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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン
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雪の国:出国2

 翌日、日の出のほんの少し前の時間。まだみんなが寝ているが珍しくアリスが起きていた。

 ひょっこりと扉の隙間から出てきた、アリスはリリィと共にマイクの代わりに櫛を持って出てくる。



「おはようございますぅ~……寝起きドッキリのお時間でぇす……!!」



 小さく小声でそう言いながらこっそりと部屋の中に入っていく。中には二人以外がぐっすりと眠っていた。起こさないようにそっと部屋の中心に行くと、もう一人、アリスたちの後ろについてきている影があった。


 何故かマカオが一緒。アリスとマカオは少々悪そうな顔をしながら、その後ろにいたリリィは無表情でいろいろな小道具を持っている。

 ひそひそと話ながら、アリスはリリィが持ってる小道具を取り出す。



「まずは……、怒らなそうなアッシュからいきますかぁ~」

「あらいいねん~。あたしがしちゃうわ♡」

「シーっ……! 起きるかもだから静かにするのよ……!」



 そう言って小道具をマカオに渡して、アリスとリリィは身を潜めるように隠れる。おもちゃの釣り竿の先にはコンニャクを付けてソロ~ッとマカオが近寄ろうとすると、マカオの顔の横に何かビュッという音がなり通り過ぎた。


 アリスたちもそれに気付いて飛んで行った方を見ると、何故かナイフが天井に刺さっている。


 恐る恐る、マカオの方を再度、見るとアッシュが起き上がっており、マカオが持ってる釣り竿を掴んで、へし折った。


 顔を見ると暗くて見えにくいが、かなり怒ってる……と思う。



「……ねぇマカオ」

「あ、はい……」

「僕、前に言ったよね? あまり睡眠妨害されるの、嫌いだって……」

「そ、そんなこともあったわねぇん……」



 そのままマカオの胸ぐらを掴む。グイっと引き寄せて、いつもよりも怖い声音になって言い放つ。



「ねぇ、ミンチになってハンバーグになるのと、内臓剥ぎ取って丸焼きになるのと、どっちがいい……?」

「ど、どちらともいやかしらねぇ~……」



 ダラダラと汗を掻くマカオをしばらく睨んだ後、アッシュはまだ眠いのか目をしばしばさせながらそっと手を放す。

 が、声のトーンは変わらない。



「最悪、僕の睡眠は別にいいけど、エドワードたちの睡眠妨害したら……ほんと殺すよ」

「ひゃ、ひゃい……」



 そう言ってアッシュは再度、布団をかぶって眠りについた。ガタガタと震えながらマカオは急いでアリスたちのところに戻る。さすがのアリスたちも怖かったのか口を抑えて震えていた。


 なるべく小声でアリスとマカオは話す。



「ちょ、ちょっと!アッちゃんいつもあんな感じなの⁈」

「お、おかしいな……。普段あんな怒んないのになぁ~」

「マカオだからって可能性はあるけど……」



 そうボソッとリリィが呟く。

 そんな気はする。アリスはたまにこの寝起きドッキリをして遊んだりするが、今までアッシュは笑って許してくれてその後一緒に参加してくれていたからその流れかと思ったけどそうではないから心底驚いている。



「なるほど……、じゃあ一緒にしたらいけるかしら?」

「あたし、あの状態のアッちゃんにからかいに行く勇気ないわん……」

「わ、私もいるから大丈夫よ!」



 再度三人で作戦会議して再度開始することに。

 30分ほど経って、日が少しずつ見えてくるころでアリスが立ち上がって大きな声で起こす。



「おっはよー!みんなぁ!起きなさぁーい!」

「んん……、な、なんですか……?」

「まだ寝かせろよぉ~……」



 ユキとノアがのそのそと動いて寝ぼけながら時計を確認する。全然いつもまだ寝てる時間だったので再度布団にもぐりこんだ。


 エドワードも不機嫌そうな声で布団から出ずに言う。



「くそ眠いんだぞ……。いつも遅く起きるくせにふざけんな……」

「あら、二度寝してもいいわよ。マカオが添い寝してくれるから」



 そう言われるとバッと三人は起き上がった。そんなに嫌なのだろうか。マカオとの添い寝は……。

 アリスの前に出てきたマカオは可愛いレースのフリルがついた服でエドワードたちに近寄る。はっきり言って怖い。可愛い服で来ても元が怖くてむしろ近寄ってほしくないほど。


 くねくねと身をよじらせながら来る姿はホラーだ。



「そんなに嫌がらなくていいわよぉん? さ、包み込んで、あ・げ・る・わん♡」

「それ以上近寄ったら刻むぞ!」



 エドワードが剣を構えようとしたときにーー



「ぶえっふ⁈」



 まだ布団の中で寝ていたはずのアッシュの回し蹴りがマカオの顔面に当たり、ベランダまで吹っ飛んでいく。そのままアッシュは何事もなかったかのように再度布団に潜ってしまった。


 吹っ飛んで行ったマカオはしゃちほこみたいな格好になっている……。


 アリスは飛んで行ったマカオを見てから再度アッシュの方を見てから、今度はエドワードの方を見る。



「……仕方ないわ、エドワード、起こして」

「あの光景見て起こす気にはなれないんだが……?」

「だ、大丈夫よ。ほら、私やエドが今まで起こした時は蹴ったりしてこなかったし……」

「そ、そうか……」



 エドワードは恐る恐るアッシュの肩に触れて、軽くゆすりながら起こす。



「お、おいアッシュ。朝だぞ。起きろ」

「ん……? あぁエドワードか……。おはよう……」



 布団からもぞもぞとしながらアッシュがあくびをして目をこすりながら普通に起き上がったのにエドワードはホッとする。

 マカオの時は容赦なく蹴り飛ばしたのにと思っていたら普通に起きてきたのことに驚いていると、ベランダの方でまだしゃちほこになっているマカオにアッシュが気づく。



「あれ、マカオ。ベランダで何してるの?」

「お前が蹴り飛ばしたんだぞ」

「え、僕?」

「おま……、自覚ないのか?」

「ん~、なんか変な気配があったから蹴ったのは何となく覚えてるような、ないような。覚えてないかなぁ~」


(絶対にこの反応的にわざとな気がする……)



 若干エドワードは疑いの目をしながらアッシュを見るが彼の事なのでツッコむことはもうやめた。



 ーーーーーーーーーーーーー



 スノーレインでの最後の朝食を終えて、門の前まで行くとお忍び恰好をしたサッピルスとガーネット、王様もいた。早朝でほとんど人がいないため、外にはこの三人以外誰もいない状態だ。


 アリスはガーネットを見るやいなや、走って飛びつくように抱きしめる。



「ガーネット!お見送りに来てくれたの⁈」

「えへへ、もちろんですよ。アリスおねぇさまたちにはお世話になりましたから」

「ふふふー、ありがと」



 アリスがガーネットの頭を撫でくりまわす。アッシュたちも三人の元に行くと、サッピルスはアッシュの方を見てトンと肩を叩く。



「短い間ですが、姫様と王様を助けてくださりありがとうございます」

「僕が、というかグレンが基本してくれてたんだけどね。僕はサポートくらいだし」

魔力喰い(マジックイーター)を倒したのはアッシュ殿です。それにグレン殿も多勢に無勢だったのに押し返されかけて、なんなら言わなかったですけど殺気やばい人でしたから。あなたと姫様が来なかったら絶対に死んでいた気がします」

「……まぁグレンならありえそうだね……」



 頬を掻きながら当時の事思うと、確かに殺気はすごかった。だから炎を纏っていかないとこっちが切られる気がしてたほどだ。

 そんな話をしているとキョロキョロと王は誰かを探しているようだったので声をかける。



「どうしたの?」

「あ、いえ、グレン殿はどこかと……」

「あー、グレンは先に帰ったよ。元々僕たちの付き添いで来てくれていたからね」

「なるほど。お礼が言いたかったのですが、もしお会いした際はお伝えしてください」

「あはは、分かった伝えておくよ」



 グレンが帰ったのはアリスたちも残念そうにはしていた。一応また会えることを伝えるとアリスも嬉しそうにしていたからまた会った時はきっと飛びつくだろう。

 アリスとエドワードにはマナ溜まりでグレンと話たこともちゃんと伝えている。ずっと心配されていたけど、僕にとっても今回は胸のつっかえが一つ取れた気がする。


 アリスはガーネットとじゃれあいが満足いくまでしたのかホクホクとした顔で門の方まで行く。



「それじゃあまたね!王様も頑張んなさいよね!次来た時楽しみにしてるからー!」



 アリスは大きく手を振りながらジャンプをして叫ぶ。

 その声に答えるように王はにっこりと笑いながら手を振りながら見送ってくれる。


 あの王様がどこまで国を立て直すかはわからないが、あとはあの国の人たちに任せるしかない。それでも将来的には有望とは思う。ガーネットはひたむきな子であんなにも怖い思いしても立ち向かう勇気もある子だ。だからこそ女王として君臨できたあとが楽しみだ。



 しばらく歩いて、まだ一緒にくっついてきているマカオの後ろからアッシュは声をかける。



「君、何処までついてくる気なの?」

「あらやだ、離れがたい感じ? んも~嬉しいわねん♡」

「誰もそんなこと言ってないでしょ。一緒に出立してきてる意味も分かんない。王様とガーネットたちの顔見たかい?今まで知らない不審者くっついてきてることに三人とも固まっていたからね」



 そう、一瞬マカオの方ことを認識したときにビクっとしたけど僕らが普通にしていたので気にしないでいてくれていた。後ろにこんな人いたらそりゃあビックリするだろうし。少々ゲテモノを見るような目をしていたし……。


 アッシュがため息を吐くとマカオは”うふん!”と言いながらウィンクをしてくる。



「もう離れるわよ~ん。行き先が違うし、それにアッちゃんの元気な姿見て今回は満足してるしね」

「……アッちゃんはやめてって何度も言わせないでよね」

「うふふ~ん♡ あ、この前の話、忘れないでねん♡ アリスちゃ~~~~ん、またね~ん♡」

「あ、もう行っちゃうのね。マカオもまたね~」



 マカオは大きな身体でバウンドしながら彼はどこかに去っていく。


 どうやってあれはやってんだろうとアッシュは思ったがあのタイプは気にするだけ大変なので忘れておこうと思い、先へと進む。


 去っていくことを確認したエドワードはアッシュの隣に行き、軽く服を引っ張る。それに気付いたアッシュはエドワードの方を振り向く。



「どうしたの?エドワード」

「さっきマカオが言っていたこの前の話ってなんだ?」

「ん?あー、昨日ねマカオが帰る前に言ってたんだけど、”また近いうちに会ったら昔話をしながらお酒を飲もう”って言われたんだよ」

「酒?」

「そ。あんま僕は飲めないんだけどね。付き合い程度くらいしか飲めないし」

「そういえばあまりお前が飲んでるところ見たことないな」

「好んでは飲まないかな。アルコールの味ちょっと苦手だから」



 確かに基本、酒を飲んでるところを見たことがない。滞在期間中でも酒を飲むことはなくて水やジュースが多い。アリスやリリィたちはよく飲んではいるけども。かく言う私も飲めないわけではないが飲まないようにはしている。何故かアッシュに止められているからだ。


 酔っぱらうことはないとは思うんだがな……。


 考えているとアッシュとエドワードの間にアリスがジャンプしながら飛びつい来る。



「なになに~?お酒の話?次の街に着いたら飲みましょ!」

「僕は飲まないし、エドワードに飲ませないでよ。僕が後で大変なんだから」



 アッシュの言葉にアリスは”えへへ~”と笑いながら二人の間を通り抜けて走っていく。







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