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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン

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雪の国への入国

 しばらくしてアッシュが目を覚ます。


 いつもの姿に戻っていてやや感動した様子で自分の腕や体に触れる。



「おぉ!治ってる!」

「治ってない。はしゃぐな」

「ぐえっ」



 走り回ろうとするアッシュのフードをグレンが掴む。その反動で首が絞まってそのまま転けてしまった。転けたアッシュの顔を覗き込むようにグレンが睨みながら念押をする。



「いいか、絶対に魔力使うなよ?何がなんでも使うな。怪我もご法度だ」

「や、やだなぁ、そんな僕、怪我したりはしな――」

「最初の時に私は極力魔法を使うなっつって言ったのに使ったの誰だ?酷使すんなって言っただろ?」

「す、すいません……」



 なんだろうか少しデジャブを感じる。

 そうエドワードは思いながら、締めあげられているアッシュに手を差し伸ばす。



「グレン、あまりアッシュを責めないでくれ。私が焦ってしまった結果で落ちてしまったんだ」

「分かっている。だがこいつはキツめに言わないと同じことをするからな。しかも今度は身体が思うように動かせるようになってる。反射的にする可能性が高いからな」

「あの、ホント気をつけますのでフードから手ぇ放して、地味に苦しい……」



 なんだか見透かされてる気がする。否定ができないってのもあるけども……。


 ようやくフードからグレンは手を放してくれたので、差し伸ばしてくれたエドワードの手を掴みながら起き上がる。



「もしこのふたつを破ったら一生レイチェルの件は言わんぞ」

「はい……」



 顔を見なくても分かるくらい眉間にしわ寄せながら怒ってると思う。グレンの顔を見れないアッシュは視線を避けていると、視界の端でアリスが覗き込んできた。



「さて、目を覚ましたところだし、スノーレインに向かいましょ!」

「……うん、そうだね」



 ヘラッとアッシュは笑いながらアリスに返事をする。先に進む途中でアッシュはエドワードの服を少し掴んだ。

 何事だろうかとエドワードは振り返る。



「どうした?」

「洞窟の時、ごめんね。守れなくて」

「大丈夫だ。むしろ私が足引っ張ったのが原因だ。お前やグレンに助けられてしまってばかりだからな。結果はどうあれ助けてくれたのは変わりない。いつもありがとう、アッシュ」

「……うん」



 困ったような顔をしながらアッシュは頷く。きっとこの答えでも自分自身に納得がいってないのだろう。


 何よりもアリスや私たちが傷つくことを嫌がる。咄嗟に落ちていく際にグレンの名を叫んだのも自分では守りきれないことを直ぐに察したからだろうから、どうにかしてでも守ろうとする。


 たとえ自分の命を引き換えにしてもこいつはそうするだろう。


 エドワードは少し俯きかけてるアッシュの腕を掴みながら引っ張る。



「もう過ぎたことだ。先へ進もう。また置いてかれるぞ」



 先へと進むアリスたちに置いていかれないように少し小走りをしながら目的地へと向かった。



 ―――――――――――――――



 森からさらに1時間歩いたところで目的地のスノーレインが見えてくる。検問ももちろんあって少し長い列になっていた。


 アッシュの肩を借りてアリスが遠くの方を見ながら隣にいるグレンに話しかける。



「閉鎖的になってる割には入国する人多いわね」

「出入り自体はあるらしいからな」

「てか、あんた本当にアッシュが本調子になるまで来てくれるのね」

「あいつはあれでまだ完治はしてないからな。魔法使わなければもう少し早く治ってたんだがな。あのバカは」

「まぁそれもそうだけど」

「2人とも僕一応いるの分かっててその会話してる……?」



 少し泣きそうな様子のアッシュをフル無視した2人。

 にしても、前にいる列は結構長い。これはしばらく時間がかかりそうだと思っていると時間短縮のためか先に名簿確認のために兵士が入国者の確認をしているようだ。


 危険物がないかわざわざアイテムボックスや身体検査のための事前告知を確認しているようだが、2.3つ前のいた人が何か兵士に渡している。


 ……恐らく賄賂だ。


 それアリスは少し目を細めながら見ていた。



「……本当に王政まともに動いてないのかもね」



 アリスはボソッと呟いて肩を借りていたアッシュに下ろしてもらいながらため息をつく。あまり見たいくないのか、アッシュの肩に顔を埋める。

 そんなアリスに対してアッシュは頭を撫でてあげながら念の為、アリスの髪が見えないようにフードを被せていると、こちらの順番なのだろうか兵士が話しかけてきた。



「おい、身分証と通行料」

「ん、身分――」

「私が出すからいい」



 アッシュが身分証を出そうとしたがグレンが遮る。フードを被り、懐からグレンの身分証を兵士に出す。



「こいつらの身柄は私が保証する。通せ」

「あん?てめぇ、何様――っ?!?!」



 兵士は身分証を見て、だんだん青ざめる。そして身分証とグレンをチラチラと見て急にピシッと姿勢を正し、90度に身体を曲げてるんじゃないかと思うくらい曲げる。



「も、ももも、申し訳ございません!!!!まさかあなた様が来られるとは知らずご無礼を!!!!すすすす、すすすぐお通ししますのでお待ちくださいませぇえええ!!!!」



 そう叫びながら走っていく。

 その兵士の様子にアリスたちはジーッとグレンを見る。



「あんた……何したの?」

「あー……そうだね。君あれの遣いだもんね……」



 そう。ルーファスたちも、ものすごく警戒した例の少女の部下だ。多分身分証にそれが記載されてたのだろう。

 ニヤニヤと笑うグレンはフードを外して少々……、いやかなり悪い顔をしている。



「はははっ 自分の身分だ。多少乱用したところで問題は無い」

「……そ、そうだねぇ」



 アッシュが苦笑いをしてるとバタバタとまだ兵士が戻ってきた。ゼェゼェと息を切らしながら戻ってきた兵士はグレンの方を再度見る。



「お、おまたせ、致しました……。入国準備ができておりますので、お連れ様もご一緒に、どうぞ……」

「わかった」



 長蛇の列を追い越して、入国していく。

 中へはいると……



「…………っ」



 アリスは絶句していた。そこに広がっていたのは、かつての美しい国は無くなっていた。酒に溺れ、恐らく薬をしているのだろうか虚ろに自身の腕に注射をするもの、道に人が倒れている。

 アッシュの後ろで震えるアリスに対して”大丈夫だよ”と言いながらポンポンと手を撫でるが震えは止まらない。


 兵士の人は呆れた顔をしてこちらに声をかける。



「ここはほぼスラムみたいになってるんであなたがたが立入るべきでは無い場所ですからね。貴族街が向こうにありますんで、馬車でご案内します」

「いや、馬車はいい。そのまま行く」

「そうですか? 分かりました。ではごゆっくりと」



 敬礼をした兵士は慌ただしく去っていくのを見送る。見えなくなったところで、グレンはアリスたちの方を振り向く。



「1度、私は外れる。私の身分証で出してるから挨拶は一応しないといけないからな。アリス、お前の友人の姫君がいるかも確認しておく。」

「……うん」



 アリスはグレンの方を見ず、アッシュの背中に顔を埋めたまま、返事をする。周りを見ることが今は出来ないようだ。

 相当キツそうだから早めにここから離れようとするとグレンはアッシュに近寄ってくる。



「どうしたの?」

「ん。これ忘れる前に」

「んー?」



 手首に魔法をなにか付けられた。よく見ると追跡魔法だった。迷子防止なのだろうか……。



「これは?」

「迷子防止。前回みたいに急にいなくなると困る」

「迷子防止だったぁ……」



 当たってたのが何となく複雑だ。グレンは片手を上げてフードを被って城の方へ向かっていった。


 後ろからエドワードがアッシュとアリスの元へと来る。



「どうする?一旦貴族街に行くか?」

「そうだね。ノア、ユキ、リリィは大丈夫かな?」

「僕たちは問題ないです。ちょっと街の様子にびっくりはしましたが」

「マジあんなん久々見たわ……」

「…………」



 リリィに関しては小さく頷きながらアリスの背中を撫でてあげていた。

 あまりアリスに周りが見えないように貴族街へと向かった。


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