雪の国:後日談
アリスお姉様たちが出立して幾年の月日が流れた。
前王である父が引退して、すっかり大人になってしまった、私、ガーネットが女王として君臨した。はじめは緊張と不安でいっぱいだったが、父が王としての務めを間近で見せてもらいっていたからかすぐに女王としての振る舞いや業務も問題なくこなせている。
あの時は国を立て直すために父も残っていた大臣たちもかなり苦労していたのをよく覚えている。
私もどうにか手伝えるところは目一杯した。サッピルスと一緒に街まで降りて国民の声を聴き、それを父のところまで持っていって改善策を立てたりと目まぐるしい日々だった。
それが今ではかつての活気と美しさをこの国は取り戻すことができ、それと同時に父は引退し、私が女王として今がある。
「あの時、あの日の出来事は今でも忘れられませんね。サッピルス」
「えぇ、女王様」
サッピルスは私の宰相としてこうして今も一緒にいてくれている。たまにオパールの仕事ももちろんしながら、部下の方々を鍛え上げているそう。鬼の形相でする姿はかなり怖がられているらしい。
「オパールの方々は最近はどうですか?」
「まだまだですね。グレン殿にでも勝てるようになるまで鍛え上げていくつもりですが、程遠いです」
「グレン様はお強いですからね……。なかなか厳しい道のりでしょうが程々にしてあげてくださいね」
「ふふ、できるだけ善処致します」
これは多分より一層厳しくさせてしまったかもしれない。部下の方々、申し訳ございません……。
「さて、サッピルス。街に行きましょう。いつもの偵察です」
「かしこまりました」
女王になってからもこれは続けている。お城にずっといても届かない声もたくさんあった。父にお伝えする時にそれを痛感して以来、自分の足、もっと裏の事に関してはサッピルスと協力して一つでも多くの声を拾えるようにしている。
いつもの姿のまま、街に降りると必ず行くところがある。それはアリスお姉様たちの銅像にお祈りをしに行くことだ。この国ではあの方々は英雄に等しいため、あの時にお姉様にお願いして建てさせてもらった。
ただグレン様には断られてしまいましたが……。
「ここにグレン様の像もおきたかったんですけどね……」
建てたいことをお願いしたけど、絶対に嫌だと断られてしまった。もっとお願いしたらよかったと少し後悔している。ここにあれば毎日でもお祈りをしたいくらいあの方には感謝してもしきれない。
あの時、助けていただいたとき、どんなに救われたのか……。そして私の初恋のお方だ……。
なんて思い出に耽ていると後ろから懐かしい声が聞こえてきた。
「おい、アティ、引っ張るな」
「確かこのあたりって聞いて……あ!ほらありましたよ!お父さんたちの銅像!」
「ん? うわ……。やはり私は作らせなくて正解だったな……」
「あはは、おじさま見た目ずっとそのままですからねぇ。ある意味目立ちそうです」
「公開処刑もいいところだ」
そんな声が聞こえて振り返る。
あの時助けてくれた懐かしきお方。そしてその方の隣にいらっしゃっていたのは私と同じ背丈の薄い黄色の髪、プラチナブロンド色の少女がいた。振り返ったことであのお方が私に気付いてくださった。
「ん? あ、ガーネットか?」
「はい、はい!お久しぶりです!」
「おじさまこの方は?」
「あ、申し遅れました。わたくし、この国の女王、ガーネット・スノーレインと申します」
挨拶をしながら改めて少女を見ると、あの時ご一緒に助けていただいたアッシュ様と瓜二つの少女。
「お初にお目にかかります。女王様、私はアティ・アウロラフラムと言います!」
にっこりと笑う少女の笑顔はなんとも優しく可愛らしいものだった。
雪の国お話はこれで終わりです。次回、新章に入ります。
……本当はエブリスタで書いたときと内容がだいぶ変わってしまいましたね。簡単に言うと雪の国、もっと平和でした。グレンもここまで予定はなかったけど満足してます。




