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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン
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脱出2

11/2と11/3は投稿お休みです。

 少し時を戻してグレンはアッシュの炎からユキたちがいるであろう、貧民街の大きな建物と隣にある天幕を見下ろしていた。



(さて、さっさと終わらせよう。なんだかんだで()()アッシュが大人しくしてるわけがないし、余計な事する前に片づける)



 いつものマントを付けるとここの外交の際に面倒になる為、今回はなし。ただ口元は見えないようにマフラーで口元を隠す。

 タンッと飛び降り、降り立つ際にパチンと魔法を発動させる。



「”見えざる静寂(インジブルサイレント)”」



 呟くと、着地したときの音が全く立たず姿も見えない。これならある程度問題なく探せる。

 侵入できそうなところを見て回ると気配自体は一階から感じる。まとまって行動してるのか一方は地下から動いていて、もう一方は動きがみられない。徐々に近づいてるようなのでグレンも動きがないほうに向かう。


 少し遠いので少し駆け足になりつつ、慎重に動いていると、目の前から黒猫が走ってきた。



(……? あの猫……)



 通り過ぎようとした黒猫の首根っこを掴み持ち上げる。猫は何に捕まったのかわからず驚いてる。魔法の範囲に入れるとこちらを認識できるようになったが、猫はビクッとして尻尾もくるっと丸めてしまう。


 そんな猫にグレンは眉間にしわを寄せながら自身の顔に猫を近付ける。



「…………貴様、魔法を使うなって言ったよな……」

「にゃ、にゃう⁈」

「何のために私が動いてしているのかわからんのか?」

「にゃ!にゃ!にゃにゃ!!」



 何となくこの猫の言いたいことはわかる。おそらく”魔法使ってない”と必死に伝えてるようだ。操作したりしてるから絶対使うはずだが……。

 面倒なのでこいつを叱るのは後にして、ずっと猫の手で向こうをさしている。


 あっちは気配もする方だ。慌てようにかなり急ぎなのだろう。黒猫から手を放す。黒猫はついて来いと言わんばかりに鳴くので、走って追う。


 すると、猫は再度大きな声で鳴いた。



「にゃーぅ!!」



 鳴く猫の先を見ると、うずくまっているユキに知らない男が手を伸ばしていた。

 走っている勢いのまま、飛び蹴りを食らわせる。面白いくらい吹っ飛んでいった。魔法を解除して、ユキの方を見ると、近くにあの錠剤が大量に落ちている。

 目を細めて、グレンは錠剤を鷲掴みして、蹴り飛ばした男に近寄る。



「しょうもない麻薬で好き勝手なこと……。そんなに薬が好きなら貴様が飲めばいい」

「むごがっ⁈⁈」



 手に一杯あった錠剤を男の口の中に押し込む。しばらく口を押えて抵抗がなくなったころ合いで手を放す。男は泡を吹きながら次第に動かなくなった。

 フンッと鼻で笑い、倒れているユキの様子を診ていると横で同じように倒れていたリリィがよろよろとしながら起き上がる。



「ユキは何か飲まされてから、様子がおかしい。治るか?」

「問題ない」



 予め作っておいた解毒剤を取り出す。仰向けにユキの身体を動かして飲ませるが、うまく飲めない様子だ。鼻をつまんで再度飲ませると、咽ながらもどうにか飲ませられた。あとは……


 グレンはノアの方を見る。知らない少年がいて”なんか増えてる……”と思ったが無視してノアにもユキと同様に解毒剤を飲ませる。これでしばらくしたら起き上がるだろう。



「な、なぁユキは大丈夫なのか?」

「……誰だお前?」

「お、おれはリオン。ユキと同じ牢屋に入れられてて、助けてもらったんだ」

「…………はぁ、リリィ、とリオンだったな?お前らは動けるか?」

「おれは大丈夫」

「ん」



 ユキの方へ行き、背中を叩く。ゆっくりとこちらに視線を向けてきたので意識はあるようだ。



「動けるか?」

「は……、は、い……っ」

「無理なら担ぐ。すぐ動けるか?」

「……ッ」



 返事する余裕はないがどうにか立とうとする。ため息を吐いて、問答無用でユキを担ぐ。

 何か言いたげそうだが無視してノアも持ち上げる。



「無駄な維持は張るな。それと人助け(リオン)の件。お前自身が余裕がないのに人助けできるほど余裕があるなんて、呆れかえる。アッシュのこともあるから今回は助けるが……、私は今後、貴様が身の丈に合わない助けをして、こういった窮地になった助けない。それだけは覚えておけ」

「…………っ」



 グレンが睨むように言い切るとギリッとユキは悔しそうにしている。


 だが、実際そうだ。余裕がないくせに助けようとして共倒れしては意味がない。だからこそアッシュも理解している。この黒猫については後で聞くが、自分が行くことでメリットとデメリットの判断。離れてしまった時のアリスたちのこと。ここでできることもふまえて、あいつなりに行動している。


 それをこいつは衝動的にして後先を考えない。わかっててしてるのか、それとも理解しようともしないのか。どちらにしろ非常に不愉快だ。


 チリッと空気がピリつく。リリィもリオンも怒ってるのだと察したが言わず、グレンの方へ行く。



「ここからどう出たらいい?」

「……そうだな。ここは一階だ。囮で一箇所におびき寄せて出るのが一番手っ取り早い」



 そう言いながら黒猫に近寄る。

 グレンはにっこりと笑うが、目が笑ってない。近寄られた黒猫はダラダラと汗を掻き、猫の耳がイカ耳になりながら身を縮こませる。



「囮、できるよな?」

「にゃ、にゃ~ん……」



 小さく返事をして黒猫は去っていく。


 待っている間にユキたちの隷属の鎖を解除していると、何処からか爆音が聞こえ、全体の意識がそちらに向いていく。その隙にグレンたちは建物から抜け出すことに成功した。


 すぐ近くの建物の屋上へ行き、下の様子を見るとかなり騒ぎになってるようだ。



「ま、囮にしてはよくやったな」

「にゃーぉ……」



 疲れた様子の猫は尻尾をフリフリさせながら返事をする。会話が成立してるのはビックリだ。

 そしてグレンは、横にいる黒猫に睨みながら顔を近付ける。



「アッシュ」

「みゃう⁈」

「それ、魔力使ってないという認識でいいんだな?」

「にゃう!」



 一応使ってないらしい。どうやったか後で問い詰めてやろう。



「さて、戻るぞ。お前それしてる間アリスは大丈夫なのか?」

「みゃう!」

「大丈夫ならいい」



 少し離れたところにいるリリィたちにも戻ることを伝えて、帰路に就こうとしたとき、妙な殺気を感じた。咄嗟にその場から離れるとレーザーのようなものが先程いた場所に被弾する。

 飛んできた方を見ると黒装束の姿の数十名。


 なんだこいつら。


 リリィたちの方を見ていないようで用があるのは、私の方らしい。

 抱えているノアとユキをリリィたちの方面へ投げる。急に投げたにも関わらずリリィは2人を上手くキャッチした。



「先に戻れ」



 こちらに狙いを定めるレーザーをさばきながらそういうとリリィは迷いもせず頷く。1番あいつが聞き分けがいいかもしれないなと思っていると、全方向からの一斉に撃たれる。


 パチンッと指を鳴らす。



「”防御魔法、全反撃(フルカウンター)”」



 全てのレーザーを反射させ、射撃元へと返す。これでいくつか減ったが、そんなに数は思ったよりも減らない。


 リリィたちが離れていくのを確認しながらなるべく離れるように避けようとすると、数名、リリィたちの方へ向かい、先程のレーザーを構えていた。


 咄嗟に召喚獣を展開させる。



「”我が血の契約に応えここへ来い!!マリア!!”」



 喚び出したと同時にリリィたちを指をさす。



「守れ!!」

『はい!!』



 レーザーが放たれると同時にリリィたちの前にマリアの防御魔法が間に合った。



「マリア、そのままあいつらを守ってアッシュの所へ」

『……いいんですか?』

「緊急事態だ。それに奴らの狙いは私らしい。あいつらがいたら動きづらい」

『……かしこまりました』



 そのままマリアはグレンから離れ、リリィたちの援護へ向かう。

 あとは……



「問題はこいつらか」



 目視だけでも30まで増えていた。こんな街中でドンパチやろうと思うこいつらは先程の場所の連中の護衛、もしくはあのクソ王の手下かどちらかだろう。


 黒装束のひとりが前に出る。



「これはこれは初めまして。我々はあなたをガーネット姫の誘拐の罪として捕らえさせて頂くためまいりました、スノーレイン王国、暗殺部隊オパールです。以後お見知りおきを」

「誘拐? なんの事だかな。私はここに視察できてるはずだが」

「ご冗談を。あなたが姫を暴行し、拐った。これは国家反逆罪にもあたります。……我々の大事な秘宝、返してもらいます」

「ハッ。濡れ衣もいいところだな」



 睨む相手に対して、グレンは大剣を生成し、構える。


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