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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン
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一掃作戦2

 長い夜が終わり、日が昇った翌朝。グレンの指示で各々行動を始める。それぞれチームに分かれて行動することになった。


 王のサポートをするアッシュとアリス、ユキ。そしてゴミ掃除として二つに分けてグレンとエドワード、もう片方はリリィ、ノア、オパールの部隊の三チームに分かれることになった。


 早朝の段階でグレンから宰相、全ての大臣、騎士含む全てを呼んでくるように言われていた。

 王の間に集められた家臣たちはざわざわとしている。アリスやアッシュ、ユキは一旦玉座の後ろに隠れていた。

 ひそひそと話をしながら、王が来るのを待っていた。



「私、あれの前に出ないといけないの⁈ 無理なんだけど!!」

「大丈夫、大丈夫。いつも通りほら横暴な感じーーでッ⁈」

「誰が横暴にいつもしてるのよ……」

「今も叩いたじゃん……」



 横暴という言葉に怒ったアリスはアッシュの背中を力いっぱい叩く。こけてしまわないようにバランスをとるが結構痛そうにするアッシュに横から突くのをやめないアリスの腕を掴み、ユキが制止させる。



「お二人とも、あまり大きな声で話すとここにいるのバレますよ」

「というかユキもなんでこっちなんだろ?」

「僕が聞きたいです……」



 本当はノアと一緒に行きたかったが、何故かこっちに行くように言われている。理由は、一応聞いてはいるができればしたくはない気持ちの方が強い。

 ここに置かれたのは闇魔法の一種である、精神魔法。これを使わなくていいなら、いいそうだが、今はアッシュは魔法がまだ使えないため、ユキがここに置かれたということだ。タイミングはアッシュが指示することに。



「精神魔法なんてあんま使ったことないんですけどね……」

「そう?昔は僕も使ってたよ」

「え、何に?」

「秘密」



 にっこりと笑うアッシュにこれ以上ツッコむのは野暮だと思って待っていると、ようやく王が来た。こっそり覗くと、王の隣にはガーネットも一緒に並んで来ている。本来王妃のいるはずの椅子にガーネットが座るとさらにざわつきが広がる。


 来たのと同時にアッシュたちも王座の後ろから姿を出す。


 アリスはいつも通りの姿だが、アッシュは白の燕尾服にユキは黒の燕尾服を身に纏っており、剣を腰に携えていた。素顔が見れないように認識阻害の魔法を付与した布作面(ふさくめん)をつけている。これで守護者と分かるが素性がばれない。


 たださえガーネットが現れてきたことでざわついているのに、さらにアリスたちが出たことで困惑しているようだった。



「皆の者静まれ!!」



 王が一喝する。静まったことを確認して王は再度口を開く。



「急な招集にもかかわらず全員集まってもらったのは他でもない。まずは行方不明になっていた我が娘、ガーネットが見つかった。これはここにいる、神子であるアリス様御一行のお力によるもの。主犯である王妃は王位継承権を持つものの殺害含め、即刻死罪、処刑となり、亡き者となっておる。そして、私の偽物を暴き、魔物を退治して下さった」



 そう、まずはガーネットの誘拐の件は元々王子や他の姫の殺害の罪もある為、死罪になって亡くなったことにした。偽物が王位で好き勝手していたことも話すことで向こうの反応によって敵なのかどうなのか見分けるための僕らがいる。



「よって皆の者の中に魔物が混じってしまっていないか、もしくは国の裏切り者になってしまっていないか、この神子様の守護者がたが見分けてくださるそうだ。発覚した段階で即刻処刑とする。ただし、自白をここでするのであれば減刑を視野に入れている」



 そういうと半分は顔を真っ青にする。心当たりがないのであれば何ともなくできるが、後ろ暗いものがあるのであれば自白、もしくは死刑を言われているようなものだ。ちなみにここにいるもの全てオパールが素性等を調べてくれているため、誰が裏切り者か、そうでないかはわかっている。


 一人の大臣が声を上げる。



「お、王よ、お待ちを!! そ、それはあまりにも横暴なのではないでしょうか⁈いくら何でも偽物、ましてや国に裏切り者なんているはずがないでしょう!!」



 その声があるとそれに賛同するような声が上がる。収拾がつかなくなる前に、アッシュは腰についた剣を鞘ごと外して、タンッ!と床を叩く。



「皆様の中にいらっしゃるかどうかは我々が確かめます。もちもん、そういった方がいらっしゃらないと信じて王は我々に確認をお願いされてますよ。……もし出来ないとのことですと、それは認めていらっしゃると、お受け取りいたしますがいかがいたしましょうか?」

「守護者殿の判断にお任せしよう」

「かしこまりました」



 王から許可を頂いたアッシュは威圧をしながらゆっくりと階段を下り、声を上げた大臣の前に立つ。男は脂汗がダラダラと溢れ、足をがくがく震わせている。大臣に向かって手を伸ばすと、一層真っ青な顔になる。



「さて、あなた様はどちらなのでしょうか?」

「う、う……ッ も、もも、申し訳ございません!!」



 その場で土下座をする大臣は泣きながら懇願する。



「あ、あああのわ、わわ、たし、私はもともと脅されおり、決して国を裏切るつもりはなかったのです!!」

「……へぇ」



 アッシュは屈んで土下座をしてる大臣にしか聞こえないように耳打ちをする。伝え終わると再度立ち上がった。耳打ちされた大臣は絶望な顔をしたまま、兵士に連れていかれる。

 その様子を見送りながら、再度、宰相たちの方を見る。



「素直に自白していただきありがとうございます。では王のお言葉通り、減刑といたしましょう。それでは他の方々もよろしいですね?自白のある方は、あの方のみ、ということで?」



 何人かはまだ真っ青だが出てくる気はないようだ。仕方ないと思い、今度はアッシュは剣を抜く。

 剣を抜いた途端に、たじろぐ。



「他はいらっしゃらないとのことであれば、少々手荒ですが捕らえていただきましょうか」

「お、お待ちください!」



 1人が手を上げ始めると次々に自白していく。なんでこんなに簡単に自白しているかというと、ユキの魔法のおかげだ。恐怖心を煽る精神魔法を使用してもらってるため、言わないとダメ、言わないと殺されると思わせるように仕向けている。


 その光景を見ている王は眉間に手を当てる。自身が思ったよりも多くてショックを受けているようだ。

 アリスが傍に寄りながらひっそりと耳打ちをする。



「こういうのは多かれ少なかれいるのよ。気にすることはないわ」

「……すまない、神子様。思ったよりも私は家臣たちを信用しすぎていたようだ。信じていたものも多かったからか……。これでは愚王と呼ばれても致し方ないものです」



 項垂れる王だが、その間にも半数以上が退出していた。

 アッシュも残りの人を見ながら、情報以外にその可能性がある人をよく観察していく。



「さて、あなた様はどうでーー」

「ふざけるな!」



 吠えながら騎士は剣を振るおうとしたが、アッシュに腕を掴まれ、その腕をバキッと肘当てと籠手ごとへし折ってしまう。断末魔が響くがアッシュは無視して逃げ転げる騎士の足の筋を切り落とす。



「ぐああああ⁈」

「僕、こう見えて強いんですよ?酔いどれ騎士様に負けるわけ、ないじゃないですか」



 布作面(ふさくめん)越しでもわかるくらい楽しそうに笑うアッシュに他の大臣たちは畏縮してしまい、その後は大人しかった。


 ようやく全員確認が終えたところで、人数は先程までの3分の1まで減った。完了したところで王は立ち上がり、階段を降りると、その者たちに向けて頭を下げる。



「こんな悲惨な結果が続いているにも関わらず、この国のために動いてくれてありがとう」

「お、王様⁈」

「いえ、我々も気づいておらず、まさかあんなにいたとは……家臣として不甲斐ない限りです」

「宰相殿はよくやってくれていた」



 宰相と呼ばれる男は小さく首を横に振って、少し涙を浮かべていた。


 アリスとガーネットも一緒に降りてくると、持っていた杖の石突きを床にトントンとする。



「お互いに謝るのはいいけど、こっからが大変よ。あの人たちがやらかした件を今いるあんたたちで片づけないといけないんだから」

「そ、そうですね。神子様の仰る通りで。ですが、出回っている薬はいかがいたしましょうか……?」

「あー、それは大丈夫だと思うよ」



 アッシュが布作面(ふさくめん)を外しながら宰相と王の間に入る。



「だって、ね?グレンが君たちができない所の後始末しに行ってくれてるからね」

「グレンって……、王様、ご、ご存じで?」



 宰相の言葉に小さく王は頷く。どうやら宰相はグレンが手を貸してくれてることに意外だったらしく。王の肩を掴んで驚いた顔をする。



「あ、あの深淵の神子様の従者ですよ⁈だ、大丈夫なんですか⁈」

「グレン殿は今回の件は個人的に手を貸してもらっておる。深淵の神子様は特に関与しておらんよ」

「私がどうした?」

「うわっ⁈」



 急に後ろに現れたグレンにかなり驚く。どうやら例のゴミ掃除は完了したようだ。腰に抱えられてるエドワードはかなり顔が真っ青になってる。……何があったんだろうか。


「エドワード、大丈夫?」

「死ぬほど怖かった……。掃除というか、もう一方的過ぎて、私はいらなかったと思う……」

「そんなことないぞ。強化魔法は助かった。おかげで早々に片が付いたからな」

「私がかけたのは移動速度上昇と物理耐性だけなんだが……」



 ”規格外もいいところだ”とボソッと最後にエドワードは呟いたが気にせず、グレンはアッシュと王の方を見る。見た感じ終わったようだったので後はリリィたちの方だと思っていると、ノアたちも闇の中から現れる。

 が、ノアは少し吐きそうな顔をしていた。



「この影渡、クッソ酔う……」

「そっちも終わったようだな」

「あぁ、終わったがあれでいいのですね?」

「十分だ」



 それぞれグレンたちがしてきたのはざっくりというと、グレンとエドワードは薬の流通の遮断とこの国の裏組織の幹部の始末。ただ薬は一度流行してしまってるため根絶はできないだろうが、数はかなり減るだろうとのこと。ノアとリリィたちに関しては、不要な組織の一掃。


 端的にではあるがある程度、国に蔓延る毒は排除された。あとはーー



「手を貸すのはここまでだ。連中にも少し"脅し"をかけているからしばらくは大人しいだろう。昨日の言ったが基盤を整えるだけだ。あとはお前たち次第だ」

「グレン殿、本当にすまない。それとありがとうございました」

「……はぁ……」



 深く頭を下げる王にグレンは深いため息を吐く。腰に担いでいたエドワードを放し、ガーネットのところまで行く。せっかく整えたガーネットの髪をわしゃわしゃとグレンは撫でまわす。



「私が動いたのはこいつのためだ。あとは知らん。正直半日で終わるとは思わなかったがな。国もザルだが向こうも大概ザル過ぎる。3日くらいはかかると思ったがな」

「返す言葉もございません……。お礼と言ってはなんですが、グレン殿、神子様御一行。何か希望があればできるだけのお礼はさせてもらいたい。何か希望はありますか?」



 そう聞かれてアリスは真っ先に手をあげる。



「甘いもの!おいしい甘いもの食べたいわ!」

「あはは、僕はそうだなぁ。魔剣とかある?もしあるなら一本ほしいかな」

「アッシュ、魔剣なんて何に使うんだ?お前が持ったらどこか国一つ潰す気なのかと思うが」

「いやだなぁ、エドワード。研究用だよ。昔、趣味でしていたものを久々にしようかなって。魔力回路治るまで暇だし」

「魔剣ですか……。宝物庫にあったかと思います。国宝ですがどうぞお持ちください」

「国宝はダメだろ⁈」



 この王はいいんだろうか……。ツッコむエドワードは頭を痛くしていたが本人は魔導書を希望した。それぞれの希望を聞いた後、王は最後にグレンに尋ねる。



「グレン殿は何を希望しますか?」

「私は特には……あ、なら近くにマナ溜まりがあるところはあるか?」

「マナ溜まりですか? えぇ、あります」

「そこの場所がわかればいい。あとは自分で行く」

「かなり危険な場所ですが……グレン殿であれば心配はないですね」



 グレンは小さく頷くと場所を聞いた。


 あとのことはこの国の人たちに任せ、アッシュたちはリオンが待つ宿屋へと向かう。

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