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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン
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友人の行方2

 一方その頃のエドワードたち。街の様子を見に探索しているところだった。心配性のアッシュからは受け取ってる炎でエドワードは寒さを紛らわせるように手のひらに持っていた。


 ひとまず貴族街で情報収集をすることに。

 まだ明るい時間だが治安の悪さを考えてなるべく固まって動くことにした。探索中にリリィが珍しくぽつりとつぶやく。



「……アリス、大丈夫かな……」

「そうだな、あまりああいうとこ見ないからな。それにここは私もアリスにとっても友人と遊んだ思い出の地だからな」

「エドワードとアリスは確か幼馴染でしたっけ?」

「あぁ、とはいってもアリスはハーフエルフだから見た目も今もずっと変わらないけどな」

「そいやぁ俺も前世で死んだときもあいつ同じ姿だったもんなぁ」



 そう考えるとアリスは神子として何度も見送っているんだろうと思ってしまう。親しい人が亡くなる度に、何度も何度も何度も。


 そのたびに帰ってきてはいなくなってしまう。



「ま、あいつからしたら一旦いなくなって若返って帰ってくるって感覚じゃね?」

「……そんなことはないと思うぞ。転生したら忘れてしまう人もいる。現に私もそうだ」

「そう思うと僕は耐えられないかもですね……」

「魔族も長生きだかんなぁー」



 ノアの言葉にユキは小さく頷く。長寿種族はそう考えると長生きできるのはいいがそういう点では寂しいと思うだろう。昔、寿命のことで一時期話題になってたこともあった。


 なんて話をしていると、突然前に男が飛び出してきた。



「うお⁈ な、なんだよ?」

「ヒッヒッヒッ アンタらここでは見ない顔だねぇ。なんだい?観光かい?」

「あ?んだよ、お前」



 薄汚いと言っていいほどボロボロな服にぼさぼさに生えている髭、ひょろったした男はニヤニヤとしながらこちらにフラフラと近寄ってくる。エドワードたちはなるべく一定の距離を保ちながら下がっていく。



「おいおい、別にとって食おうってわけじゃねぇのに逃げるなんてひでぇな」

「私たちに何の用だ?」

「あん?な~に、綺麗な身なりのにいちゃんたちにいいもん持ってきたって話よ」



 男はそういうと懐から何かを取り出す。それは小さな黒い球みたいなもの。丸薬だろうか?

 それを見たユキが、先頭にいたリリィを引っ張る。急に引っ張られたリリィは驚くが、リリィの代わりにユキが前に出る。



「そんなものいりません。結構です」

「おいおいにいちゃんつれないなぁ。なんだこれ何か知ってんのか?」

「僕がいた国で見たことがあります。それは違法なーーっ⁈」



 ユキが話をしてる最中に男の手がユキの口元へ伸び、そのまま押し倒すように馬乗りになる。

 ハッとしたノアがユキの上に乗っている男に対して体当たりをして、退かそうとするのでエドワードとリリィも一緒に退かす。男は退かせたがユキは苦しそうに喉を抑えながら咳をしている。段々とユキの目が虚ろになり、倒れてしまった。



「ゆ、ユキ!」

「おい、おまーー」



 エドワードの後ろから腕が伸び、口元を抑えられる。その際に何か口の中に入ってきた。吐き出そうとしたが、口を押えつけられたまま後ろへ引っ張られ、息ができないように鼻も塞がれる。

 呼吸が苦しくなる中、口の中に入っていた何かが溶けたのかドロッと中身が口の中に広がる。甘ったるい味と脳に痺れるような多幸感で意識が朦朧とする。


 ようやく手が離れたが身体に力が入らず、倒れこむ。


 朦朧とした意識の中、手に残る温かい炎に魔力を無我夢中で流し込むが視界が暗転する。



 ーーーーーーーーーーーーーーー



 時を少し戻して宿屋。

 ようやく泣き治まったガーネットと彼女を抱きしめながら頭を撫でているアリスを見てグレンはため息をつく。



「落ちついたか?」

「うん、ありがと……。ガーネット、もう大丈夫だからね」

「お、おねぇさま、ちょっと苦しい……っ」

「あ!ご、ごめんね!」



 慌ててアリスはガーネットから離れようとするが別に離れたい訳ではないようで、ひっついたまま。


 アッシュはアリスたちが落ち着いたことでホッとしつつも気になっていたことをようやく口にする。



「君、その格好なに?なんでメイド?」

「ん? あぁ、城の潜入捜査するのに最適だったんでな」

「あはは、なるほどねぇ。にしても君元々中性的だから着てても違和感ないじゃん。女性で通じるんじゃない?」

「失礼だな。私は一応女だぞ」

「え?」「えっ?」

「え?」

「……え、ガチで?」



 グレンの衝撃的な答えでアッシュとアリスは固まる。

 2人の反応に、グレンは少し考えてから再度口を開く。



「……冗談だ」

「え、待って待って。本当はどっち? 僕、君のこと男として思ってたけど違うの?」

「さぁ?どっちだろうな」

「待ってほんと気になる!!」

「そんなことより、エドワードたちは?」

「あんた、割と衝撃的な内容をサラッと流したわね……」



 どっちなのかアッシュとアリスが考えを悩ませていると何処からか騒ぎが聞こえる。

 外からなのだろうかと視線を声のある方向へ移すと、紫色の、火柱が立っていた。



「エドワード?」



 アッシュが目を見開いて炎の方に向かおうとしてる所をグレンが腕を掴み止める。

 止めてもこちらの方をアッシュ向かない。



「待て、私が確認する。今お前は――」

「放して」



 グレンの腕を振り切りアッシュは行ってしまう。急いで追いかけようとしたが、後ろからアリスがグレンを後ろから掴む。



「お、お願い、行かないで……。ここに、残さないで……っ」

「……わかった。だが、5分で戻らなかったらお前も連れて向かうぞ」

「う、うん……」



 グレンの服を掴む手が震えている。さすがにこのまま置いておく訳には行かない。パチンッと指を鳴らしていつもの服に戻す。


 火柱が立っていた所へ急いで向かったアッシュは降り立つと、残っていたのは炎に包まれているエドワードを取り囲むように誰かがいる。


 ノアやユキ、リリィは……?


 目で見える限りではいない。

 アッシュが来たことでこちらに数人気付くもどうにか炎を消そうとしている人をかけ分けて進む。



「エドワード!」



 炎の中に入っていくと炎の中は全く熱くない。使用者を守るための炎だから使用者が味方と思う他の人からするとかなり熱い。

 力なく握っていた炎の火種元に手を置き、徐々に炎は消えていく。炎が消えるとアッシュはエドワードを様子を確認する。


 虚ろな目で力ない様子だ。何かされたのは間違いない。

 エドワードを抱きかかえて近くにいた人の腕を掴みながら問う。



「ねぇ、こうなった原因、何か知らないかい?」

「え、お、俺ですか?! お、俺も見に来ただけで何があったかは知らねぇんだけど……」

「そう」



 他に知っているやつが居ないか見るが怪しそうな動きをしてる人がいない。

 ノアたちは炎はつけているが今は魔力が使えないから定めて転移するのも出来ない。ただ、今は先にエドワードの状態をどうにかしてもらわないと……。


 教えてくれた男に軽く頭を下げて、急いで宿屋へと向かう。


 アリスたちが待つ宿屋へ到着して急いでグレンの所へ。

 抱えていることを認識すると声をかける前にグレンもこちらに来てくれる。



「グレン!エドワードが!」

「戻ったか。エドワードだけか?アリスから聞いたが全員で行ったのだろ?」

「そうだよ……。けど駆けつけたら炎に包まれたエドだけだったんだ」

「そうか。ベッドに寝かせろ。すぐに診る」



 エドワードをベッドに寝かせる。すぐにグレンは魔力を流しながら状態を確認していく。流してすぐグレンの眉間がピクっとなった。

 魔力が乱れていて意識の混濁がみられ、何やら甘い臭いもする。臭いの元を確認しつつ、エドワードの口を開けて顔を近づける。



「甘い臭い、これはガーネットがいた部屋にあった臭いと同じだ……。ガーネット」

「は、はい!」



 急に名前を呼ばれたガーネットは背筋を伸ばしながら返事をする。



「この甘い臭いはなんだ?」

「こ、これは……その、私もよく分からないのですが、お薬だと、言ってました。それを飲むと痺れるような多好感と開放感があって……でも、飲んでしばらくするとすごく身体が重くなっちゃって……」

「……なるほどな」



 ガーネットの反応と答えを聞いてグレンは調合薬を取り出す。3つほどの薬品を混ぜ合わせ、薄く白い薬品に変わる。それに青い石を入れて軽く混ぜると綺麗な水色に変わった。


 ゆっくりとそれをエドワードに飲ませる。



「……よし、これで大丈夫だ」



 呼吸が落ち着いた。飲ませた薬でどうやら中和できたようだ。恐らく飲まされたのは麻薬と呼ばれるものに近いものだろう。


 心配そうにアッシュとアリスが覗き込むが、エドワードのこともあるが……



「ノアたちはどこに行ったか分かるか?」

「……炎を使えばわかると思うけど、魔法使ったらダメなんでしょ?」

「当たり前だ。……まぁよく我慢してくれている。本当ならすぐ向かいたい気持ちを抑えてるんだろ」



 小さくアッシュが頷く。アッシュの手を取り、炎の気配をグレンが変わりに感じ取る。


 場所は……なるほど、貧民街の方だな。



「お前の炎から辿ってみよう。早めに行かないと、ノアたちもエドワードと同じ状態の可能性がある」

「わかった。……アリス、君はどうする?」

「い、行くわ。仲間が危ないなら、私も!」

「いや、私が単独で行く。治療法も分かっているから見つけたらすぐ治せるし、ガーネットもいる」



 アリスの横でしがみついたままのガーネットを見る。そうだ、今はこの子もいる。かなり危険が生じるし、いかないにしろ守る人もここには必要になってくるし……

 助けると意気込んだがまたアリスは少し暗い顔をしてしまう。



「わ、私とガーネットはお留守番できるわ。私も、そんなに隠密得意な方じゃないから、邪魔にならないように、するわ」

「留守番、本当に大丈夫?」



 その問いにはアリスは無言だった。

 ここに来てからずっとアリスは元気もなければ怯えている様子だ。いつもの明るい彼女になって欲しいけど、今は安心させるしかないと思う。


 アリスの近くまで行って彼女の髪に触れる。



「……グレン、僕はここでエドワードとアリスを守っておくよ。ノアたちをお願いしてもいいかな?」

「わかった。任せろ」



 グレンはそう返事をすると宿の窓から出ていく。


 出ていったことを確認するとアッシュはアリスの方を見てニコリと笑う。



「さて、僕らは僕らでできる範囲で事を進めよう。何もしないでおくのもちょっと癪だしね」

「私たちにできること?」



 ニヤリと笑うアッシュは何かを企んでいることは間違いないが、アリスとガーネットは互いに顔を見合わせながら首を傾げる。

 そして、アッシュはガーネットの前まで行くと同じ目線になるようにしゃがむ。



「と、言うわけでガーネットちゃん。いろいろ聞いてもいいかな?」

「っ! わ、私がわかる範囲ならいくらでも!」



 力強い返事にアッシュは”うん、いい子だね”と優しく微笑み、アリスとガーネットを交えて話を始める。




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