”うっかり”殺してしまっても罪にはならない。背後には注意するんだな。よそ者」



 再度アッシュを睨みながら、御狐神は部屋を出る。

 出ていったあと、リオンはあわわとしながらアッシュの手を掴む。



「お、おい。あれ大丈夫なのかよ?御狐神さん結構強いんだぞ」

「大丈夫だよ。あれは僕からしたらそんなに脅威ではないからね。さ、みんな早く行こうか。遅れて失格だなんて面白くはないからさ」

「よーし!行くぞー!」



 元気なアリスはリリィを引き連れて扉を勢いよく出る。リリィの両腕にはまだ半べそのノアと猫又の子を掴んでいってた。

 置いて行かれたアッシュとリオンは彼女たちの後ろを追うように向かった。



 ーーーーーーーーーーーーー



 会場に向かうと入る際に赤い勾玉が70個の入った袋とAと書かれた紙を渡されていた。


 会場を見渡せば先ほどの御狐神やひときわ目立つ大きな妖怪など本当にいろんな種類の妖怪がいるのだと改めて思う。エドワードが事前に妖怪の種類や能力なども確認してくれているおかげである程度ならどんな妖怪かわかる。


 要注意の妖怪はアリスにも伝えてるし、後でリリィとノアたちにも伝えておかないと。


 それにしてもよそ者扱いとはいえ、かなり他の妖怪からの視線が痛い気がするがそんなことはアリスは関係ないと言わんばかりにリオンと一緒に次の指示を待っていた。そういえば二人が見当たらないということはリリィたちはまた違うところにいるのだろうか。


 少し待っていると、再度先程の放送が流れる。



 《お集まりいただきました皆様、お待たせいたしました。予選試合を開催します。ルールはいたって簡単です。種族の数が多いのでAグループとBグループに分かれていただきす。そして今、お手元にございます勾玉を100個になるように相手から奪うもよし、交渉するのもよし。どんな手を使ってでも集めていただきます。ご存じの通り我々は妖怪です。強さを示して勝利を掴んでください。なお、勾玉の数は前回の祭りの結果をもとに皆様にお渡ししております。最大70から最小は5つです。もし手持ちが0になったとしても失格にはなりません。さぁ次の試合に進められるのは先着30組までが上限となりますので存分に蹴落としながら奪い合ってください!!》



 なんとも分かりやすく、物騒な内容だろうか。血の気の多いともとれるしそれに前回の祭りの結果ということはもちろんの事、全妖怪たちはこちらにギラギラとした目をしている。今回は優勝したリンではなく、素性の知らない鬼の妖怪と小鬼だ。格好の獲物と思っているだろう。


 観戦席にいるエドワードはユキにこっぴどく怒ってからその様子を見降ろしていた。アッシュとアリスから預かってる黒猫と炎の白猫を足の上に置いて撫でている。



「おい、リン。この勾玉集めは前回もしたのか?」

「いえ、前回は数はそんなに多くなかったのでバトルロワイアルしてました。見事な大乱闘でしたよ」

「大乱闘って……。じゃあ毎回違うのか?」

「えぇ、二回戦目も多分私の知らない種目になるかと思います。にしても前回の結果で勾玉の数が違うのは、相当な嫌がらせに近いですね。今回の主催者は少々陰湿かもです」

「そうなのか?優秀な成績だからこその優遇化と思ったが……」

「外はわからないですが、私たち妖怪は下剋上上等なものが多く、隙があれば例え相手が強者でも隙さえ与えてしまえば容赦なく蹴落としに来ます。強者ゆえに怠慢になる妖怪もいますので、そう考えると力が強くてもあまり関係はないです。それにどの種族がどれだけ持ってるか、いい獲物はどれかというのはみんなわかって動きでするでしょうからね」



 そういうリンの視線の先を見ると、確かに一番持ってるのは前回優勝してる鬼一族になる。よく見れば勾玉の袋を持ってるアッシュとアリスたちに視線が集中している。今いるのは優勝した鬼姫ではないものだから格好の獲物に見えるのだろう。


 だが、知らないからこそ、侮りすぎだと思う。



「ま、ほぼほぼ乱闘な感じだろうけどどうにかなるだろ」

「ふふ、そうですね。アッシュさんとてもお強かったので」



 にっこりとリンが笑うと同時に開始のゴングが鳴り響く。


 開始の合図とともにその場にいた半数以上の妖怪がアッシュたちに向かってきた。あまりの数にリオンは怯むがアリスは余裕な顔で杖をカンッと鳴らして結界を張る。



「アッシュ。いける?」

「もちろん。すぐ終わるよ」



 事前の打ち合わせでもしこういう時はアリスが結界を張り、アッシュが一掃する。その方がアッシュも動きやすいし、結界内からアリスも援護ができるので一番いい効率的なやり方だ。


 アッシュは両手に木刀を生成して群れの中に突っ込む。木刀はうっかり殺さないようにするためではあるが木刀もいらなかったかもしれない。大群で押し寄せてきた妖怪たちをものの15分で片付けてしまう。


 片付け終えたアッシュは自身にの着物についた埃を払いながら、いつも持っている懐中時計で時間を確認する。



「うわ、15分もかかってしまった……この数くらいなら前は5分くらいだったのになぁ」

「アッシュお疲れー!見てみて!集まったわよ!」



 勾玉が大量に入った袋を片手にアリスが手を振ってくる。彼女に近づいて袋を確認すると確かにかなりの数だ。元の数を合わせてもオーバー以上なくらいだ。まとめてきてくれたおかげで動き回らなくてよかったと思う。


 勾玉の數を確認して、それを再度受付に持っていくとかなり驚かれた。



 《ななな、なーんとぉ!Aグループ早々に鬼一族が一番乗りです!あれだけの数、よくぞ突破しました!》



 なんてアナウンスが流れる。こんな感じに知らせていくのかと思っていると、先程の妖狐、御狐神とアリスが目があったようで、”どうよぉ~”と言わんばかりのドヤ顔向けていた。聞こえはしないが舌打ちをしてるような悔しそうな表情でいる。まぁ格下と思っていたのがそうでないと思い知ると悔しくなってしまうのだろう。


 余った勾玉は置いて、アッシュたちは一番のりでクリアしたため、案内で一旦会場を離れる。同じように観覧席に行くこともできるようなのでエドワードのたちがいる席まで向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ